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発売禁止になった理由を考えてみた【蟹工船】小林多喜二著

「この作品の何が気に入らなかったのか」

1929年に発売された作品です。
しかし、後に発売禁止になりました。
著者は逮捕され、その後特高に虐殺されました。

労働者を使い捨ての駒のようにみなす支配階級。
約100年前の作品ですが「この頃から、この国は進歩したのか」と考えざるを得ませんでした。

労働基準法などこの時代と比べて、
労働者を守る法律はあります。
この時代ほど劣悪な環境はないと信じたいです。

しかし、根本的な体質は
あまり変わっていないと感じました。

メロディアスライブラリー2008.9.7放送。
詳細はこちらより。


・口答えをしないと見越す

物語で、蟹工船にやってくる労働者は
生計が立てられない百姓や漁夫、
函館の貧民街の子供たち、貧しい学生。

劣悪な環境に置かれても
「他に行くあてがないから大人しく従うだろう」と見なされてる人たちばかりです。

現在の売り手市場なら
「不満ならやめる」という選択肢があります。
しかし、ここに集まってる人たちは
それができない人ばかりです。

弱みを握られていると感じました。

・代わりはいくらでもいる

登場人物には個別の名前がありません。
雑夫、漁夫など職業名で登場します。
それに対して船長や監督には名前がありました。

労働者はモブキャラ扱いと感じました。

支配階級は、労働者が病気になろうが、死のうがお構いなしです。
「人間を使い捨てる」という言葉が
こんなに合う状況はないでしょう。
現在で言うところのブラック企業でしょうか。

日本は現在少子化が進んでいるので、
将来的に労働力が減っていきます。
経営者から見たら、労働者を使い捨てることはできなくなると予想します。

それでも意識が変わらず、
使い捨ての駒のように労働者を扱う会社は
淘汰されると予測してます。

・「俺達には、俺達しか味方が無えんだ」

最後に労働者はストライキを起こすものの
軍に制圧されてしまいます。
「軍は金持ちの味方か」とうなだれる労働者。

「いざとなったら国が守ってくれる」が幻想なのを
よく描かれていると感じました。

・感想

所々に「単なる一会社の儲けじゃない。
国際上の一大問題」と
「お国のため」とちらつかせる表現がありました。

それと対比して、ロシア人が
「あなたたちは貧乏人」
「働かない人いない、ずるい人いない」と
労働者に対して語ります。

国民が現状を認識して、
国民自身が搾取されてると気づいたら、
国としては都合が悪いでしょう。

おとなしく黙って働いてくれる方が
都合がいいわけですから。

それもあって発売禁止になったと感じました。

「この表現がダメだから発売禁止」と言うよりも
国にとって都合の悪いことに気づかれたら困ると
いう思惑が透けて見えました。

以上、ちえでした。
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