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「どれも捨てがたい」 鬼滅の刃を10倍楽しめる本【鬼滅夜話】植朗子著

「これは公式ですか」
解説がとても丁寧でそう思いました。

鬼滅の刃に熱中し始めてたときに
AERAdot.で見つけました。

どのキャラの考察も鋭くて驚かされました。
余談ですが、公式ではありません。
著者は神戸大学で研究員をしてる植朗子さん。
伝承文学、神話学、比較民俗学が専門です。

昔話をベースに解説されている記事が
少なくありません。
著者には、私が見えないものが
見えているのではないかと思いました。

「なるほど」と発見ばかり。
より深く理解できるので
読めば10倍は楽しめるでしょう。

鬼も含めて、どの項目も捨てがたかったですが、
特に印象に残った5選を紹介します。


・1.甘露寺蜜璃編

刀鍛冶の里編で登場するので楽しみです。

通常の成人の8倍の筋力があり、
力士3人分の食事をします。
桜餅を大量に食べ続けたため、
目と髪の色が特殊な変化をしました。

その外見ゆえにお見合い相手から
手厳しい言葉を浴びたことがあります。

「女性というだけで、
どうして自分の長所を
罵倒されなくてはならないのか」

戦闘に捧げることになるほど、
「自分という存在」を否定されることに
苦しんだと指摘。

今が簡単になった訳ではないけど、
大正時代は今以上に、「女性が強くあり続けること」が困難かと感じました。

一方で、「普通の女の子」として
自分のことを愛してくれる※誰かがいるのではないかと「恋に憧れて」いました。

※その「誰か」がちゃんといましたね。良かった!

・2.伊黒小芭内編

おばみつファンなので、彼も外せない!
「なぜ蛇を首に巻いているのか」と
疑問に感じました。

幼少期に蛇鬼の生贄にされそうだった過去があり、嫌悪感を抱いてもおかしくないはず。
著者と同じ疑問を持ちました。

迷い込んできた孤独な蛇である鏑丸と自分を
重ね合わせたという指摘に
「なるほど」と思いました。

彼自身が「自分の血」をどんなに呪おうとも、彼は強く、優しく、清廉な「蛇柱」だった。彼によって、多くの命が救われた。
(中略)
伊黒小芭内には走馬灯は必要ない。彼の目には、大切な友・鏑丸と、愛する甘露寺蜜璃の姿がずっと映っていたのだから。

鬼滅夜話 p186

最後に締めくくってましたが、
ジーンと来ました。

先日の原画展でも、
このシーンの原稿が展示されてました。
見たかったけど、
ずっとその場から離れず見てる人がいたので、
仕方なくその人の後ろから見ました。

多くの人の心に残ってるシーンと
改めて感じました。

・3.獪岳編

「寂しい」と素直に表現できていれば、
鬼になることはなかっただろう。

悲鳴嶼さんの寺にいたときも、
元鳴柱の桑島のもとにいたときも、
孤独を感じていました。

2人とも彼に目をかけていたでしょう。
しかし、目をかけていたのは1人ではありません。
悲鳴嶼さんの寺には他に子どもたちがいたし、
桑島のもとには、善逸がいました。

「自分だけを見つめてほしい」
素直に言葉にできないと
こんなに拗れるものかと感じました。

・4.鱗滝左近次編

「本当は弟子を死なせたくない」
本編でも、先日行った原画展でも、
そんな心情が明かされてました。

それでも育手をやるのは、
かたき討ちに心が囚われている子どもたちは
いずれ危険な目に遭うかもしれないと
案じたからです。
彼らを鍛えることを選びました。

・5.鬼殺隊の子どもたち編

鱗滝左近次は「本当は弟子を死なせたくない」、
「藤の家」に住む女性は
「生きのびること」と
「美しい心が失われないこと」を願います。

そんな大人たちの願いもむなしく、
子どもたちの戦闘は激化します。

コミックを読んでるときは
完全に炭治郎など鬼殺隊のメンバーからの
目線でしか見てませんでした。

しかし、鱗滝さんにしても、
「藤の家」に住む女性も、
親のような目線で見ているんだなぁと感じました。

鬼滅の刃の物語の世界に没入すると、
感覚が麻痺しそうになります。

自分の子どもたちが、志望しているとはいえ、
戦いに行くとなると、
鱗滝さんや「藤の家」に住む女性のような心情になるのも無理がないと思います。

・感想

「積読本リストに入れてたので読むぞ!」
そう思っていたので、
原画展の待ち時間で読みました。

 私以外に、『鬼滅夜話』を読んでる人はおろか、
そもそも本を読んで待ってる人は皆無でした。
「日本人の約半数は月に1冊も読まない」は
こんなところで裏付けられました。

驚いたことに、
本の内容と展示会の内容が繋がっていました。
より鬼滅の刃の世界観を楽しめたと感じました。

無限電車編と遊郭編の展示会のときは、
百貨店内で開催していたので、
テナント内の書店で鬼滅の刃の仏教本を購入。
読みながら待ってました。

待ち時間が長くなりがちなので、
いい時間潰しになります。
次もこんな展示会があったらお供したいです。

2月公開の映画を見に行く方へ。
前もって出てくる登場人物の章だけでも読むと
より楽しめるので、お試しを。

以上、ちえでした。
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