「情があり過ぎてもなさすぎても上手くいかない」2人の対照的な女性リーダーから学んだこと【女人入眼】永井紗耶子著
今はもう変わりましたが、
出版された当時は鎌倉幕府がテーマでした。
大河ドラマは見ていませんでしたが、
楽しみました。
「人間の性は今も昔も変わらないかも」
そう思わずにいられませんでした。
・都と鎌倉の違い
主人公周子は、京の都にいます。
丹後局に仕えている女房です。別名衛門。
都では名前で呼ばないらしいですが、
北条政子からは「周子」と呼ばれます。
それを、不快に感じる周子です。
他にも、公卿社会の都と
武士社会の鎌倉のしきたりの違いが表されます。
場所変われば、常識も変わると改めて感じました。
・愛されているからこそ不幸になった。
周子が大姫に対して感じたことです。
鎌倉に来た理由は、
源頼朝と北条政子の娘である大姫を
入内させることです。
丹後局の命令で行ったものの、
そもそも会話することすらままならない状態。
「鎌倉と都の結びつきを強くしたい」と
思惑がありましたが、うまく行きません。
あるとき大姫の妹である三幡に
入内の白羽の矢が立ちます。
「これで丸く収まるか」と思いきや
これに北条政子が「NO」を突きつけました。
「自分の一族から入内すれば、
目的は達成するのではないか」と思ったら、
更に複雑な事情がありました。
大姫は乳母も付けず自分の手で育てました。
大姫の弟頼家と、妹の三幡は別に乳母がいます。
乳母の一族の力が強くなるのを恐れたのもあり、
「大姫を入内以外認めない!」と
頑なに譲りません。
当の大姫は、かつての許嫁が死んでから
他の人と結婚を受け入れられない様子。
その気持ちを認めない母政子。
この様子を見て「毒親」と
称している人がいましたが、
私も同じ感想を持ちました。
大姫の弟と妹は、政子に関心を持たれていませんでしたが、却って自由だったのではないかと思ったくらいです。
愛されて、というより
操られての方が近いでしょうか。
母が付きっきりだった大姫は
不幸な結果になってしまいました。
・リーダーに必要なもの
「女性はリーダーになれない」と言う人がいるけど
政子を見てると「そんなことはないだろう」と
感じました。
鎌倉幕府を安定させたり、一族を守るために
必要だったかもしれません。
とてつもなく冷徹に感じました。
自分の考えに逆らう人間を
片っ端から粛清していきました。
周子もとばっちりを食らいました。
丹後局は「情はいらぬ」というのに対して、
政子は情の赴くままに動いています。
2人は対照的です。
現代において
上手く周りを巻き込めるリーダー像を考えると、
2人とも極端と感じます。
情を出さない方がいい場面もありますが、
情の赴くままに動くリーダーは
周りの人もついていけないと感じます。
まさに政子の周りの人は、
彼女の顔色を伺ってばかりでした。
「極端なのは上手く行かない」
2人を見て、私はこう結論を出しました。
・感想
思いの外面白かったです。
普段、歴史物はあまり読まないけど、
それでも不思議と読み進められました。
文学作品はあまり詳しくないので、
賞をとった作品を片っ端からチェックしてます。
やり方としてはアリだと思います。
前回の直木賞候補作になってましたが、納得です。
受賞予想をしてる新聞社が複数ありましたが、
こちらが賞をとると予想してた人がいました。
好みはあれど「読まなきゃよかった」と
後悔するほどのものに当たったことがありません。
現代なら、会社や組織内の権力闘争が
しっくりきます。
人間の性は昔も今も変わらないですね。
以上、ちえでした。
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