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おまわりさん

水曜日。
バニラの甘ったるい香りで喉がかすれた。
一度も開けられたことのない窓には蛾の死骸が張り付いている。

天井から蜘蛛の巣みたいな天蓋が吊るしてあって、雑巾みたいに薄っぺらな絨毯がたばこの灰で汚れている。

そこにはベッドじゃなくて真っ赤な椅子がひとつ。

あなたは私を誘導する。

服も着ないではちみつを舐めるの。あなたと一緒に。
椅子と同じ色の赤いカーテンが風もないのに揺れてる。この世ではないのだろう。

私の胸にはぬめった釘が口から心臓に刺さっていて、あなたは私の口から腕を入れるとその釘をぐりぐりねじ込むの。私はあなたの目をうっとりして見て涙が出そうになる。

だけどね、私今日は曜日を間違えちゃった。

木曜日。
私はあなたのボロいアパートのドアを開けた。

あなたは小さな女の子にキスしてた。
蜂蜜だらけのからだでやさしくあの子のからだを抱きしめた。

転げた真っ赤なランドセルにはカビが生えてる。

私は目をギンギンギラギラに剥いて、そのせいですっかり乾いてしまった。

私はそこを後にすると110。

あそこは虫取り網の中みたい。
じきにおまわりさんが来るわ。

私は強烈な万能感に包まれてふふっと笑った。
ずっとあなたに勝ちたいと思ってた。

おまわりさん、よろしくね。

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