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引っ越しました

国道を挟んで向こう側に引っ越した。
最寄駅は変わらない。広くて南向きで窓がたくさんある家に住み替えた。旧家は狭いし北向きで日当たりは悪いけど、鉄筋コンのお陰か周りの音があまり聞こえず静かだった。
コロナ禍初期、好きに外に出ることが許容されない時期、狭くて日中もうす暗い静かな部屋で、周りから切り離されて、世界には自分しかいないような感覚を覚えた。孤独だけど心底自由だと思った。段々と賑わいを取り戻す外の世界を横目に東京のしじまで淡々と気楽に過ごした。
マスク着用が個人の自由になった時、今外さないとタイミングを逃すと思って、すぐにマスクを手放した。久々にフルフェイスを晒して人と会うことに抵抗はあったけど、数十で慣れた。会社の飲み会やプライベートの誘いが増え、人と会う機会が多くなった。人と会う日は1日が濃くなることを思い出した。
2回目の家の契約更新通知が来た。何となく引っ越すことにした。いろいろな物件を回った日、内見の帰りの車中、不動産屋の人が最近引っ越す人多いですよ、ブームなんですかね、と言っていた。みんな動きたいと思う時は被るもんなのかな、そういう星周りなのかなとか、スピっぽいことを考えた。車の窓の外、見慣れた街並みが慣れないスピードでぐんぐん過ぎていった。
引越し当日、狭い部屋に押し込められていたたくさんの荷物は業者の人によって1時間もしないうちに綺麗さっぱり運び出された。慣れ親しんだ空間の見慣れない状態に寂しさと切なさを覚えた。孤独と自由を与えてくれた狭くて静かな空間に、今まで住んだどの家よりも愛着が湧いていた。もう一生来ないだろうから尚更だ。

新居は1階だから外の音も聞こえやすくて、目の前の道を通る車の音や人の声が頻繁に聞こえる。前のような静けさはない。広いのに窮屈な気がする。それでも適応力が割とある私のことだ、この環境にもサクッと慣れるんだろうな。こんなふうに書いて残さないとたぶん1ヶ月後には忘れてしまう。適応力というより忘却力か。
一人で過ごすことが多かった私も、ここ2〜3ヶ月土日も毎週予定がある。引っ越して1ヶ月経とうとするが、家を空けることが多くてなかなか片付かない。早く理想のインテリアに近づけたい。

この広い家で私は何を思いどう過ごすのだろう。

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