新卒で入社した会社の話19【完】
退職が2週間後に迫った時、内定が出た。
面接に向かったその先は、倉庫のようなビルの1室だった。
面接を担当した人はとても優しそうな人。
部下からの相談にも優しく答えている。
自分の職場とは大違いだ。
面接は特に難しいことを聞かれることもなく、志望理由、職種が違うけどどんなところに惹かれたのか?とかある程度のことを聞かれ、仕事内容の説明にうつっていった。
その1週間後、リモートで支社長と面接。
面接といっても面談のようなもので、何を聞かれたのかすらも覚えていないほど聞かれていない。
池野めだかのようなおじいさんで小さな人だった。
ちょうど面接の次の日に、スマホに連絡が来ていた。
仕事中で出れなかったが、メールで内定と来ていた。
嬉しかったと言うよりはホッとした。
8月は1ヶ月お休みして、9月から働く。
帰宅して、母親に報告した。
「良かったね。ずっと頑張ってたからだよ」
次の会社ではもっと生き生きと働き、親を心配させるようなことはしたくないと心から思った。
最終日当日、所長から呼び出され、朝の営業会議にて挨拶をしてもらうと言われた。
「お役に立てたなんて全く思ってませんが、2年と少しの間おせわになりました」
表情をぴくりとも変えず、じっと見つめてくる営業員たち。
2年前に挨拶をした時と何も変わらない感じ。
辞めることを選択して間違いなかったと心から感じた。
お昼過ぎ、一旦帰社した堺がお菓子を買ってきてくれた。
挨拶はいまだにしてるのかしてないのかよくわからない人だが、こういうことしてくれる人なんだ、、と知った。
営業員の帰りも待つことなく、定時過ぎたら所長と、その他帰社していた営業員に1人ずつ挨拶をして退社した。
何も間違っていなかったんだ。
明日からはこの大っ嫌いな人たちと顔を合わせることもないんだ。
あれから何回か転職して今に至っているが、だいたい最終日は何かの寂しさを覚える。
しかしこの職場では心晴れやかにすっきりと去ることができた。
それもこれも、劣悪な職場環境のおかげだろう。
退職して2週間後、制服を返しに向かった。
私の後任の人がすでに本社から来ていた。
後任が来るとか全く知らなかった。
奇しくもその人は、新入社員研修にて営業同行させてもらった人だった。
そうか、営業から事務になったんだ。。
気まずさとなんとも言えない気持ちで、さっと用事を済ませて去った。
転職についても、この職場で働いたことについても、全ては運の巡り合わせなのだ。
もしここの営業所でなかったら、今もこの会社で働いていたかもしれない。
運命を受け入れ、自分に合っていなければ次の行動に移す。
このスタンスで今も生きている。
ちなみに、村田とはそれからたまに連絡を取り合っていたが、椎村は本社へ左遷になったらしい。
そして事務ではなく、物流部門へ異動させられたと聞いた。
私が所長に言わなかったらこのようなことはなかっただろう。
自分が行ったことは絶対にいつかしっぺ返しがくる。
そのことがわかってことだけが、この会社で働いて唯一学んだことだ。
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