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こんにちは、ママさん、貴女の笑顔 〜学校エッセイ15〜

モンスターペアレンツという言葉があり、そういう保護者がいないわけではないが、教師生活26年、ママさん(お会いする保護者はどうしても女親が多い)たちにたくさん笑顔をもらい、笑顔を返した。

PTAに現れない保護者にも、必須の三者面談では担任として会う。26年分全員のお顔を憶えてはいないが、雰囲気をふんわり憶えていたり、声色まではっきり憶えていたりする。
親子漫才みたいに30分以上居座った二者(子どもが部活の練習を長くサボりたかった)。
延々子どもに文句や愚痴を言いまくった一者。
子どもと私の話を黙って聞いて、最後に「はい、本人のことですので任せます」とだけ言った一者。
「うっせーなくそばばぁ」と隣の母に吐いた一者。
父と母と母の抱いた子と本人とで現れて、幸せ家族アピールをするけれどどこか胡散臭かった一家。

面談と話は離れるが、少子化故なのか、子どもの部活の合宿にバスをチャーターして差し入れや見学さに来るママたちもいたそうだ。たまには大人の羽を伸ばせば良いのに。わたしのお母さんはそういう「THE・お母さん」ではなかったから、少し羨ましい気もするけれど。鬱陶しいくらいの愛。

結婚式を挙げなかった私に花嫁のベールを作ってくれたお母さん、経営する飲食店に伺ったら、「うちの子をよろしくお願いします!」と言ってくれたお父さんは、今はこの世にいない。

自分には実子がいないから、この人たちと同じ立場を身を以て味わってはいないのだ、と思いつつ、「私にも子どもがいますが」という枕詞を言えない私なりに、取れる態度を、務められる役割を模索していた。

謙虚に出れば助けてくれる。
一度怒らせたら怖い。
どんな人間関係だってそうだけれど、ママさんたちとの接し方に、コツみたいなものはたぶんある。うまく言い表せないけれど。

生徒や他人に対し無関心なら流石に教師はやらない方がいいが、距離を保つことは必要だ。ベタベタしすぎないで必要な情報や指示を与えていれば、師弟も、大人同士も自ずと親しめるものだと思う。我が子と馴れ合う教師を、ペアレンツの多くは好まない。警戒する。それに仲良くなりすぎていると、ミスやトラブルが発生した時(それは不可避だ)の関係の崩れ、ダメージが大きい。恨みが残る。「信頼していたのに」。

ママが、親が、笑っていれば子どもも教師も幸せで、安心して「生徒」「先生」を張れる。

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