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小説「北の街に春風が吹く~ある町の鉄道存廃の話~」第5話-③

・第五話 存続協議会 その二


「私からも参加を認めていただくようにお願いしたい」

 横田が大西の参加を認めてもらえるように声を続ける。しかし、北海道鉄道側からは承認の答えはなかった。会議の進行は止まり、誰もがお互いに顔を見合わせてどのように進行を続ければよいのかを考えていた。

 会議の主催者である北海道鉄道の役員が担当者を呼び、なにやら小声で指示を行う。どうやら出席者で決を採るように指示が出たようだ。

 その時、会議室の隅に設置された電話が鳴った。会議に参加している職員が応答に出る。

「はい。大会議室ですけど……、あ、はい。そうです。はい、いらっしゃいますが……」

 職員は小声で話していたが、いったん電話を保留して横田の傍らで耳打ちするように伝言を伝えた。

「何? 道知事が?」


                  *


「えっ、なに? 鈴井知事から電話してきたの?」

「そうなんだよ。昔だったら会議に参加するには、みんなが一同に集まらないといけなかったんだけど、ほら、少し前に感染症の問題でみんなが集まれない時があっただろう? あの時は大変だったけど、その時にリモート会議だけはみんなに浸透して、離れた場所にいても会議に容易に参加することが出来るようになっていたんだ」

「へぇ、それで知事の方から電話があったんだ」

「ああ、それと鈴井知事は以前に手がけた鉄道の廃線について、何か後悔していたようにも思えたけどね。だから瑠萌線の廃止に関心があったんだろうと思ったよ」


つづく


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