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映画「グリーンブック」を語る時間
映画「グリーンブック」は、2018年にアメリカで公開されました。
天才ピアニストのドン・シャーリーがアメリカ最南部コンサートツアーを実施するため、警護役のトニー・リップとともに8週間もの長旅をするというお話です。
1962年のアメリカといえば、自由を求めたアフリカ系アメリカ人による闘争が激化。ましてやアメリカ最南部は、黒人差別が色濃い地域です。コンサートツアーを実施したドン・シャーリーの真の思惑が気になるところ…。
#映画感想文では、グリーンブックの魅力について紹介していきます。
愛に包まれるような素敵な作品なので、ぜひ参考にしてくださいね。
映画「グリーンブック」の舞台
グリーンブックの舞台は、1962年。黒人差別が色濃く残るアメリカです。
グリーンブックとは
映画のタイトルにもなっている「グリーンブック」ですが、実は当時のアメリカに実際に存在していました。
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グリーンブックについて、公式サイトの解説を以下に引用します。
グリーンブックとは
1936年から1966年までヴィクター・H・グリーンにより毎年出版された黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブック。ジム・クロウ法の適用が郡や州によって異なる南部で特に重宝された。
グリーンブックは、The Negro Traveler's Green Book(黒人ドライバーのためのグリーンブック)とよばれ、アメリカの人種隔離政策の一環として作成されました。
当時は、ジム・クロウ法の制定により、黒人隔離が法律によって定められていたのです。
ジム・クロウ法とは
ジム・クロウ法とは
1876年-1964年アメリカ南部を中心に定められた黒人隔離政策を推奨する法律のこと。
ジム・クロウ法の一部として具体例を以下に紹介します。
ジム・クロウ法のおもな具体例
・水飲み場を白人とそれ以外で分離
・白人と黒人の結婚は禁止
・黒人のみ過重な投票税・識字テストを実施
⇨実質的な投票権の略奪etc…
重要なのは、ジム・クロウ法は白人とそれ以外を分ける法律の総称であり、実体がないということ。社会的規範により成り立っているため、いってしまえば"なんでもあり"の法律でした。
映画「グリーンブック」の舞台は、ジム・クロウ法がしきりに叫ばれた1962年のアメリカです。
映画「グリーンブック」がおすすめの理由
映画「グリーンブック」はなぜおすすめなのか。ここでは、グリーンブックの魅力を次の3つから紹介していきます。
描かれる登場人物のルーツ
音楽で繋がる人
愛する妻に送る手紙
描かれる登場人物のルーツ
一見この作品は、黒人ピアニスト、ドン・シャーリーを通して描かれる黒人差別に焦点が当てられやすいです。
ただ作中で描かれるのは、ドン・シャーリーの孤独や苦悩だけではありません。
ここでは作中の主要人物2人について詳しく紹介。作者の意図を探っていきます。
ドン・シャーリー
アフリカ系アメリカ人のピアニスト・作曲家。
大学では音楽で2つの博士号を持っており、「ドクター・シャーリー」の名でも知られる。結婚経験もあるが、作中ではすでに独身。自宅には執事のようなお世話係が1人いる。
トニー・リップ
イタリア系アメリカ人。本名は、トニー・ヴァレロンガ。
子供の頃から口が達者であったことから「リップ」との愛称を持つ。
ドン・シャーリーに字を教わるほど無学。家族・親戚と、貧しいが賑やかな生活を送る。
ルーツが浮き彫りになるのは、トニー・リップが警官にイタリア系であることを侮辱されるシーン。
トニー・リップは、イタリア系の両親から生まれています。人種差別の壁は、ドンと同様、トニー・リップもまた生まれながらに感じてきたものなのでした。そこで私たちは、この作品の描くより大きな"壁"としての人種差別に気付くのです。
音楽で繋がる人
音楽も「グリーンブック」の魅力の1つです。
作中、ドンがピアノを演奏するシーンが度々描かれますが、どれもが素晴らしい…。彼が天才ピアニストであることは、演奏シーンを目にするだけで充分に伝わるほどです。
ドンとトニー・リップは環境・教育・文化の壁を隔てて出会い、最初はお互いを理解しきれずにいます。
しかし、初めてドンの演奏を聴いたとき、トニー・リップはドンが持つ素晴らしい才能に気付くのです。同時に、彼の生き様をも見ることになります。音楽が、異なる二人の心を繋げたのです。
もう1つ紹介するとしたら、黒人の集まるジャズバーでピアノを演奏するシーン。
普段は、決まったピアノ(スタインウェイ)でしか演奏しないドンですが、この時はおもむろに古びたピアノの前に座ります。
演奏を始めるドンと、演奏の素晴らしさに圧倒されるバーの店員・客。それまで黒人音楽を聴いたこともなく当然演奏したこともなかった天才ピアニストが、伴奏に合わせてピアノを弾き始めます。ドンが音楽を通して自分を解放する瞬間でした。
文化が異なっても、音楽で人は繋がる。
私たちは、人と人が音楽で繋がる瞬間をこの映画で目の当たりにするのです。
愛する妻に送る手紙
愛する妻に手紙を送るエピソードも、「グリーンブック」の大切なシーンの1つといえます。
長旅の道中、トニー・リップは愛する妻に手紙を書こうと試みますが、学がないため文章がまともに書けません。見かねたドンは、代わりに気持ちのこもった素敵な文を考えてあげます。
トニー・リップから届いた何通もの手紙を読んで、妻は感嘆。親戚中に自慢するという、なんともユーモアと愛にあふれた1シーンですが、このエピソードの結末はここで終わりではありません。
クリスマスの夜、無事にツアーを終え初めて妻とドンが顔を合わせた際、彼女はドンにそっとささやきます。
「素敵な手紙をありがとう」
彼女は、手紙の文を考えているのがドンだと気づいていたわけです。
なんて温かくておしゃれな演出でしょうか…。
このクリスマスのラストシーンは、圧巻。圧巻といえるほど温かくて愛に包まれた時間なのでとくにおすすめです。
映画「グリーンブック」に学ぶ"人を広く愛すること"
人種差別問題は、文化といえるほど世界に根強い影を落としています。それは、現代の世界でもいえることです。
一度認識された偏見は、そう簡単に拭い切れるものではありません。
ただ、自分の家族を大切に想えるように、音楽で人と人が繋がれるように、
少しの思いやりや優しい想像力があれば、状況は変わります。
考えることはいたってシンプルです。
自分の大切な人と同様、人種の異なる他人にも大切に想い想われる人がいるということ。
それは人種差別のみならず、現代社会での他人との関わり方についてもいえます。
現代に生きる私たちは、シンプルに「人を広く愛すること」をもう一度考える必要があるでしょう。
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