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低空飛行note

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ひきこもり・メンタル系の当事者会〈低空飛行net〉から生まれた書きものサークルです。表現したい、発信したい、そんな何かを載せられるnote。物好きなメンバーが気の向くままに更新中。
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#生きづらさ

人といてやわらいだ世界

「このハイライト、あの人のブルベの肌に似合うよな。」 「これ、あの人の好きな青、だろうか。ちょっと緑っぽいかな?」 私の頭がつぶやくとき、いつの間にか他の誰かがそこ加わっていることに最近気づいた。 ひとりでいるのに、私の世界にはひっそりとした温かさが存在している。 それは変化と呼ぶには些細なことで、あまりに曖昧かもしれないが。 ずっと他人を思考回路に入れることが怖かった。 思い描く他人は、いつだって強くて、攻撃的で、異物を見るように遠くから顔をしかめている。 人との関わりの

スミレのマカロンが食べたい

「スミレは香りが良く、ほんのりと口から鼻に広がっていくのがとても良く出来ていて……」 透き通るような金髪を丁寧にセットした、わたあめみたいな日本語を話す店員さんがそう紹介してくれた。 私の記憶では色とりどりの可愛らしいパレットみたいな並びの中で、スミレは少しくすんだ、薄紫色の控えめな姿だった。 なんでだろう。あの時買わなかった、ピエール・エルメのあのマカロンが今頃になって無性に食べたくなってしまった。 薄紫のマカロンを思い描いて、その色と同じような、なんだか切ない、霞がか

「俺、猫飼ったんすよ」

結局救ってくれるのも人なんだな、とバカみたいに簡単に和らいだ胸の内を他人ごとみたいに感じながら、そう思った。 人と関わりたくない、会いたくない、触れたくない、とひきこもって安全に私を守る城壁を強くしようとしていた。壁の一部を取り除いてそーっと他人を入れてみると、内側も外側も陽のあたる湖面みたいに穏やかだった。 嬉しくて気が抜けてしまった。 先日、体調を崩して長く休んでいた事業所に戻った。 行く、話す、と決めたのに、直前まで本当にこれがやりたいことなのかと悩み、胃が波打つよう

病んでるってきついけど感動もする

初めて「助けてほしい」という言葉が頭に浮かんだのは7年前。やけに静かに感じた夜だった。スマホを両手で握りしめ、メッセージの入力を促す、点滅するカーソルをじっと睨みつけながら、とうとう私は認めた。 自分はうつ状態にあるのだと。 数えられないくらい長い間、自分なんてつらいと思う資格がないと思っていた。 世界にはもっと大変な状況で苦しい想いをしている人がいる。もっとひどい苦難を生き延びて笑っている人がいる。 精神を病んで助けを受ける権利というのはそんなところにあるのだ。 もっとも

本と、ぬいぐるみと、ひとりではないこと

心臓は落ち着いて鼓動する。足取りは軽い。じっくりと時間をかけて暗転していく空に焦ることもない。 私のかばんには上質な紙で仕立て上げられたハードカバーの本が2冊入っているからだ。彼らと一緒にする散歩は独りの不安感を押し下げてくれる。 歩き出すと、じんわり汗ばむ肌の上を涼しい風が吹いていく。蒸した空気が世界に充満している。夕暮れの草と土の混じったにおいを通り抜ける。遠く、敷きつめられた雲から差し込む太陽の薄い光が、いびつな形をしていて、何かの後光が照らしているようだ。 小さな余

グレーの日、グレーの世界

魂の殺人、というらしい。妙な言い当て方を考えついたものだと思う。 魂なんていうのを担う組織はないし、どこにも見つけられない。でも、ある、と信じて人は大事に抱えていようとする。ほとんど無意識であっても。 だからそれが壊されそうになったとき、精神的ショックとか、深く傷ついた、とかいう言葉で言い表すのは激しく違うと感じるのだ。大事に覆いをかぶせて、そこにあると思っていた何かが、ボロボロになっているのを「魂」という言葉で表現されるのを、なるほど、と思った。 朝から豚肉の厚切りステ

日記:帽子で凹み、自己像を語る

コツコツコツ。ぱちりぱちり。 開けた掃き出し窓からちいさくちいさく響いてくる音。 庭に置いた皿から小鳥が皮つきの餌をついばみ、せっせとむいて食べているのだ。おそらくスズメだが、そう思って見に行くと全然違う鳥だったりもする。でもこんな時間だし多分スズメ。 皮つきのキビやアワを食べている間、彼らは妙に静かだ。しっかりと、黙々と。カニ食べてるときと一緒だ。手間かかって忙しいから余計なことは言ってられないのだ。 重くなった空とさっきから勢いを増し続けている風。気をつけないと消えて

