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撮ったら残ってしまうから/戸田真琴

 「I‘m a Lover, not a Fighter.」で、ポートレート撮影に関するアンケート調査を行った。撮影者と被写体両方、そして現場スタッフをしたことがある方も対象として、プロ・アマ問わず、「人物撮影」に関わる人たちが撮影現場で感じていることの実態を知るためのアンケートだった。

 これをやることになったきっかけはいくつもあるけれど、そのうちのひとつが3rd season “Don’t hurt my heart”のscene1の撮影だった。このパートは、「romance」というシーンタイトルからも読み取れるように、男女の恋愛模様を描いている。原宿・竹下通りでさざなみさん演じる主人公が出会うのは、カメラを持った男性(モデル:木口健太さん)。ふたりは「撮る/撮られる」の関係を通じて親しくなっていく……というのがストーリーの導入で、その後の展開は写真を追ってくれた人ならばふんわりと理解していると思う。
 これは実際に、「被写体」としてSNS上でカメラマンとマッチングするなどしてモデル活動を行っている女の子たちから、Loverチームの耳にもよく飛び込んでくる話をもとにしている。要するに、「撮る/撮られる」の関係性が性的関係に結びついたり、あるいはそれが一方的なものとして加害になることは残念ながら珍しい話ではないということだった。今回のモデルのお二方もこの実情を理解しながら、繊細なところまでこちらの表現意図を汲んでくださり、かなり意識的にこの関係性を描こうと試みることができた。
 現場でもだんだんと具体的な被害の話や、スタッフとして入った現場で見た違和感のある撮影様式の話、驚いたり怖い思いをした話などが交わされるようになり、こういう話を誰にも話せず抱えている人は多いのではないかと思った。また、私たち運営メンバーはほとんどが女性なので、どうしても女性視点からの撮影現場での話を聞くことに偏っている。被写体側だけでなく撮影者側にとっても、現場というのがどういうものなのか、そしてそこでどんなことに困っているのかをフラットに知りたいと考えた。そういう経緯があって、アンケートの実施に至ったのだった。

   結果は記事を参照していただきたいのだが、この結果を見て、みなさんはどう感じただろうか。幸い、回答者の男女/ 撮る側撮られる側の比率もほぼ半々で、どちらの側からの意見も伺うことができた。ご協力いただいたみなさんに、改めて感謝したい。この結果には目を逸らしたくなる現状ももちろんあるけれど、わずかながら希望もあると思った。違和感が生まれたことに対して、対策を講じたり相手を思いやろうとしている報告を見るたびに、こういう人がもっと増えたらいいなと感じた。しかし、報告された違和感の数に大差がなかった中、その不満の内容の質には、「切実さ」という大きな差があると感じたのも事実だった。撮影者の抱く違和感の中には「二人きりになれなかった」「プロフィール写真と実物のモデルとの顔が違った」「しっくりこなかった」…等、撮影自体に思うように”満足”できなかったことによる不満の声が多く見られたのに対し、被写体の抱いた違和感には、性的な視点による心理的/身体的加害の報告、すなわち、そもそも”安全”に撮影ができなかったことによる報告が多く見られたことについては、いくらフラットに見ても、どうにも不均衡性があると感じられてならない。
 立場の違う二者のうち一方が不満や違和感を訴えると、もう一方が「自分だって不満がある」と主張し返すことによって停滞する議論を、私たちは普段から途方もないほど目にしてきているけれど、たとえば今回のアンケート結果を見たときに、撮影者の抱く違和感と被写体の抱く違和感はほんとうに「どっちもどっち」「どちらにも非がある」などと言えるだろうか?ということを、今一度考えてほしい、そして我々も写真作品を制作する身として深く考えていかなければならないと思った。

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 ここで回答いただいた皆さんのうち多くは、おそらくSNS上での作品発表や撮影会での撮影など、プロ・アマで言うとアマチュアの部類に含まれる活動をしていると思う。多くが個人間のコミュニケーションや少額の謝礼のやりとりで成り立っており、非営利なぶん、信頼関係と互いへの敬意が、撮る/撮られるの関係性を安全に保つためにとても重要な要素になっていると考える。この撮影がお互いにとって良いものになるように努めること、そして「相手に自分の思い通りに動いてほしい」といういきすぎた欲求をコントロールし、理性と健全なクリエイティブ精神をもって相手を尊重すること、そういった、人として当たり前の敬意が、トラブルを防ぐための重要な鍵になっているのだと私は思う。

 とはいえ、プロの世界でも耳を疑うようなトラブルは未だに存在する

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