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あだ討ちと人生の教訓【木挽町のあだ討ち】

「これをまず読みたい!」
直木賞候補作が出た時点で気になってました。

以前、同じ著者の本が直木賞候補作になっていたため読んだことがあります。
歴史小説でしたが、とても読みやすかったです。

残念ながらこの時は受賞を逃しました。

今回、直木賞を受賞の知らせを聞いて嬉しかったです。

しかし、候補作が発表された時点で貸出予約をしましたが、なかなか来ませんでした。
3ヶ月も待ちました。
すでに他の候補作を全て読んでしまいました。


・心が暖まるあだ討ち

序盤からいきなり、仇討ちのニュースが載っていました。
菊之助という武士が父の仇討ちをしたという話です。

仇討ちされたのは作兵衛という男です。
ここを最初読んだ時点では、
作兵衛がどれだけの悪男と想像しました。

菊之助の縁者である武士が、仇討ちについて芝居町の人にインタビューをする話です。

木戸芸者の一八、殺陣を教えている与三郎、
女形をしている衣装係の芳澤ほたる、
小道具職人の久蔵とその妻のお与根さん、
戯作者の篠田金治の6人です。

インタビューを重ねるにつれて仇討ち事件の真相が明らかになっていきます。

菊之助の人柄もあるのでしょうか。
彼ら6人が菊之助の手助けをしました。
その様子を見て、暖かい気持ちになりました。

・どんな人間も最後は骨になる

第三幕で登場した芳澤ほたるのセリフです。

いずれ人は焼かれて骨になる。それを知っていることが私に力をくれていた。

木挽町のあだ討ち p109

ほたるは幼い頃、
火葬場で働いている老人の世話になりました。
その影響でしょう。

江戸時代は、身分制度がありました。
士農工商です。
更に武士の中でも、厳しい上下関係がありました。

それでもほたるは、「どんな身分の高い人でも、いずれ焼かれて骨になる」と実感していたのでしょう。

それもあり、ほたるを助けた先代から
「あなたは平らである」と言われていました。

これを現代に置き換えると
お金持ちだろうが、貧乏人だろうが、
いずれ人は焼かれて骨になるってことでしょうか。
そう思うと、人生に限りがあるのは平等かもしれません。

・面白がるのも簡単ではない

第五幕に出てきた金治の師匠である五瓶のセリフです。

面白いもんはいつか誰かが何処かから持ってきてくれると思ったら大間違いでっせ。面白がるには覚悟が要るんです。

木挽町のあだ討ち p187

旗本出身なので、比較的身分は高い方です。
嫁ぎ先も決まっていたため、安定した生活は保証されていました。
しかし金治は退屈で仕方がありませんでした。

結局、武士の身分を捨てて、
戯作者の五瓶に弟子入りしました。

退屈そうにしていた金治に言ったこのセリフが印象に残りました。

待っていたら誰かが面白いことを運んでくれるわけではありません。
結局自分から行動しないと面白いことに出会えないと実感しました。

・感想

ネタバレになるので詳しく触れませんが、
あだ討ちの真相に驚かされました。
しかも、縁者の武士からインタビューを受けたみんなが結託して、菊之助を助けることになりました。

その姿を見て、「見ず知らずの人にここまで親切にできるものか」と驚かされました。
全員、菊之助に好感を持っていました。

身分も出自も違う、
それぞれの人生を送ってきた人たちが
芝居町に行き着きました。

インタビューをした武士は、
自分の知ってる世界が
どれほど狭かったか思い知らされた様子でした。

読者の私も「こんな世界があるものか」と
勉強になりました。

著者の永井紗耶子さんは、
「読者に楽しんでもらうためには、自分が楽しんで書こう」と受賞時のインタビューで話していました。
こちらまで。楽しんで書いたのが伝わりました。

以上、ちえでした。
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