青天の霹靂36(カラオケ)
廉夏達は、その時間を満喫するかのように使う。
「ねぇ、カラオケ行かない?」
「廉夏、歌が目的ではないでしょう?」
「やっぱ、分かる?」
「ええ」
「悲しいね。俺らの時は歌うのが、目的だったよな。これが、時代の流れって、いうやつかね?」
「ああ」
廉も頷く。
「何で、歌うことが目的になるの? 確かに歌うことは楽しいけど、興味引かれるものがないといかないかも」
廉夏は頭を傾げる。
「ああ、イヤになるな。時代と共に、廃れていくんだな」
「そう言い出したら、もう終わりだよ。おじさん」
「何を、俺の歌声で、お前を酔わしてやる」
「酔った、女はいたのか?」
廉夏が聞くと、日向は、泣き真似しながら言う。
「おかしんだよな。たぶん、俺様の美声に、酔いしれ過ぎて、残念ながら、モノになった奴はいなかった」
「だと、思った」
と、言って廉夏は爆笑する。
廉夏と日向が漫才(?)を繰り広げている間に、廉は部屋を借りる。
「この、番号だと一つ上の階の部屋で、ほら、お前の目的のものだ」
そう言って、コインを渡す。
「ありがとう」
「嬢ちゃんの目的はそれか?」
「当たり」
で、廉夏は、もらったコインで早速、冬眞に水色の綿菓子を作ってもらう。
これは、チェーン店にはない。
個人経営をしてるこの店だけにある。
「いただきます」
だが、口にいれてからの廉夏の行動は早かった。
何故か、すぐ吐き出しお茶で口をゆすぐ。
ゲホゲホむせる。
冬眞が心配そうに聞く。
「大丈夫ですか?」
「これをすぐ停止させて。多分砂糖に毒が混ぜられているわ。機械のほうじゃない」
「分かった。すぐ止めるよう言う」
冬眞は頷くと店に言おうとしたが、日向が止めた。
「待て。俺が言おう。じゃないと、店の者もイタズラかと思い信用しないだろう。こういう時は、警察手帳がものを言う」
「有り難うございます。お願いします」
冬眞は頭を下げる。
そして、廉夏の言ったことに誰も疑問も疑う素振りも見せず行動する。
日向が手帳を見せ店の人に言う。
店の対応は早かった。
日向の危惧した通り被害者は出ていた。
女の子同志できていた3人組と合コンしていた6人組とカップルで来ていた女の子が被害者になっていた。
すぐに被害者全員に牛乳を飲ませて吐かせるように店の人に廉は指示をする。
カップルの女の子が流産し、さらに亡くなっていることを知り廉夏は愕然とする。
「そんな。でも、誰が犯人かしら、無差別犯罪を狙った犯行よね。誰が口にするかわからないんだから。卑劣よね」
廉夏はプンプン怒る。
「今日が土日じゃなくて、良かったよ。土日だったら、もっと被害者出てたぞ」
日向が言うと、冬眞は頷く。
「そうですね」
「犯人何か不特定多数だぞ。そこから入り込もうと思えば誰にでも入り込めるし」
非常階段を指指す。
それには、冬眞は否定する。
「いえ、犯人はたぶん近くにいますよ」
冬眞が言ったことに、廉夏は頭を傾げる。
「何で?」
「たぶん、犯人は自分の犯行を見たいんだと思いますよ。自分の仕掛けで何人死んだかとか、被害者がでたかとか、見たいですよ。本当に悪趣味ですよね」
「さすがご明察と言いたいが、でも、私としては、もう少し先に行ってもらいたかったね」
廉は面白そうに笑う。
「もう少しとは?」
冬眞は、自分の考えが、否定されたことに、ちょっとムッとする。
廉は、クスリと笑い言う。
「別に犯人には、大量殺人なんか狙っていなかったさ。たぶん、目的の人物が本当にそれを口にしたかを、自身の目で確認したかっただけだ」
「と、言うことは無差別殺人を狙った訳じゃないのね?」
廉夏は疑問を口にし、自分で肯定する。
