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武器を与えられず、丸腰で生きていかないといけない子どもたちの現状【ルポ 誰が国語力を殺すのか】石井光太著

「そもそも自分の気持ちを伝える手段を持ち合わせていない」

本書に出てくる子どもたちの事例から
「言葉」という武器を与えられずに
丸腰で戦場に行かされている状態に見えます。

なぜこんな状況になったのか。
家庭、学校、ネット、ゲーム、国の制度。
これらの視点で書かれています。


・なぜ不登校になったかわからない

「なぜ自分が学校に行けなくなったか」
理由がわからない子どもたちが多くて驚きました。

文科省の令和2年度の調査によると、
不登校になった子どもたちの半数近くが「無気力・不安」が原因としています。

更に、「どのようなことがあれば休まなかったか」という質問をしました。
小学生の55.7%、中学生の56.8%が
「特になし」と回答しています。

この調査から自分がどうしてほしかったか、
言語化できていないことが伺えます。

「○○さんにこんなことをされて嫌だった」
「勉強がついていけなくて苦痛」
そう言える人は、比較的言語化の能力が高いのではないかと思うくらいです。

不登校だけでなく、少年院に送られた子どもの事例も出てきました。

著者のインタビューに対しての回答が
「わからない」「言われたから」
この言葉の多さが印象的でした。

まるで、自分を表現する手段を奪われた、いや、そもそも与えられなかったように見えました。

・ゆとり世代と言われるけど

2002年から10年間ゆとり教育が行われました。
それの伴い、国語だけでなく全ての教科の内容が削られました。

当日私は中学2年生。
中学3年は総合の時間があったのを思い出しました。

高校に入ると、ゆとりも何もあったものではありません。
中学校で削られた内容が、高校に移動したため、学ぶべき内容が一気に増えました。

ゆとり世代と言われますが、自分はそこまで影響を受けなかったと感じます。
影響が大きかったのは、その頃小学生だった人たちです。その人たちは今20代。
これからゆとり教育の影響が出てくるでしょう。

その頃、私立の学校を受験する人が増えたとニュースでよく見聞きしてました。
多くの保護者が「公立の学校は信用できない」と危機感をあらわにした結果です。

家庭環境や親の収入で、子どもの学歴や将来の収入が決まってしまうかのような雰囲気でした。

2023年現在、その格差が当時より拡がっているように感じます。

・視野の狭い人たちが決めた

官僚など法律を決める人たちの多くは、エリート層で恵まれた環境で育った人ばかりです。
困難な家庭の状況を全く考慮しなかった結果、こんな政策が行われたと指摘されていました。

「学校がやらなくても、家庭で親が読み聞かせなどすれば大丈夫」
こんな理由でゆとり教育が決まっていったとのことです。

すべての家庭で、適切に行われるわけではないことを完全に見落としているようです。

・感想

他にネットやゲームなども触れられていました。
様々な要因が考えられるけど、一番影響が大きいのは、教育制度だと思います。

公立の学校なら、学費の高い私立の学校に比べて経済的に苦しい家庭の子どもも通えます。
家庭環境に関わらず、学ぶ機会が得られます。

しかし、我が国の公教育への予算は少ないです。

このニュースから、保護者の負担が大きいことが伺えます。

教員が不足しているのが問題になってますが、それでも人件費すら出し渋っているように見えます。

著者の怒りの矛先が、文科省だけでなく、
教育費の予算を出し渋る財務省にも向かっているように見えました。

「なぜ今の子どもたちがこのような状況になっているか」
その現状がよくわかる本です。
国民としては、「もっと公教育に予算をかけてほしい」と国に意見フォームを出すくらいしかできないのかな。

親自身ができる方法は載っていないので、
別の本を読んだほうがいいと思いました。

以上、ちえでした。
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