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司法試験メソッド①作業工程把握対策法

 漫然と多数の起案をこなすことで合格する人もいれば、起案しっぱなしでは合格できない人もいる。後者に属する人は、以下の対策を試みてもらいたい。

●論文起案の作業工程を細分化する

●苦手な工程を特定する

●苦手な工程に特化した対策を講ずる


● 論文起案の作業工程を細分化する

 論文を起案する際に自分がどのような作業を行っているのか、作業工程を細分化することから始める。

 例えば刑法であれば多くの場合、①問題文本文における登場人物の言動の確認②論点の抽出(問題となる罪名、問題となる論点の確定)③あてはめ部分の検討と結論の確定を確定する④検討結果を答案構成メモにする⑤解答用紙への記載、といった作業工程になるだろう。

 漫然と、「○○法が苦手」だと把握することには意味がない。対策の取りようがないからである。点数が取れないのは、「○○法が苦手」だからではない。「○○法の答案を起案する際の作業工程のうちどこかの部分に不具合がある」ためである。不具合のある部分を特定するために、まずは自分が起案する際の作業がどのような部分に分けられるかを把握する。

● 苦手な工程の特定

 実際に起案をしてみて、時間がかかっている部分が、苦手な工程である。

 例えば自分は、刑法では、②論点の抽出の作業に時間がかかり、結果、答案構成メモ完成までの時間が45~50分ほどかかってしまっていた。答案構成メモの作成よりは、問題となる罪名の確定、問題となる論点の確定の作業に時間がかかっていたのである。

 どの部分に時間がかかっているかは、答案の書面に現れないため、自主ゼミや答練では指摘してもらえない。そのため、作業工程ごとに時間を図りながら起案をし、どの作業工程に時間がかかっているのかを特定する必要がある。


●苦手な工程に特化した対策を講ずる

 苦手な工程を特定したら、その工程に特化した対策を講ずることになる。

 例えば、刑法における論点抽出が苦手だった自分は、刑法の事例系の問題集を用い、「問題文本文を読んで論点を抽出する」だけの訓練を行った。答案構成もしなければ、回答用紙に答案を記載することもしなかった。とにかく、問題文本文を手掛かりに、問題となる罪名、問題となる論点を確定するだけに特化した練習をした。

 ③あてはめ部分の検討と結論の確定の工程が苦手なのであれば、問題文本文を読み、問題文の論点抽出の部分までを読み問題となる罪名と問題となる論点を確定し規範部分までをカンニングした後、当該規範についての当てはめだけを練習する。具体的には、あてはめで引用すべき事情をリストアップし、逐一評価を考え、結論を確定すする、ということだけを練習する。

 練習する過程で、なぜその工程が苦手なのかと考えるとよい。

「知識不足」という安直な結論で済ませてよい場合は、あまり多くはないだろう。自分の場合は、③論点抽出が苦手である原因は、ある罪名と論点が問題となる場合に典型的な登場人物の言動を把握していなかったことにあった。それだから、例えば「言動:スリが財布に手を伸ばした→窃盗:実行行為への着手」というように、典型的な言動と問題となる罪名・論点をリストアップした。

 あてはめが苦手なのであれば、どのような言動を事情として拾うべきかの相場観が自分の中に育っていないのかもしれない。そのような場合は、優秀答案がどのような事情を拾っているかをリストアップし、類型化してストックすることで、相場観を学ぶことができる。


 このような、作業工程の細分化→苦手な工程の特定→特化した対策の実行、という一連のプロセスを実行すれば、当然、起案作成における「苦手」が解消され、結果として得点の取れる答案を書けるようになる。いわれてみると、ごく当たり前のことだと思う。しかし、このような当たり前のプロセスを実行している人は、そう多くない。当たり前のことを当たり前に行うことは、そう簡単なことではない。

 漫然と「○○法が苦手なんですよ」という自己認識を形成することは、自己分析として不十分である。「○○法の答案作成における○○の作業工程が苦手なんですよ」というところまで分析しなければならない。そして、「なので○○という対策を採っているんですよ」といえるようになれば、「その結果○○の作業工程の苦手を克服して○○法で点数を取れるようになりましたよ」ということになり、秋には「苦手だった○○法はA判定で合格しましたよしたよ」ということになる。