新卒で入社した会社の話⑧

年が明けた。
パートの森根が呼び出される。どうやら人員整理の話だそうだ。
本人から聞かずとも雰囲気でわかる。

昼休憩から戻ると、椎村と森根が話し込んでいて、私の顔を見るとササっと何事もなかったかのような風を装い始めた。

数日後、椎村から、森根が年度末で辞めることを聞いた。
森根は勤務時間の短縮を提示されたようだが、収入が少なくなることを考え、違う職場へ移ることを決めたようだ。

森根が一人減るということは、椎村と私と役立たずの薬剤師の3人。実質2人と考えた方が良いだろう。

終わっている。今でも3人体制で忙しすぎるのに、そこから1人減らすなんて。内勤のことを軽くみているんだろうということが手に取るようにわかった。

所長からは、私のスキルを上げるようにひたすら言われているとのこと。人一人減らすことを棚に上げて、今度は新人のスキルに矛先を変える。本当に終わっている職場だな。

その昼から、ご飯が食べれなくなった。
時間を与えられていないのではない。ストレスで全く食事を受け付けないのだ。所長の言うとおり、自分のスキルの無さは自覚していたし、椎村と2人でやっていける未来も全く描けなかった。
椎村は自由奔放で、電話がガンガンなっているにも関わらず、仲良しの同僚と呑気に話したり、相変わらずの女王様気質だった。


森根の退職が近づくにつれて、森根が私を心配し出した。
その頃から、椎村の悪口を言う機会も増えてきた。
当時の私を救っていたのは、椎村のことをおかしいと思っている人は、自分以外にも実はいたのだということを理解できたことだった。

だんだん、昼休憩の他のパートの人との会話も、椎村大丈夫?ていうことを私に気にかけてくれるようになっていった。
この職場にいた2年半の中で、唯一楽しかったひとときかもしれない。

森根の送別会。
森根ともうちょっと前からタッグを組めていたらよかったですねと心から笑い合った。

そして、悪魔のような2年目に突入していく。

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