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母の味・フレンチトースト


私がうんと小さい子供だったころ。
うちのオカンがつくる朝ごはんといえば、1/2のバタートーストと市販の4個セットになっているヨーグルトを1つ、だった。
共働きで、毎朝いつも家はあわただしかった。営業仕事で朝から機嫌のよろしくない父。冷凍食品をかたっぱしから弁当に詰め込む母。なかなか起きてこずバスの時間ギリギリに起きる私。
偏食ぎみだった幼少期の私はいつもバタートーストの真ん中だけを食べ、耳を残して学校に行った。3時間目にはお腹を空かしていて、それが当たり前だと思っていた。

だがそれも平日だけの話。
うちのオカンにはとっておきの朝ごはんレシピがある。
フレンチトーストである。

日曜の朝、起きると大抵それは大皿に山盛りに乗って机の上にある。小皿とフォークが人数分用意されていて、母は「お父さんの分を残しておいてね」と言う。私は大喜びでねぐせもそのまま食卓につく。

オカン曰く、そのレシピはオカンのお兄さんのお嫁さんに教えてもらったそうだ。私の叔父はとっくに離婚をしてしまい、彼女との所縁はフレンチトーストのレシピのみとなる。

パン屋のフレンチトーストといえば、ハード系のパンにカリっとやけたカラメル部分がつやつやと光り、それはそれで魅力的なのだ。
しかし、うちの母のフレンチトーストは違う。
極限までふにゃふにゃしているのである。

〈レシピ〉
必要なもの:
食パン・・・5枚切りか6枚切り、すきなだけ(1人で食べるなら2枚)
牛乳
砂糖
卵・・・2個
バター

作り方:
①食パンを縦と横に一度ずつ切り、正方形に四等分する
②ボウルに牛乳(パンがひたひたになり、かつパンに吸収されてすっかり無くなるかどうかギリギリくらいの量)・卵2個の黄身(そのうち1個は若干白身も入れる)・砂糖(ペロッと舐めて甘いなって思うくらい)を入れ、混ぜる
③②に切った食パンを浸し、ひったひたにする
 パンとしての矜持を失わせるくらい、時間をおいてひたひたにする
 (必要ならパンを裏返し、なかまで牛乳を染みこませる)
④フライパンに弱火をかけ、バターをひとかけしく
⑤ひったひたのままパンの切れ端たちを並べ、ふたをする(蒸し焼きメイン!)
⑥焼き目が付き、膨らみすぎていない程度になったら裏返し、再度ふたをして焼く
⑦両面じゅうぶんに焼けたら出来上がり❕

コツとしては、フライパンにバターを引く際に少し多めに入れると、ふっにゃふにゃのフレンチトーストでもかろうじて外側はかりっとして、かつ塩味があるので美味しい。
砂糖が足りなかった場合は、あとから蜂蜜なりメープルシロップなりをかけるとなんとかなる。

これが我が家秘伝のレシピ、母の味・フレンチトーストだ。

時は流れ、社会人になり一人暮らしをしている今も、私はときどき自分でフレンチトーストを作って食べる。

作り始めてから蓋を買っていないことに気がついたフラッシュウーマンのブリコラージュ

好きなだけ作り、好きなだけ食べることが出来る自在さと、残りの枚数を数えながら食べる不自由さを味わえない寂しさを噛みしめながら。


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