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【短編小説】悪魔と泥仕合 -file3-

割引あり

 ここは真昼の夏の日差しが照りつける大自然の森の中だ。青々とした木々が暑い風に揺られて、葉を鳴らしている。木々に留った鳥たちが甲高いハーモニーをさえずっている。

 その合間をって蝉が強く鳴いて、夏の風物詩を醸し出している。そんな中を流れる大きな川で弾けるような水の音だけが、唯一、涼しげな揺らぎを与えていた。この炎天下の中、森の木々の影を利用して、獣道を歩く四つの人影があった。

 額に汗をかきながら、青いリボンが付いた麦わら帽子を被り、背中と両手に大きな荷物を背負ったイケメン男が一人。その隣には、同じく赤いリボンをつけた麦わら帽子を被った美人が一人。美人の背中には、黒い野球帽を被った幼い男の子。その後ろには同じくピンク色の可愛らしいリボンをつけた麦わら帽子を被った五歳ぐらいの女の子が一人。さて、”帽子”って何回言ったでしょう?

「はあはあ、暑い・・・。何で、クイズ出してるんだよっ!今、それどころじゃないのにっ!」

「ちょ、ちょっと、暑さで、頭がどうかしちゃたんじゃないの?急に何を言い出すのよっ!」

美人妻がイケメン夫を白い目で見ている。

「今、聞こえなかったか?”帽子って何回言ったでしょう?”って。説明分の中に疑問符なんて使うか、普通・・。ちなみに答えは、三回だな」

「ちょっと、あんまり本当の事を大声で言っちゃダメよ・・。あと、答えは五回よ」

「はあっ?どこが?」

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5,151字

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