「あ、そう言うことか。廉兄、もう犯人分かってるのでしょう? 持ったい付けずに、教えなさいよ」
「別にもったい付けている気はないんだけどね」
廉は苦笑いする。
「もったい付けてるわよ」
「じゃあ、本題に早速入ろう。話しとその人の経歴を調べてもらえば、分かると思うよ」
「ふ~ん。そんなんで分かるんだ?」
「俺の思っていることが外れてなければね」
「廉兄は予想がついているのね」
「一応ね。廉夏も、分かるんじゃないか? それでお前の友達と同じ理由だ。今回、それで被害に合ったのは、お前の友達と同じ理由だ」
「と、言うことは犯人はあいつだね。許せない。だって、自分勝手過ぎよ」
「ああ。お前の怒りは、もっともだ」
警察官の一人が何かを日向に耳打ちする。
「やはり、そうか?」
「えっ、誰?」
「お前の思っているとおりだって言うことだ」
日向は、廉夏に言う。
「やっぱりね」
「このカラオケボックスに来ていて、同じ階の者と言ったら、私たちと、その女子高生達とカップルだけ。ってことは、でもなぜ?」
「それは、本人にいってもらおう」
「何か僕にもわかって来ましたよ」
冬眞も、イヤそうな顔をする。
「殴って良いかな?」
廉夏が言うと、廉が言う。
「いやその前に復讐する人が控えているから、大丈夫なはずだよ」
そう言って、日向を見る。
「何で俺を見る」
「長年の付き合いから、お前がそいつの言葉を聞いたら許せないと、思ってね。でも、勘だから外れるかもな」
「外れだよ。俺、これでも刑事だぜ」
「だからこそ、言うんだ」
「わかんねぇな」
「分からないなら、分かんなくても、良いさ」
廉はそう言って笑った。
「さてと、犯人さんの元にそろそろ行こうか?」
そして、一つの部屋の前まで、くると、日向はノックもなく突然開けた。
「なんなんだお前ら」
カラオケボックスの部屋にいた彼は怒鳴る。日向が前に出て、手帳を見せる。
「警察です」
「うまくいってご満悦何でしょうね。でも、残念でした。事件は暴かれちゃったよ」
「暴かれたって、何がだよ?」
急に慌て始める。
「あなたが邪魔だと、彼女を殺すため、砂糖の方に毒を仕込んだ」
そう言われ、男は急に泣き出した。
「殺す気はなかったんだ。ただ、子供は困るんだ。俺には妻も子もいる」
「だから」
冷たい眼差しを廉夏は向ける。
「困るんだよ。お前みたいな子には分からない」
「分かりたくもない。自分が遊んだ結果でしょう」
そう言われ、男は黙る。
「それで困るなんて、男の勝手な言い分だ。いつも、それで被害者になるのは女だ」
廉夏がそう言うと、冬眞が苦笑いする。
「なんか、耳が痛いですね」
「ただ気持ち良くなりたいだけなら、自分でマスターベーションでもやってろ」
廉夏が言うと、日向は噎せる。
「子供が出来た時に責任持てないなら、女とやる資格はないよ」
「そうだよな。言い訳かもしれないけど、あいつを殺す気は本当になかったんだ。ただ、子供を卸そうとしただけで、俺に殺意はなかったんだ」
その時、廉夏の横を風が横切った。
日向だった。
「だから、刑を軽くしろとでも、言うつもりか?」
日向がおもいっきり殴り飛ばした。壁まで振っとんだ。
「殺意の云々(ウンヌン)はどうでもいい、お前は何をどう言い繕うと、ただの殺人犯だ」
「な、いった通りだろう」
面白そうに廉が廉夏に言った。
「あっ、本当だ。さすが廉兄。大正解」
そう言って笑ったのだった。
その後、日向が彼を警察へと連れて行く。
でも、被害にあった子は店員に頼み病院へと、救急車で行く。
こうして、せっかくの休日が、休日じゃなくなって終わったのだった。
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