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私の感覚を理解するのは私だけ #23

太宰治『走れメロス』についてだけ #16


みなさん四季の中でどれが好きだろうか。
春夏秋冬、それぞれの季節の発見と楽しみを味わえる日本にいることは,
とても嬉しい。

ちなみに私は冬が苦手である。
冬が好きな方には申し訳ないが、素直に言うと大嫌いなのである。

寒いのがとにかくダメで、たぶん毎年誰よりも早くから保温効果のある長袖のシャツを着始めていると思う。
そんなんで冬の本番どうするの?!とこれも毎年聞かれるが、大丈夫、これまでの人生、冬本番はなんとか乗り切っている。

冬は寒いと感じたら負けなのだ。

だから、寒さより数歩先を常に歩いている必要がある。
そうなると、早め早めの防備が必要になるのは当たり前だ。

私の住んでいる場所は海に近く、冬は特に海からの風が強い。
雪こそ降らないが、冷たい風が冬のあいだ中ずっと吹いているので、ちょとでも気を抜くと足元、袖、首元から冷たい風がボボーッと入り込んでくる。

寒さを感じないためならどんな格好でもする。
冬だけは人目を全く気にしなくなる。ただし、地元の駅と家の間だけ。

冬の私は自分でも笑えるほどファッションセンスが悪くなる。

一方、ようやく走りだしたメロス。
季節は初夏だ。

メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。

太宰治『走れメロス』

”初夏、満天の星である””

なんとも美しい一文…

真っ暗な夜道、頭上には数えきれないほどの星々が輝いている。
初夏という事は、今だと5月初旬から6月初旬らしいがメロスのいる場所はどんな気候だろう。

星の下をメロスが全速力で村へ帰る。
緊迫した気持ちを持ちながらも、読みながら頭の中で姿と景色を浮かべるとなんとも素敵な絵になる場面である。

美しいと言いたい。

語彙力が足りなくてもどかしく苛立たせてしまうかもしれないが、美しいと感じるものには様々な表現より、私には”美しい”と呟くのが一番なのである。

美しいという言葉が好きだ。

だから美しいと感じさせてくれる物事が好きだ。
美しくないと感じさせられるものは大嫌いだ(冬の大嫌いはまた別)。

何が美しいのかは人によって違うので提言できないが、今回の一文は私にとってまさに…なのだ。

さあ、メロスはもう死が決まっている。
セリヌンティウスは生き、メロスは死ぬのだ。

今、頭の中はきっと妹の事でいっぱいだろう。
しかし体は時間と共に死へと向かっている。

全速力で走るメロスはどんな感情なのだろうか。
走ることにいっぱいで感情を感じる隙なんてないのかもしれない。

メロス、我々は君の姿をずっと見ている。

星空美しい空、村に向かって走るんだ。

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