「16球団構想」であまり語られない障壁④なぜか出ない新球場建設案

球団誘致と新球場

このタイトルを見て、
「お前はゼネコンと利権屋の手先か」
と怒り出す人は多いかもしれない。
だがまたアメリカの例で申し訳ないがこれを見てほしい。

MLBNFL新規と移転

近年のMLBとNFLで
新球団が誕生、あるいは球団が移転した場合のホーム一覧である。
ほとんどのチームで
スタジアムが新しく作られているか、
新しく作られたスタジアムに誘致されているかの
どちらかなのがわかる。
たとえ最初の数年は旧来のスタジアムを間借りしていても、
新たなスタジアムが既に建設中であるケースばかりだ。
最近の日本でもダイエー(平和台球場→福岡ドーム)と日本ハムが
この例に当てはまる。
例外はトロントとフロリダで、
ブルージェイズは1989年にスカイドームが建てられるまで
旧来のスタジアムを使用し、
マーリンズはNFLドルフィンズのスタジアムを
2011年まで間借りする形になった。
①番外編で見たような失敗の可能性もはらんではいるし、
マイナーリーグだと昔からの球場に誘致するケースもあるのだが、
基本的に球団増・移転と新球場建設は
セットになっていることが多いのだ。

なぜ大都市にプロ球団がなかったか

では札幌と仙台の地図を出しておいた。
交通の便も悪くないこの2つの大都市に
ずっとプロ野球の球団がなかった最大の理由。
それは「まともなハコ」がなかったからだろう。
まず札幌の場合。

札幌でのプロの試合は長らくこの円山球場で行われていたが、
地下鉄の最寄駅(右の森の一本道を抜けた先)からは
1.1~1.2kmの距離があり、
球場の座席はベンチシートと芝生だけ。
隣接する動物園との関係でナイター設備も備えられないそうだ。
あとこの点についてもいずれ書くつもりだがこの都市、
そもそも4月は寒すぎ+雪多すぎで、
とても屋外で試合ができる環境ではない。
ドーム球場ができるまでは
プロ野球参入はほぼ不可能な状況だった。

次に仙台。
県営宮城球場は1970年代中盤に
ジプシー時代のロッテがホームとして使っていたが、
収容人員数(28,000人)などの関係で
日本シリーズは開催されなかった。
楽天参入による大改修前の様子を見ると
ネット裏以外の内野席は
ただのベンチシートどころかコンクリートむき出しのベンチ。
また当時の球場は狭いのに建ぺい率の都合で改修が難しい。
現在の楽天もかなり苦労しながら改修を続けているが、
立地以外はお世辞にもまともなハコとは言い難かった。
現在のユアテックスタジアム仙台(1997年)と
ひとめぼれスタジアム宮城(2000年)がなければ
東北楽天誕生もライブドアの参入計画も
ありえなかったんじゃなかろうか。

既存の球場で充分と考えてしまう理由は何か

こうしてわかるように、
プロ野球を誘致・参入させるには
それに見合った球場は必要不可欠である。
たとえ日本シリーズ等にともなう
必要収容人数が緩和されたとしても、
単純に球団経営を成り立たせるために
一定の観客動員数とそれに見合う球場設備は必須のはずだ。
なのに賛成派の意見を見ると、
新球場建設はおろか
今までのnoteで見てきたような
球場や球場周辺の改修すらも全く考えてない人が実に多い。
たしかに改修については
仙台がモデルケースの一つになるとは思うが、
新球場や大規模改修の声がほとんど聞かれないのはなぜだろうか。
いくつも理由があると思うが、
ここでは簡単に思いついたものを1つ2つ書いておこう。

16球団構想では賛成派が圧倒的に多いが
当然反対派もいる。
その中には
「王会長が土建屋や利権絡みの連中に言わされている」などと
物騒なことを言い出す人も見かけた。
真偽のわからない陰謀論的な話は放っておくとしても、
この考え方自体は別な意味で的を射ていると思う。
つまり賛成派にも「箱物」建設に対する拒絶反応があり、
新たな球場を建てることに頭が回らなくなるのだ。

加えて、自分が興味あるもの以外に価値を認めない
人間の性質の問題もある。
野球は見るが球場にほとんど足を運ばない人の場合、
球場の利便性などには関心が持てないだろう。
これは野球に限ったことじゃない。
たとえばサッカーなら
サッカー場(過激派だと球技場も認めない)以外を嫌う人は少なくないし、
普段スポーツに関心がない人
(オリンピックになるとメダルの色だけうるさい人を含む)だと
スポーツ施設の全てを否定することも珍しくない。
むしろ野球は「野球場ばかり作りやがって」と
酷評の対象になっているほうだと思う。

しかしここがまた難点になる。
高校野球人気などによる需要もあるため
実際に収容人員数の多い球場の数自体はそろっており
プロ野球の地方開催もだいたいここで行われているのだが、
だが根本的に自治体が作った地方球場はアマチュアどころか
一般市民が観客を入れずにプレーするためのものなので、
観客のことをあまり顧みていない
人を押し込められる球場ばかりになっているのだ。
内野はただのベンチシート、
さらに外野の芝生だけで10,000~20,000人収容が
設定されている球場は実に多い。
年に1、2試合ならまだしも
年間数十試合をこなすにあたって
果たしてそれで耐えられるのか。
どんな地方球場のアマチュア野球にも見に行くようなマニアならともかく、
そこまででもない他の観客が
その程度の球場で果たしてリピーターになるのか。
野球の見易さだけにとらわれない
過ごしやすさ、楽しさにつながるのか。
これらの問題に対処するためには最低でも改修、
できることなら新球場の建設が必要な地域がほとんどに思えるのだ。

じゃあ何が何でも建てなければならないかと言うと、
実際にはそうもいかない理由は
専門家じゃなくても考えることができる。
次回はこの点について
素人ながら少し考察してみたいと思う。

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