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【技術】4時間目_中学校2年生


中学2年生の技術の時間にて。


当時の中学生には珍しく、私はブラインドタッチをしていた。

それもそのはずで、私は小学校4年生のときにはタイピングソフトでタイピングの練習を開始していた。そのころ母がNTTの104でパートを始めるにあたり、PC画面に向かって日夜練習していたのを見て憧れたためだった。


中学校当時の私はこれといって勉強で優秀な成績を出すわけでもなく、1年生から2年生に上がるときにテニス部も辞め、学生として【パフォーマンスを上げる】というい意味で、秀でて良いところも見当たらなかった。

当然授業にも面白味を見いだすことなく、「早く終わらないかな」と思いながら時間を費やすだけの日々だった。

その点、技術の時間は退屈しない。実践・体験がある授業はなにかと良い暇つぶしになる。そして、技術の中でもPC操作ならば得意なのだ。

技術の先生とは、取り立てて仲が良かったわけでもない。先生の名前も忘れてしまった。ただ、幼稚な男子と先生が追いかけ合っこをする姿を見ていて、「子どもが好きなんだな」ということだけは感じ取っていた。「そもそも国語の先生なんだけど、技術の免許も持っていて、今たまたま技術を教えているだけ」と授業内で先生が言っていた記憶もうっすらある。

先生はいとも簡単にブラインドタッチをする私をみて、腕を組み私の手元に目線を落とし、ぽろっと「リリー、商業高校とかいいんじゃないか。」と言ったのだった。

あえて私を喜ばせようと放った言葉ではなく、確かに感心して言っている言葉だということは肌で感じることができた。褒められたこと自体が中学生になって初めてだったような気もする。ある意味、初めて受ける本当の「褒め」だった気がした。

その時、私の中に「商業高校」という選択肢ができた。

「商業高校ではこういう勉強ができるのか」

PCに向き合いつつ、悲観的にしか考えられなかった将来のイメージがすっと変化し、私の脳内にフィットした。


どうやら、世の中には5教科以外に力を入れている高校もあるらしい。


そもそも勉強も嫌いだし、高校を出たら働くつもりでいた。ちょうどいい。


「商業高校にいこう」


そう決めた伏線を作ったのは、間違いなく技術の先生の何気ないつぶやきだった。

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