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北斎が飛行機からの絵を描いたなら…

北斎が飛行機に乗ったなら、
どんな風に描いただろうか?


いつかの夏のこと。

地上は大型台風の影響で新幹線はストップし、交通網は大混乱となっていた。

空港に向かう車内から外を見たら羽田ではJALとANAの第1と第2ターミナルの間で天気が変わった。
土砂降りだった雨が目の前でくっきりと晴れたのだ。そんな天気の変化の瞬間を目にした事が人生で二回はあった様に思う。

土砂降りのため遅延していた飛行機は羽田空港を離陸した。

私は、この離陸の瞬間は、いつも特別だと思う。
加速度をつけながら上空へ向かってグングンと上昇していく時には背中に斜めに地球からの引力を感じる様な気がする。

そして、しばらく続く空の旅。
モクモクとした雲を突き抜けて機体は上空へと進む。斜めに機体を上向けながら、私たちをのせて空の旅は続いた。「右下方向をご覧ください。富士が観えます」のアナウンスもない。

うねる様な分厚い龍の胴体を現した雲の下には、おそらく大混乱の洪水の街々があるのだろうに飛行機が飛ぶ雲の上は不思議なくらい晴れている。

夕暮れの雲の上、鮮やかに空を染め上げる太陽の光。

もう、鮮明には思い出す事の出来ない映像。あの日の感動を思い起こして文章化したものだ。

ふっと、あの日の事を思い出して考えた。

葛飾北斎がこの光景を観たら、どの様に描いただろう?

彼がこの上空から描いたら心の目で加えた雲の間に見える富士の絵を描いただろうか?
うねる龍の様な雲の下でも悠然とした富士の姿を。
いつもなら止まっているみたいに見える雲も、その日だけは流体のようにうねっていると感じた。

北斎に飛行機に乗って欲しかった…
「空から観た富嶽三十六景」も観たかった。


モネが観たら、何を描いたのだろう?

太陽の光を受け刻々と変わる雲の美しさを「睡蓮の池」の如くに映し取っただろうか?

彼にも、飛行機からの光景を観て欲しかった。

そして、未来の画家たちに、もっと美しいだろう宇宙から観た青い地球を描いてほしい。


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