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「私的演劇日記4」

久しぶりに舞台を鑑賞した。

劇団「虹の素」公演「オルテンシアの種」である。

横南高校という架空の高校を舞台にした学園群像劇。2023年4月より続く12ヶ月連続公演「雨上がりには好きだといって」シリーズの1作で、今作は難病により余命いくばくもない女子高生とクラスメイトの友情を描いたさわやかな感動作となっている。ちなみにタイトルにあるオルテンシアは、イタリア語で「紫陽花(あじさい)」という意味。タイトルの通り、紫陽花がストーリーのキーポイントとして据えられており、なかなかに奥が深い。

実は、今年の初めあたりから「虹の素」に研修生(ほぼゲストに近い)として関わっており、不定期ではあるが稽古も見学させてもらっている。連続公演もできれば最初から鑑賞したかったのだが、介助者の手配などなかなか都合がつかず、6月公演で初めて劇場まで足を運ぶことができた。

劇場に入ると思っていた以上に本格的な舞台装置が組まれており(当たり前だが)、客層も意外と広く、こちらのほうがなぜか緊張してしまった。稽古の段階では細かい部分で不安点・懸念点がいくつか指摘されていたが、本番では見事にまとまっており、とりあえずはひと安心。1週間前の稽古を見ていた立場としては、口はばったい言い方かもしれないが、「よくここまでまとめられたな」という印象が強い。

久しぶりに……とは書いたものの、本格的な舞台を観た経験はほとんどない。生の舞台は爆笑問題の30周年ライブ以来だし、演劇に至っては小学校の授業の一環としてまわってきた劇団民藝の「奇跡の人」が最後である。

三谷幸喜や野田秀樹、シティボーイズといった舞台作品は好きだがテレビの中継で観て満足していた。

だからこそ、演劇が観たかった。時空間の共有という高揚感を味わいたくてたまらなかった。生の舞台の魅力、醍醐味をあらためて思い出させてくれたもの。それこそが「オルテンシアの種」だった。

「虹の素」の舞台には、言葉には、紡がれる物語には観る者の心を強く揺さぶる力がある。あふれるエネルギーを「ここにしかないメッセージ」として届け、発散させる若さがある。若さは時として不安定だが、伝えるべきメッセージがあるかぎり、とことんまで突き抜けていいと思う。

密度の濃い舞台作品に触れた後は、脚本を書きたくなる。というより、一応は脚本家として「虹の素」の門をたたいたのだから、何はともあれ書かなくてはならない。「雨上がり~」の脚本の力には今のところ感服しきりだが、仮にも脚本家志望の端くれである以上はいつの日か(できれば近いうちに)、上演に足る舞台を書きたいと思っている。

というか、書こう。ライターの仕事を言い訳にせず、とにかく書きつづけよう。

いつの間にか自分の話になってしまった。「雨上がり~」シリーズは2024年3月まで毎月1作ペースで続き、7月の公演チケットも公式サイトで予約が始まっている。

1作だけでも充分に楽しめる内容になっているため、これをきっかけに「虹の素」を知ってほしい。

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