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読書メモ:文系のためのめっちゃやさしい人工知能

基本情報

『文系のためのめっちゃやさしい人工知能』
監修 東京大学教授 松原仁
2022年8月25日発行

AIに関して、松原先生と理系アレルギーの文系サラリーマン27歳が会話する形式で説明している本書。私自身、文系出身で、理系には疎く、最近ChatGPTや将棋の指し手の評価等様々な分野で活用が始まっており、これから本格的に利用が進んでいくのかなというぐらいの認識だった。サブタイトルが「はじめて学ぶ人でも、どんどん楽しく読める!」となっており、本当に楽しめるレベルになっている。
2022年8月発行のため、2年近く前で技術が進歩している可能性はあるが、入門書としてはちょうどよいレベルと思われる。

構成

1時間目 これがAIだ!
 STEP1 AIって何?
2時間目 AIの革新的技術、ディープラーニング
 STEP1 ディープラーニングって何?
 STEP2 AIがみずから賢くなるしくみ
3時間目 人間社会を一新するAI
 STEP1 交通に革命をおこす自動運転AI
 STEP2 会話するAI
 STEP3 人を健康にする医療AI
 STEP4 社会に進出するいろいろなAI
4時間目 AIの未来
  STEP1 AIの弱点と問題点
  STEP2 何でもできる夢のAI

感想

全体的には、AIに関して想像していた通りのこともあれば、全然知らなかったこともあり、とても読みやすく理解も進んだ。
例えば、「将棋」でのAIの活用は進んでおり、NHKの番組で将棋の特集をしていたことがあり、番組内でも藤井八冠が積極的にAIを使い、勉強していることを取り上げていた。将棋のような「完全情報」ゲーム(お互いもっている駒がわかっているような情報がすべて把握できている状態)においては、AIは強さを発揮する。そのため、囲碁やチェスも同じように得意である。

自動車の自動運転に関しては、一部自治体で決まったルートを走るバスの自動運転が試行されており、一定の条件下であれば人間が全く運転しなくてもAIで走行は可能である。
但し、完全自動運転(AIが知らない道を人間が全く操作することなく走行する状態)もデータがさえ集まれば、できるかと言えばそうではない。「AI」と言ってもコンピュータであることに変わりはなく、あくまでも「数字」で認識しているため、得意分野と現時点ではできない分野がある。「画像認識」に関しては、得意分野であるため、自動車にカメラを2台つけてルート情報を入力すれば、AIが自動運転を行うことは基本的に可能であるものの一方で、夜間や雨だとそもそも画像認識が難しくなる、また、街中の看板等運転には不要な情報の取捨選択ができないなどで完全自動運転実現のハードルは相当高い。(事故を起こした場合の法的責任の問題もあり、課題は多い)

また、その他気になった課題として以下のようなものもある。

①AIがなぜそう判断したのか人間にはわからない
②悪意を持った人間がAIに悪意のあるデータを投入する攻撃から守るための 
 技術が現状ない。さらにAIが攻撃された場合、外部から攻撃されたことを
 確認することが現状できない
③仮にAIが暴走した場合に止められるのは人間ではなくAI
 (AIが暴走するかもしれないという仮説がある)

①~③を考えると、それこそターミネーターシリーズのスカイネットや「審判の日」を想像して怖くなってしまった。

怖いことばかり考えてもAIの開発が止まることはないし、むしろリスクへの対策を考えながら上手に活用していくのが社会な大きな流れだろう。芥川賞を受賞した九段理江さんが執筆に「生成AI」を使用しており話題になったが、確実に便利な部分もあり、「上手い使い方」を考え始めるにはちょうどよい一冊だった。


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