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無駄なエネルギーを使ってませんか【爆弾】呉勝浩著

「怒り、憎しみ、殺意をぶつけられることを
望む人間がいる」

にわかに信じ難いですが、
スズキタゴサクを見てると、
そうとしか言えません。

酒屋の自販機を蹴りつけて、
止めに入った店員を殴ったことで
警察署に連行されたスズキタゴサク。

事情聴取の最中に、「爆発を予測できる」「次45分後に爆発する」など言いだしました。
しかも実際に爆発が起こりました。

そうなると警察は調べないわけにはいきません。
警視庁から派遣された刑事らが
スズキタゴサクに翻弄されます。

現場の警察官たちも、爆弾処理や周辺にいる住民の避難などの対応に追われていました。


・ないと証明するのは難しい

いったん「ある」と思わせられたが最後、「ない」と証明できるまで恐怖につきまとわれる。

爆弾 p107

警視庁から派遣された清宮という刑事の一言。
スズキとやりとりしてました。

「爆弾がある」と言われたら
「ない」と証明できるまで恐怖はなくなりません。
しかし、「ある」と証明するより「ない」と証明する方がはるかに難しいと感じました。

「ない」と証明するためには、
莫大な「ない」ことの証明が
必要になることに気づきました。

「○○がある」と証明するのは簡単ですが、
「○○はない」と証明するためには、
たくさんの「ない」を証明しないといけません。

そう考えると「爆弾がある」とさえ言えば
簡単に、多くの人たちを恐怖に陥れられると気づきました。

・怒り、憎しみ、殺意をぶつけられたい人

交番勤務の倖田沙良は、
気心を知れていた同僚の矢吹が爆弾で大怪我した後、取り調べ中のスズキの元へ向かいました。
怒り、憎しみ、殺意をぶつけました。

その瞬間スズキは
「これこそが望んでいたものだ」と言いました。

「世の中には憎しみや殺意をぶつけられることを望んでる人間がいるものか」と驚かされました。
先日見た相棒21のこの回を思い出しました。

しばしSNSで炎上しているのを見かけます。
炎上してる書き込みを見ると罵詈雑言だらけ。
気分が悪くなって見るのをやめてしまいます。

私から見たら「こんなことを言ったら炎上するに決まってるのに、何でわざわざ発信するんだろうか。意味がわからない」と思ってました。

倖田沙良に憎しみをぶつけられたスズキが
喜んでる姿を見て、「炎上マーケティングをしてる人たちは、怒りや憎しみをぶつけられることを望んでいるのか」と思いました。

そして、そういう人たちに怒りや憎しみをぶつけるために、無駄なエネルギーを使わされていると見ることもできます。

こういう人たちには気をつけないと、
貴重なエネルギーを
吸い取られてしまうと感じました。 

・感想

ネット上やメディアで騒がしてる人の意図を
考えるきっかけになりました。

現代を反映してるのか、
SNS投稿で拡散するシーンが出てきます。
しかも、一定以上の拡散があると
爆弾が次の段階に行きます。

「誰からも相手にされず、無視していれば爆発は起こらないのか」と考えました。
しかし、人間の本能は危険なことをより察知するようにできているので、スルーするのは難しいと感じます。

昔読んだ『News Diet』という本に
こんな話がありました。


それは、テロリストについてです。
テロリストの目的は爆発したり、
人質を取ったりすることで、
人々の恐怖を煽っているのかと思ってました。

実際はもっと深刻で「爆発するかも」という不安を人々に植え付け、恐怖に陥れていることを指摘してました。
まさにこの話を思い出されました。

ネット上で炎上が起こってる時は、
あまり深入りせず、距離を置こうと思いました。

以上、ちえでした。
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