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「魚の骨で殺された男」  ブラックコメディ小説

ある日、東京のとあるマンションで、魚谷鯛太郎という男が死んでいるのが発見された。彼は自宅のソファで横になっており、口から血を流していた。警察が駆けつけると、彼の喉には魚の骨が刺さっていたことがわかった。現場には彼の妻である魚谷鮎子と、彼の友人である海老名海老夫がいた。

警察は二人に事情を聞いた。鮎子は涙ながらにこう言った。「夫は今日、仕事から帰ってきて、私が作った鯛の尾頭付きを食べていました。私は台所で皿を洗っていたんです。すると、夫が突然苦しそうに咳き込み始めたんです。私は慌ててソファに駆け寄りましたが、もう遅かったんです。夫は目を見開いて息絶えていました。私はパニックになって、すぐに海老夫さんに電話しました。海老夫さんは夫の親友で、近くに住んでいます。海老夫さんが来てくれて、警察に通報してくれました」

警察は次に海老夫に話を聞いた。海老夫はこう言った。「私は今日、仕事を終えて家に帰ろうとしていました。すると、鮎子さんから電話がかかってきました。鮎子さんは泣きながら、鯛太郎さんが死んだと言いました。私は驚いて、すぐに魚谷さんの家に向かいました。到着すると、鮎子さんは泣き崩れており、鯛太郎さんはソファで血まみれになっていました。私は悲しみに打ちひしがれました。鯛太郎さんは私の親友でしたから。私はすぐに警察に電話しました」

警察は二人の話を聞いて、疑問に思った。なぜなら、現場にはナイフフォークなどの食器類が一切なかったからだ。警察は二人に尋ねた。「あなた方はどうやって魚を食べたのですか?」

二人は顔を見合わせて、答えた。「手で食べました」

警察は驚いた。「手で食べました?それはどういうことですか?」

二人はこう説明した。「私たちは手食文化の信者なんです。手食文化というのは、食器を使わずに手で食べることで、食べ物と自然とのつながりを感じることができるという考え方なんです 。私たちはこの文化に共感して、常に手で食べるようにしています」

警察は呆れた。「そんなことをしているから、こんなことになったんですよ。あなた方は無責任です」

二人は反論した。「そんなことありません。手食文化は素晴らしい文化なんです。魚の骨が刺さったのは、ただの不運な事故なんです」

警察は疑った。「本当にそうですか?それとも、あなた方は何か隠しているのではありませんか?」

二人は慌てた。「隠していることなんてありません。私たちは夫婦仲も良く、友人関係も良かったんです。鯛太郎さんの死は本当に悲しい出来事なんです」

警察は二人を見つめて、言った。「それでは、あなた方に一つ質問をします。あなた方は魚の骨をどうやって処理していたのですか?」

二人は答えた。「魚の骨は、食べ終わった後にゴミ箱に捨てていました」

警察はゴミ箱を調べた。すると、驚くべきことがわかった。ゴミ箱の中には、一本も魚の骨がなかったのだ。

警察は二人に言った。「これはどういうことですか?あなた方は嘘をついているのではありませんか?」

二人は動揺した。「嘘をついているなんてありません。私たちは本当にゴミ箱に捨てていました。どうしてないのでしょうか?」

警察は推理した。「私には分かりました。あなた方は魚の骨を捨てていなかったんですね。あなた方は魚の骨を食べていたんですね」

二人は驚いた。「食べていた?そんなことありません。私たちはそんなことをする人間ではありません」

警察は証拠を示した。「では、これは何でしょうか?」 警察が示したのは、海老夫の胃袋だった。警察は海老夫を逮捕する前に、彼の胃袋を切り開いて中身を調べていたのだ。その中には、無数の魚の骨が詰まっていた。

海老夫は白状した。「私は魚の骨が大好きなんです。手食文化に入ってから、ますます魚の骨に惹かれるようになりました。でも、鮎子さんや鯛太郎さんには内緒にしていました。彼らに知られたら、変だと思われると思ったからです。だから、私はこっそりと魚の骨を食べていました。ゴミ箱から拾ってきて、口に入れて噛み砕いて飲み込んでいました。それが私の楽しみでした」

警察は続けて聞いた。「では、あなたは鯛太郎さんを殺したのですか?」

海老夫は否定した。「殺したなんてありません。私は彼を殺す理由がありません。彼は私の親友でしたから」

警察は疑問に思った。「では、どうして彼の喉に魚の骨が刺さっていたのですか?」

海老夫は説明した。「それは偶然なんです。今日、私は仕事を終えて家に帰ろうとしていました。

すると、鮎子さんから電話がかかってきました。鮎子さんは泣きながら、鯛太郎さんが死んだと言いました。私は驚いて、すぐに魚谷さんの家に向かいました。到着すると、鮎子さんは泣き崩れており、鯛太郎さんはソファで血まみれになっていました。私は悲しみに打ちひしがれました。鯛太郎さんは私の親友でしたから。私はすぐに警察に電話しました。

その後、警察が来て、現場を調べ始めました。私は鮎子さんを慰めるために、彼女の隣に座りました。すると、私はソファの下に何かが落ちているのに気づきました。それは魚の骨でした。私は思わず手を伸ばして、それを拾い上げました。私は魚の骨を見て、食欲が湧いてきました。私はつい、口に入れて噛み砕こうとしました。

しかし、その瞬間、私は大きな間違いをしたことに気づきました。私は魚谷さんの家で、彼らの目の前で、魚の骨を食べようとしていたのです。私は慌てて口から魚の骨を吐き出そうとしました。しかし、それが遅かったです。私の喉に魚の骨が刺さってしまいました。私は苦しくなって、咳き込み始めました。

鮎子さんは私の様子に気づいて、驚きました。「海老夫さん、大丈夫ですか?」

警察も私の声に振り向きました。「どうしたんですか?」

私は何も言えませんでした。私はただ、必死に喉を掻きむしろうとしました。しかし、それも無駄でした。私は息ができなくなって、意識が遠のいていきました。

最後に見たものは、警察と鮎子さんの驚く顔と、ソファで横たわる鯛太郎さんの冷たい顔でした。

END


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