「静かな退職」の時代、部下が生き生きと働けるリーダー像とは。
今、ブームになっている「静かな退職」という言葉。
ビジネスインサイダーによると、実際に退職するわけではなく、必要以上に一生懸命働くのをやめること、といったような意味のようです。
ワークライフバランスを整えるといえば聞こえが良いのですが、「仕事に対する熱意を失い、必要最低限の作業のみこなして何とか1日をやり過ごそうとする従業員の働き方を指す(ジャパンZDネットコム)」ということなので、雇用側にも従業員にもあまりハッピーな気配は感じられません。
元来、日本人は仕事を通じてやりがいや達成感を感じ取り、自己実現を図ることを得意としている人種なのですが、どうしてこのような言葉が共感を得てブームになってしまっているのでしょう。
部下が生き生きと働いてくれる職場にするには、上司(リーダー)はどうあればよいのでしょうか。
真面目で責任感が強く、人任せにできないリーダーの元で働くのは辛くなる
真面目で責任感が強いリーダーというと一見頼りがいがあって素晴らしいと考えられがちなのですが、これも度が越すと直属で働く部下にとってはキツイものになってしまうことがあります。
リーダーが完璧なので職場に問題点や課題をみつけにくく、仕事は決められたことをただ実行するだけという状況になってしまうのです。
向上心のある従業員は試行錯誤や提案ができない環境を物足りなく感じることもあるでしょうし、特に向上心がなければ上からの指示待ちのような状態になりがちです。
自分の担当だけをやればよいといった気持ちが日常になれば、それが「静かな退職」に近い感情になっていくことが考えられます。
自分がなんでもできる上司であっても、時に部下にあえて仕事をやり切ってもらうことを意識し、失敗しそうでも相談されるまで見守る勇気も必要ということです。
上司としての責任を放棄したり、責任を部下になすりつければ、現場はやる気を失う
逆に責任感のないリーダーというのも困りものです。
部下が何かの失敗をしてもフォローすることなく部下にだけ責任を取らせる、あるいは現場の雰囲気が悪くても上司として介入しようとしない、こんな感じでは部下はみな失敗を恐れて必要以上に頑張ることを止めてしまって当然でしょう。
可もなく不可もない「静かな退職」モードで仕事をする人が増えるのも致し方ない環境となります。
「失敗してもかまわないから、全力でやってごらん」
「現場の責任は私がとるから、怖がらないでチャレンジしてみて」
このような声掛けが出来る上司がいつの時代にも求められるのは、リーダーが上司としての毅然とした責任感を持ち、現場をしっかりと見ている、守っていることが部下に伝わるからなのでしょう。
リーダーが現場の一員になってしまっているのでは上司の役割は果たせない
まれにリーダーが現場の一員となって皆で和気あいあいと仕事をしているチームを見かけます。
一見和やかで素晴らしいように見えるのですが、実はリーダーが上司としての役割を果たしていません。
こういう現場ではえてして売り上げが落ちたり、事故が起きたり、間違いが横行したりしているものなのですが、リーダーも部下もチームワーク良くやっているという自意識だけが高くなっていて問題点をとらえる力を持ち合わせていません。
仕事というのはどんな仕事であれ専門性を求められるもののはずなのに、こういう環境になってしまうと専門性の追求どころか、友達同士、サークル活動のようになってしまい、時に恋愛などが生まれてしまうなど、弛み切った空気は「静かな退職」以上にやっかいなものといえるかもしれません。
リーダーは部下に対して同化するのでなく、毅然とその役割を果たすことが求められます。
自分の気になること、直前にしか伝えないリーダーだと物事がうまく進まない
リーダーは全体を見る力を持ち合わせることが必要ですが、それができていないケースというのもよく目にします。
例えば仕事の用事を直前になって指示する、前後の脈略を省いて用件だけを伝える、こういう傾向がある上司のもとでは部下はとても働きづらくなります。
言われたことはわかっても指示されたことの全体像がつかめないので、消極的な業務に陥らざるを得なかったり、あまりに直前に言われるので丁寧な仕事ができなかったりするからです。
上司からのこうした指示が日常的になると、総合的に自分が頼りにはされてはいないというふうに部下は感じ取ってしまうこともあります。
そうなると「静かな退職」の始まりです。業務の指示は前もって余裕を持って行うこと、また可能な限りなぜその業務を頼むのかしっかりと説明をすることが求められます。
まとめ
部下がいきいきと働いてくれる職場にするには、直属の上司がいかにきちんとその役割を果たせるかというところが大きいことがおわかりいただけたでしょうか。
「静かな退職」には必ず理由があるということ、それを止めるには直属の上司(リーダー)の所作が一にも二にも大切であるということを肝に銘じて、現場の力を最大限に導きだしていきましょう。