とうふドーナツ -母と私のこと-

私は彼女を母と呼びたい。何が起きても、何かが欠けていても、その関係がいびつなものでも、その人は大切な私の母なのだ。このこじれた関係性に別の俗称がついていても、その呼び方はしたくない。 子供の頃、空が真っ暗になってみんなは家にいるだろう夜時に、母は私を連れて駅前のスーパーに行くことがあった。たまにしかないけれど、定期的に訪れるその時間を好きだったように思う。 母は、もし残っていればほとんど絶対に、お豆腐屋さんが入っている売り場で、”とうふドーナツ” を買ってくれた。 「へへ、

日記:あたま爆発とおしり

たまに「うわーーーなんかあたま爆発しそう!」というときがある。 5月6日夜、今がその時。 この症状に名前はついているのだろうか? 「なんか…あたま爆発しそうでしんどいです。」 と医師に伝えても 「それはつまりどういう状態ですか?」 と聞き返され、 (だから!あたまが爆発しそうな感じの状態です!) と心の中で叫ぶ。 無理やり言葉を変えるならば、「頭が忙しすぎる」ということも出来る。 ただこれも、「それはつまり…(略)」の問答へと向かってしまう。 今診てもらっている医師は、

マスク外したくない

顔、見られたくないなぁ……。 取ってみたら結局ブスなんだよ。 隠されてることに期待を込めて見てこないで。がっかりすることはわかってるでしょ。君が思う理想よりブスなんだって。 休憩を取ったのに視線がばっちり合っているので水が飲めなかった。 人に見られるのがつらい。イヤイヤ期をこじらせたようで。 マスクで覆われていると安心して話しているのに、外した途端に汚いもの見せちゃってる気分だ、落ち着かない。 あぁ。コロナには本当に助けられてたな。「見られたくない!」っていうおかしなレベル

雨の降りはじめ

足取りがゆっくりになっていた。会社員らしき3人組が談笑しながら追い抜いていく。視界に入った景色を見つめながら、懐かしさとその後に浮き出た涙の気持ちが胸を押し上げる。目に入った建物の何かが昔見た記憶の紐をひっぱったようだった。 どんよりとした曇り空の下、クリーム色のやわらかな波線を描く壁と、入口に置かれた深緑のコニファーの鉢植えが2つ。 大学生の頃ロンドンの街を歩いたことがある。いつでも雲を残してにごった空色とぎっしり立ち並ぶ古い建物、くすんだ路上の車たち。そこかしこにある鉢

5つ目のピアス

ピアッサーで穴をあけること5回目、失敗した。 これで失敗した穴は4つ、思い通りに開けられたのは1つだけ。不器用すぎないか。私はピアス開ける人というカテゴリにおいてポンコツなのか。 もう皮膚科行って他人に開けてもらうしかないのか。 元々両耳1つずつ開いているので、2つめの穴の角度と位置にはこだわりがあって定めるのが難しい。 初回は、瞬間ピアッサーでバチーンとあけた。器具で位置が見えない上に手がブレて両耳失敗。もう使わん。 次からは自分でむぎゅっと押す手動式タイプを使ったが、そ

日記:玄関前でコーヒーを飲む

風が怖くて外に出られない。「びゅうぅぅぅ」というという音は心臓の近くを突き抜けていき、イヤホンで流す音楽よりもずっと強くてもっと近い。皮膚に当たる感覚に布越しでも不安にさせられる。この風はもうレベル10だ。やばいやつだ。 世間では今日は春らしい爽やかな晴れの日なんだと思う。私はどうやら調子が最悪の手前なのでそんな世間とは隔離されてしまっている。ここ3日くらい外は怖くて仕方ない。 食材が欲しかったので午前中本気出してスーパーに出かけた。 ほんっっとに本気出した。 最短コースだ

調子が悪い日の日記とAvicii

気分が悪い。これは鬱だ。 昨日から「なんかすっごい落ちてる、何も出来ないんだが。」と思っていた。今朝は少しマシになった気がしたが、また昼過ぎから半分死んでる。 頭の中がざわつくように落ち着かなくて何もちゃんと入ってこない。読んでいるが記憶されない、聞いているが芯で理解できない。 頓服薬のおかげでネガティブな気持ちはクレッシェンドしないが、とにかく沼のようにどよんと重くて頭が回らない。 英語を再勉強しようかなと、Twitterでフォローしていたアカウントの翻訳がちょいちょい間