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社会に影を落とす数学教育【「%」が分からない大学生】

「それで大学生になれるの?」
タイトルを見て思わず出てき言葉です。

「%」はよく使われますよね。
「使った人の○%が満足した」と、
広告でも出てきます。

そもそも「%」の概念もわからない状態で
大学入試を乗り越えられたのにも驚きます。
いや、たとえ大学に入れたとしても授業についていくのが難しいのではないかと疑問。

よく使われるので、改めて考えることはありませんでした。
定義は「もとにする量を1とした時、比べられる量が0.01の時、その割合を1%とする」です。


・著者が問題視する暗記数学

ここでは「く・も・わ」「は・じ・き」が
事例として登場。

私が小学校の時、「は・じ・き」は出てきました。
「は」が速さ、「じ」が時間、「き」が距離。
円をかいていました。

中学、高校と学年を重ねるにつれて
使わなくなっていきました。

なぜなら、比例の計算のほうが使い勝手がいいからです。
どのくらい便利かと言うと、薬局で働いている時、薬の計算でよく使っていたくらいです。

最近では「く・も・わ」が出回っているそうです。
最初聞いた時「なにそれ?」と思いました。

簡単に説明すると、「く」は比べる量、「も」が元の量、「わ」が割合です。

この図を暗記して数字を入れれば、
求めたい数値が出てくるという方法です。

著者は大学の教員をしています。
「く・も・わ」を使う人ほど正答率が下がると指摘。
この公式を忘れてしまうと、でたらめな答えが出るとのことです。

定義を叩き込んだ上で、公式を暗記するのは悪いこととは思いません。
実際、私も学生時代の数学に限らず、
資格試験でも利用することがあります。

しかし、重要な前提条件があります。
それは、内容を理解した上覚えることです。
理解が欠けた状態で暗記をしても、意味がないでしょう。

・プロセスの大切さ

プロセスとは後からチェックが可能な言葉や文をと定義しています。 
数学ではどうやって答えを求めたか、プロセスが重視されますね。

このプロセスを軽視するとどんなことが起こるか。「結論だけを追い求めていくと本来最も客観的な「数字」を動かしたくなる」と著者は指摘しています。

国の統計といい、企業といい、
数値の改ざんがニュースになりますよね。

その方法は3つあります。
1、数字そのものの改ざん
(例)構造計算書偽造問題
元一級建築士が、地震などの安全性の計算を記した構造計算書を偽造した事件です。

2、数値の算出式の変更
(例)スキーのノルディック複合ルール変更。

3、算出方法を変えず、外部からの圧力など算出したい数値を動かす
(例)株式市場で、取引終了間際に株の買い注文を大量にする。

3つのどのパターンを見ても「プロセスはめちゃくちゃでも答えさえあえていればいい」が根っこにあると指摘。
どの例を見ても社会にとって有益ではありません。

「答えさえ合っていれば、後はどうだっていい」という考え方に危うさを感じました。

・放っておけない

著者の他の本でも、「国は数学を重要視している」ことを触れています。
長年数学教育に携わってきた著者は嬉しい反面、
「ただ大事と言うだけでは解決しないのでは?」と感じているようです。

特に深刻に考えているのは「数学嫌いな人が多いこと」です。
こちらの調査は小学生、中学生それぞれにアンケート。
小学生から中学生になるにつれて、嫌いな子どもが増えていることを示唆しています。

著者は全国の学校で講演を行っています。
「どうしたら興味を持ってもらえるだろうか」

本書に載っている問題を見ると、いかにして興味を持ってもらおうと腐心しているかが伝わりました。

余談ですが、この著者の高校数学の本を持っています。
本格的な内容ではありますが、例題を見ると「この数学の式ってこんな使い方ができるのか」と発見が多いです。感想はまた別の機会に。

・感想

「「%」の分からない大学生」と少々を刺激的なタイトルから、当事者の大学生を批判していると想像しました。
実際は当事者に対して「暗記数学教育の犠牲者」と捉えているようでした。

「とにかく覚えなさい」
それでは学ぶことが苦痛になっても仕方がありません。楽しいと思えないとできませんよね。

私は、子どもたちが「学ぶのは楽しい」と思ってほしいです。
そう考えると、暗記数学は弊害が大きいと感じます。

著者は「学年別ではなく、理解別指導を大切に」と主張していました。私も賛成です。

そもそも同じ年齢の子どもたちが、みんな同じ能力を持っているとは思えません。
教科によっては得意不得意があるし、全ての教科が自分の年齢相当の能力があるとは限りません。

特に数学は子どもによって習熟度の差が激しいと感じます。得意な子は2、3学年上の内容でも理解できるし、苦手な子はむしろ前の学年の内容から復習した方がいいこともあります。

先日長男の小学校選びのために、
特別支援学校の見学に行きました。

初等部を見学させていただきましたが、
小学1、2年生では、ひらがなや数学の絵本を
教科書として利用していました。
一般的な学校の教科書に比べて、平易な印象です。

「子供たちの習得度に合わせた授業をしている」と感じました。

そもそも障害の有無に関わらず、
30人以上の子供が一斉に同じ授業を聞いて
同じように理解できるとは考えられません。

能力の高い子は退屈をするし、
能力の低い子は授業についていけません。
教える先生だって大変なはず。

そもそも一斉に授業を行うやり方が
限界にきていると考えさせられました。

もし、理想の教育制度を提言するなら、こうなります。

・個人の習熟度に合わせて学べる仕組みを。
・丸暗記ではなく、理解を促すカリキュラムを。
・個人の特性に合わせた勉強法を尊重する。
・必要に応じて教員を増員する。
・テクノロジーを活用する。

こんなところでしょうか。

以上、ちえでした。
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