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No.3 有明の海 2022年11月

“端的只今の一念より外はこれなく候。 一念一念と重ねて一生なり”
“人間一生誠にわづかの事なり。好いた事をして暮すべきなり。夢の間の世の中に、好かぬ事ばかりして苦を見て暮すは愚かなることなり“皆さん、これは誰の言葉かと問われてもわかるはずないですよね。「葉隠」の一節です。
「葉隠」と言えば“武士道と云ふは、死ぬ事と見付けたり で有名な、佐賀藩の忠臣、山本常朝が著した武士の心得のバイブルで、戦国時代より続く名門鍋島家の家訓にもなったような武士道一直線の言葉に溢れた内容かと思いきや、極めて人間臭く、現代の我々が直面する思いに通じる名言が光ります。
一つ目の言葉は、私の大切に思う「今、この時」であり、「ひとつひとつの願いの積み重ねが人生の道をつくる」に繋がり、二つ目の言葉は、まさに「自分の好きなこと、やりたいことを大切にせよ」という教えです。
活きるか死ぬかの選択が今より身近に在った江戸前~中期の武士
山本常朝の心の中に思わず分け入ってみたくなります。
山本常朝は、儒教・仏教・神道を学び、和歌では古今伝授を得るほどの徒で、晩年は出家し、禅宗(曹洞宗)に深く帰依しています。
「禅」というのは、昔も今も、浮世に迷える日本人がたどりつくひとつの型であり、道でもあります。

先月、ライフシフト大学第7期生も、世田谷区野沢にある龍雲寺に座禅を組みに行ってきました。
細川住職から「何も持ち帰らなくてよい」という極意を頂き、常日頃、「何か成果を追い求め、結果を気にする」型にはまっている自己を、呪縛と重しから解き放つ時空を体験しました。
さて、葉隠を久方ぶりに手に取ったのは、先月ある企業の佐賀工場にお邪魔し、シニア向けに「ありたい自分」を考える研修の準備に地産の言葉を探した縁でありました。
写真は、佐賀空港に着陸直前、上空から眺めた朝の有明海です。
果たして昔人と我々とは、見ている景色に相違の有りや無しや?

朝の有明海(筆者撮影)

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