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サンタクロースからの伝言


サンタクロースからの伝言(2004/12/24アップ)


「サンタクロースは本当はいなくて、お父さんとお母さんがプレゼントを買ってるって本当? 」
恐れていた質問が とうとう次男の口から発せられました。彼にとって人生で九回目のクリスマスを目前に控えた、冬のはじまりの日曜日の夕方のことでした。
でも、ここでひるんではいけません。


「へえ、どういうこと? ママにちゃんと教えて」
余裕の笑みを浮かべながら、彼の話しを聞きました。
仲良しのお友達からそう教えられたと目に怒りさえ浮かべています。
「僕は…本当はいると思うんだけど…」
彼の言葉で私の対応も決まります。


「そうね。全ての子供がプレゼントをもらえるとは限らないから、親が代わりにプレゼントをあげている人もいるでしょうね」
彼の目に少しだけ光が戻ります。
「ママ、いつも言っているよね。サンタさんからのクリスマスプレゼントは、いい子にしていないと貰えないんだって」
「うん」
「つまり、いい子にしていないと、どうなると思う? 」
「あっ」
何やら思うところがあるようです。
「全ての子どもがもらえるわけじゃないんだよ」
「うん。そうだよね」
「もし、いい子じゃなくてサンタさんがプレゼントをもらえない子がいたとしたら。その子のお父さんとお母さんがサンタさんの代わりに、こっそり枕元にプレゼントを置いちゃうことがあるかもしれないって、ママは思うな」
「そうだよね。そういうお家もあるよね」
「うん。だからさ、あなたはプレゼントをもらえるうちはちゃんともらってさ、もらえない子のことは…、そっとしておいてあげなよ」
「わかった」
天真爛漫な笑顔に、ほんのちょっとだけ心が痛む気もしますが。でもきっと、いつか本当のことを知っても、恨まれないんじゃないかなって、そう自分に言い聞かせました。


私がサンタクロースの秘密を知ったのは小学一年生の冬でした。
二つ年上で近所のリーダー格だった隣の家の女の子が、
「サンタクロースがいるなんて嘘で、本当はお父さんがプレゼントを置いているの、知らないの? 」と言い出したのです。
その時、この子は時々私に「10円もってこい、じゃないと仲間外れにするぞ」なんて言ってくる悪い子だから、きっとサンタさんにプレゼントを貰えていないんだ。だからお父さんがサンタの代わりをしているのだと、本気でそう思ったのです。


だから彼女の話を聞いても、彼女を可哀相とは思えど、サンタの存在を疑う気など起きませんでした。
帰宅して母にその話をしました。
「○○チャンがね、サンタさんはいなくて、あれはお父さんがくれてるって言うんだよ」
私はそのあとこう続けるつもりでした。
〇〇ちゃんは悪い子だから、サンタさんプレゼントくれないんだね、と。
ところが、そう言いかけたとき母が怒鳴ったのです。
「○○チャンにサンタがいないことをばらされるなんて! 」
そう怒っている母の顔を見上げながら、その迫力に驚いたせいなのか涙が溢れてきました。
ああ、なんだ、サンタさんは本当はいないんだ。
その年、もらえるはずだったサンタさんからのプレゼントはなくて、他の友達はずっとサンタさんからプレゼントをもらっている中、小学校一年生でクリスマスプレゼントをもらえなくなってしまいました。


クリスマスの翌朝、何もない枕元を見ながら、静かに泣きました。
欲しい物があったのに。リカちゃんのお家が欲しかったのに。サンタさんの馬鹿。〇〇ちゃんの馬鹿。ママの大馬鹿野郎。うわーん。


そんなトラウマがあったので、例えばれていると知っていても、私は六年生まではサンタさんのふりをし続けると心に決めていたのです。


長男が初めてサンタにプレゼントをお願いしたのは、4歳のときでした。
いい子にしていたけど本当に貰えるのか何日も不安で、イブの夜は彼はなかなか眠れませんでした。
翌朝、欲しかったレゴのブロックと、サンタさんからの直筆の手紙を見つけたときの彼の顔を、今でもはっきり覚えています。子供の目ってこんなにも輝くんだって心底驚きましたから。
あの朝の彼にとってサンタクロースは100%存在していました。事実など関係なく。

大人になれば自然に知ってしまう事です。
もしかしたらもう気付いているかもしれません。
いつまでも信じていると、友達に馬鹿にされてしまうかもしれません。


だけど、サンタクロースは居るんだよって言い続けたいのです。
私自身が、サンタクロースは本当に居ると何処かで信じていたいから。

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