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めざせダブルライセンス~司法試験×公認会計士~

司法試験に合格するだけでも素晴らしいことですが、さらに上を目指したい、ほかの弁護士との差別化を図りたいと考える人は少なくないと思います。そのようなビジョンをかなえる手段の1つが、複数の資格を取得すること(ダブルライセンス、トリプルライセンス…)です。

司法試験受験生の中には、ダブルライセンス資格の代名詞である公認会計士の存在は知っていても、詳細を知らない人も多いのではないでしょうか。私自身も、ロースクールの商法の必修科目の担当教員が「ここから先は同じ敷地の(公認会計士志望者が通う)会計大学院でみっちりやるところです(笑)」と言うたびに、「ここから先」で勉強するのはどんなことだろう、と疑問に思っていました。

そこで今回は、弁護士資格とのダブルライセンスとなりうる公認会計士の試験についてご紹介します。(ライター:向田/The Law School Timesライター)

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公認会計士試験の概要

公認会計士試験の流れ

①短答式試験(実施は、12月と5月の年2回。マークシート方式。)
↓ 合格すると
②論文式試験(実施は、8月の年1回のみ。)
↓ 合格
最終合格!

短答式試験が年2回ある点、予備試験よりは慈悲があるといえそうですね。

公認会計士試験の受験科目

公認会計士・監査審査会によれば、短答式試験では、財務会計論、管理会計論、監査論、企業法を、論文式試験では、会計学、監査論、租税法、企業法、選択科目(経営学、経済学、民法、統計学のうち1科目)が課されることとなっています [1]。

なお、司法修習生となる資格を得た者(司法試験合格者)は、短答式試験が免除されるとともに、論文式試験のうち企業法と民法の受験が免除されます。旧司法試験第二次試験(論文)合格者についても、第二次試験で受験した科目が免除されます。

合格者のデータ

公認会計士・監査審査会によれば、2023年度は、願書提出者20,318人のうち13,660人が短答式試験を受験し、2,103人が合格しました[2]。短答式試験合格者者に、短答式試験免除者2,089人を合わせた計4,192人の論文式試験受験者のうち、1,456人が最終合格しました。なお、最終合格率(最終合格者数÷願書提出者数(名寄せ))は、7.6%でした[3]。

公認会計士試験の受験資格には制限はないので、誰でも受けることができます。ちなみに、2023年度の最年少合格者は18歳、最年長合格者は61歳でした[4]。

試験合格後すぐに公認会計士になることができるか?

公認会計士試験に合格しただけでは、公認会計士として活動することはできません。

金融庁によれば、試験合格後、(a)監査法人に就職して業務補助者として3年の実務経験を積むこと、(b)実務補習所に3年間通って修了考査に合格することの2つの条件を満たし、日本公認会計士協会への名簿登録をして初めて、「公認会計士」と称して、活動できるようになります[5]。

司法試験合格後の司法修習が1年間であることを踏まえると、ずいぶん長い道のりですね!


公認会計士試験を目指すことのメリット(予備試験・司法試験対策)

最初からダブルライセンスを狙いたい 

はじめからダブルライセンスを狙う場合、司法試験合格者は公認会計士試験において短答式試験 免除+論文式2科目免除となる[6]一方、予備試験・司法試験については公認会計士試験に合格したからといって何の優遇もされません。したがって、まずは、司法試験選択科目であり、かつ、公認会計士試験でも問われる租税法を選択して司法試験に臨み、司法試験に合格してから公認会計士試験合格を狙うことが得策[1] でしょう。そのほかの科目の重複については、下表をご参照ください。

各試験で必要な科目(著者作成)

すでに公認会計士試験受験経験がある・合格している人の場合

とはいえ、上でみたとおり、民法という科目は重複しています。また、企業法では会社法・商法・金融商品取引法が出題範囲となっており予備試験・司法試験の「商法」の出題範囲の多くをカバーしています。そして、司法試験の選択科目にも租税法があります。そうだとすれば、先に公認会計士試験対策をしてきた方であっても、他の司法試験・予備試験受験生に差をつけることができることは間違いないでしょう。

さらに、ロースクールによっては、必修の民法・商法はもちろん、選択科目の租税法、企業法の範囲となる金融商品取引法について学ぶ科目が用意されていることがあります。

このような科目が開講されているロースクールであれば、これまでの学習経験を生かしながら有意義かつラクに学びを進めていくことができるでしょう。

公認会計士試験を受けるべきなのか?

司法試験と公認会計士試験のダブルライセンスは…

すでに税理士などの資格を有している人、会計系の学部・大学院で学んだ経験のある人、また企業法務分野に強い弁護士として、同業者と差をつけたい人などにおすすめです。

一部重複する科目もありますが、会計学系の科目では、司法試験では問われない簿記、数学の能力が要求されるところも多々あります。同時に勉強することは決して容易ではないでしょう。少なくとも、司法試験ついでに取っておけば箔がつくかも!といった軽い動機で受けることはおすすめできません。

とはいえ、公認会計士・司法試験双方に合格する人は非常に希少ですので、合格できればとても大きなアドバンテージになることでしょう!

司法試験受験者が、これからその資格を受けることのおすすめ度は…

★★☆☆☆

おわりに

● 公認会計士試験も、司法試験に並んで難関であり、いばらの道。
● しかし、司法試験や予備試験、ロースクールでの学習を生かせる部分も意外とある。
● 2つの資格を取得できれば、ほかの弁護士や公認会計士と大きく差をつけることができる。

筆者自身は司法試験だけで手いっぱいですが、志の高さと能力に自信のある方は、ぜひダブルライセンスに挑んでみてくださいね。


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The Law School Timesは司法試験受験生・合格者が運営するメディアです。「法律家を目指す、すべての人のためのメディア」を目指して、2023年10月にβ版サイトを公開しました。サイトでは、司法試験・予備試験やロースクール、法律家のキャリアに関する記事を掲載しています!noteでは、編集部員が思ったこと、経験したことを発信していく予定です。

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[1] 「公認会計士試験に関するQ&A」「Q5」 https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/qanda/index.html#gaiyou
[2] 「令和5年公認会計士試験の受験状況について」 https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/r5_jyukenjyoukyou/01.pdf
[3] 「令和5年公認会計士試験(論文式試験)の合格点及び合格率等について」 https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/r5shiken/ronbungoukaku_r05/02.pdf
[4] 「令和5年公認会計士試験 合格者調」 https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/r5shiken/ronbungoukaku_r05/03.pdf
[5] 「公認会計士の資格取得に関するQ&A」https://www.fsa.go.jp/ordinary/kouninkaikeisi/index.html
[6] 「公認会計士試験に関するQ&A」「Q64、Q65」 https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/qanda/index.html#gaiyou

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