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『エッセイのまち』の仲間で作る共同運営マガジン

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2020年5月の記事一覧

ジェット風船の行方

昨年、父が他界した。 脳梗塞で倒れ、2年間の闘病の末のことだった。今回は父の葬儀時に起きた奇跡?についてお話ししたいと思う。 まず、この話を始める前に皆さんに知っておいてもらいたい重要なことがある。 父は「悪い男」だった。 女とお金にだらしのない、私の中ではどんな小説や映画に出てくる悪い男よりもドラマティックに悪い男で遊び人だった。周囲に迷惑をかけまくるが本人はいたって楽しそうにしていた。自分の孫と同い年の隠し子を作る。甲斐性はないのに女に店を持たせようとする。大体失

夫のこと好きな理由。

夫のことが好きだ。困ってる人に貸したい。 もし夫が万が一浮気をしたとしても、浮気相手を憎めない自信がある。絶対渡さないとは思うが、もういっそ3人で暮らしましょうか?くらいは言っちゃうかもしれない。 夫は私にはもったいない。それは別に、私が私をゴミみたいに思ってるからとかじゃない。っていうか、夫にもったいなくない人物に私は会ったことない。 お父さんのことより夫が好きだ。お母さんより好きかもしれない。生まれ変わったら何になりたい?と聞かれたら、夫みたいな人間になりたい。生ま

5年越しのアンコール

我が家には、昼夜関係なく突然「星野源」がやってくる。 「どーも!こんばんはー!星野源でーす!」 大きな声でハッと目が覚める。時間を確認すると朝7時30分。 全然夜でも無ければ、ここはライブ会場でもない。ただの自宅だ。 始まったか…。 むくりと布団から起き上がり、リビングを見た。3歳の息子が歌いながら踊っている。そこでは、星野源さんのライブDVDをテレビ画面で再生しながら開催する「なりきりライブ」が始まっていた。 「さいたまー!!」 本人になりきって声を張り上げる息子

私が書くのは、大きなひとりごと

初めて抱いた将来の夢は、作家だった。その頃から本は好きだったけれど、きらきらした憧れがあったわけではない。クラスの友達とも大人たちとも話すのが苦手な私が、唯一できそうだと思った職業がそれだっただけ。お店屋さんも先生も、私には到底できないと感じていた。今から思えば、5歳そこそこにして悟ったところのある子供だった。 それから10年以上、学校社会でもまれるうち、「作家を目指していること」そのものがアイデンティティの拠り所になった。自信のない私は、何か特別なものになりたかった。理系