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\公務員は副業できるのか⑩/

今回は、これまでの議論を総括し、「公務員は副業できるのか」に対する筆者なりの答えを提示したいと思います。

本稿では、はじめに国家公務員の兼業制度を確認しました。
国家公務員法や人事院規則等を確認し、国家公務員の兼業制度については、次のように整理することができました。

役 員×営利企業=一切禁止
自 営×営利企業=農業、不動産賃貸、太陽光電気販売、家業なら認められる余地あり
従業員×営利企業=兼業先が営利企業なので許可されない
役 員×非営利団体=経営上の責任者にあたるので許可されない
自 営×非営利団体=経営上の責任者にあたるので許可されない
従業員×非営利団体=活動実績の確認等ができれば認められる余地あり

次に、地方公務員の兼業について、地方公務員法では次のとおり定められていることが分かりました。

役員等×営利企業=許可が必要
自 営×営利企業=許可が必要
報酬をもらう活動=許可が必要

こう見ると、地方公務員の方が許可を受けられる兼業の範囲が広く思えますが、実際には多くの地方公共団体で国と同等の基準が設けられています。

そのため、実質的には国家公務員と同様に、許可の範囲が限定されているケースが多いということです。例えば、法的には禁止されていない「営利企業での従事」が認められた事例は、今回の調べでは見当たりませんでした。

一方、神戸市や生駒市のように、地域貢献活動という側面から、基準を明確化することで、職員の兼業を促進している自治体も増えているようです。なお、ここでいう「基準の明確化」とは、国と比較して要件を緩和していることを指すものではありません。

以上を踏まえ、「公務員は副業できるのか」という問いに対する答えを整理しましょう。

整理に当たり、副業を行う目的を分類化します。

独立行政法人労働政策研究・研修機構が2018年に行った「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査」によると、副業・兼業を望む理由(3つまでの複数回答)は、「収入を増やしたいから」が 85.1%でもっとも多く、次いで、「自分が活躍できる場を広げたいから」(53.5%)、「様々な分野における人脈を構築したいから」(41.7%)、「組織外の知識や技術を積極的に取り込むため(オープン・イノベーションを重視)」(36.6%)となっています。

要約すると、「①収入増加」「②自己実現」「③スキル向上」の3つに分けることができます。
ここでいう「自己実現」とは、社会に貢献していることを実感できる状態を指しています。

本稿のまとめとして、それぞれの目的を果たす「副業」が可能か、という問いに対する筆者なりの答えを示します。

「①公務員は、副業で収入増加できるか」に対する答えは、「大きく増やすのは難しい」となります。
なぜなら、副業先として認められるのは、資力に乏しいことが多い非営利団体であり、本業を超える報酬単価は期待できないためです。
また、国基準によれば、月30時間までしか勤務できません。
おそらく本業で残業している方が収入は多くなると思われます。

「②公務員は、副業で自己実現できるか」に対する答えは、「内容によっては可能」となります。
「内容によって」と条件を付けたのは、本人がやりたいことと関連した副業先が見つかるかが不確実であるためです。
つまり、特定の社会問題を解決することで自己実現したい場合でも、その分野で活躍できる場が必ずしもあるとは限らないという意味です。
なお、無償で働くボランティアであれば、できることは多いかもしれません。

「③公務員は、副業でスキル向上できるか」に対する答えも、「内容によっては可能」となります。
①②とも関連しますが、「内容によって」としたのは、副業先として認められるのは非営利団体に限られており、本人が伸ばしたいスキルにつながる仕事が見つかる可能性は低いためです。
例えば単純作業など、あまりスキル向上が期待できない仕事であれば、すぐに見つかるかもしれません。

ちなみにですが、当法人が推奨しているリタワークとは、「②自己実現(したいこと)」と「③スキル向上(できること)」をつなぐ、というコンセプトで生まれた新しい働き方です。
本稿を通じて、リタワークに関心を持っていただければ幸いです。

全10回に渡る「公務員は副業できるのか」についての解説は、以上になります。
いかがでしたでしょうか。

もしも皆さんが、すでにどこかの団体でボランティアを行っている場合、そこでの兼業の可否を人事担当に確認してみてください。
無報酬の時よりも責任やプレッシャーが増すかもしれませんが、少し違った視点で取り組めるかもしれません。

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