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フランツ・ファノン 黒い皮膚・白い仮面

黒い皮膚・白い仮面の 小野正嗣さん(作家、仏語文学研究者)著、監修の解説本を読みました。100分で名著、NHKテキストです。黒人である筆者による、黒人差別についての本を読んだので感想!

1 私がこの本を読んだ動機

この本は黒人差別について、自身も黒人である若き頃のフランツファノンが書いた自伝的エッセイです。黒人差別とは何か、まるっと知っている!と答えられる日本人は少ないのではないでしょうか。少しでも何か感じ、知るきっかけになればと思い今回手に取りました。私の周りには黒人の方はおらず、接点が全くないことからの興味でしたが、読んでいくにつれ差別的感情について人間だれしも身に覚えのある、理解できる内容で最後まで読むことができました。私は興味が途切れると最後まで読めません( ´∀` )

2 興味深かった「内面化される差別意識」

人種差別とは、それは植民地支配、奴隷制、歴史的背景から生じる社会構造、白人から向けられるまなざしから生じると言います。人種、肌の色が違うこと自体に優劣や違いはそもそも存在しません。

差別的な目を向けられた、特に思春期の子供たちの内面はどう変化していくのか。それは子供を経てきた大人であれば想像に難くないでしょう。フランツファノンは沢山の文芸作品を引用しながら分析、参照していきます。

子供たちの中には自身の乳白化をのぞみ、白人男性と結婚を夢見る方もいるそうです。また、ファノン自身も白人女性と結婚しており、それはつまり白人である彼女から白人と変わらない精神である事を認められる事(=自分はほぼ白人である!)が彼の望みである事がうかがえます。この心の仕組みこそが上記植民地支配などの歴史的背景から来るもの。特権階級を望むのなぜでしょうか。

白人からの差別的なまなざしを受け、白人に憎しみを抱くのですが、幼いころからの「フランス人たれ」と教わった教育制度の呪いと、支配階層である白人に対する憧れから逃れられないと言います。だから必死にフランス語を誰よりも流ちょうに話せるように意識していたそうです。その点がとても興味深かった。

すさまじい劣等コンプレックスが根を生やして彼を形成している事に、自身が一番気づかずにはいられなかったようです。

3 「疎外からの解放を求めて」

フランツ・ファノンは若くして亡くなってしまいますが、アルジェリア戦争のスポークスマン的存在として活躍したそうです。彼はニグロ(=黒人における差別的呼称)を引き受け、自身の存在を見せつけ、肯定します。

社会的に虐げられ、疎外された自分は非合理的なものとし、光と影をより濃く表現していく。またそう考えてしまう黒人に依存性があり問題があるとする意見に反発する。精神医学の知見を支えに、論文を発表していく。

疎外された感情や経験からどう自分に、社会に立ち向かっていくかが非常に見どころに感じました。

また読む過程で、差別に苦しむ声が紙面一面に響きわたり、目をそむけたくなる本でしたが、黒人は低能のように言われるゆえんも、フランス文化への信望、従属の刷り込み、植民地支配による自国の先祖の言語を下に見てしまう、方言以下に感じてしまう構造がある為だと知ることができました。

4 まとめ

タイトル、黒い皮膚 白い仮面とは、黒人たちが自ら白い仮面をつけていく現象のことであり、黒人差別による事件や惨状の方がマスコミにニュースとして取り上げられるように感じますが、社会的構造や差別的なまなざしによる内面化される差別意識、という心理学的な現象がとても興味深かった。差別問題というのは周りも自分自身も心の構造を知り、白い仮面をつける事を不気味と感じると同時に叫びながら呪いながら、作品に昇華させつつ肯定する。自身で解決させない。人間の可能性に託す。革命とは進歩とは。そんなことを考えされられる本でした。



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