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この戦争は、どう始まったか -Wikipedia編集者(2)

10月19日 ロシア独立系メディア rusmonitor:(4,504 文字)

ロシア語版ウィキペディアのほとんどの編集者は、ロシアがウクライナで行っていることは戦争であり、これを悪だと理解しています


オレグは、ロシアがウクライナに侵攻した最初の30分で記事を書き始めた
記事タイトル「ロシアのウクライナ侵攻 (2022)」の「『の《на》』」は本人の意思ではなく、ロシア語版ウィキペディアの文法的な要請によるものです
この記事は、最初の数日間で、すでにウィキペディアのすべてのトラフィック記録を更新し始め、Roskomnadzor(露連邦通信・情報技術・マスコミ分野監督庁)がそれをブロックしようとしました
ロシア語版ウィキペディアの編集者が受けている圧力と、ウィキペディアンを安全に保つための仲裁委員会の試みについて、オレグに話を聞きました

- オレグ、貴方の記事「ロシアのウクライナ侵攻(2022年)」は、本格的な戦争が始まってわずか数分のうちに登場し、貴方自身が最初のバージョンを書きましたね

「夜でみんな寝ていたけど、アメリカにいたから時間があった
バックボーンは30分でできたが、その後、多くの情報を反映させなければならなかった」とおっしゃっていました
なぜ、そんなことができたのですか?
まるで、攻撃の瞬間を知っているかのように...

「ロシアのウクライナ侵攻(2022年)」のアクセス数

- 最終日まで、プーチンは本格的な攻撃には出ず、NATOとデモンストレーションで張り合うのだろうと私は勘違いしていました
しかし、ある時、国境に超大量の血液パックが送られていることを知り、これはハッタリではないかもしれないとも思いました
血液は成分によって保存方法が異なります
例えば、血漿は-20℃の低温で保存されますが、赤血球は-2〜6℃で、しかも1ヶ月しか保存できません
つまり、これはショーをするためだけというには、はるかに過剰ということです

そして、知人のディミトリ・ファルバーグが「始まったのか」とミサイル攻撃のレポートのリンクを送ってきて、残念ながら始まってしまったのだと悟りました
デマでないことの確認が取れ、限界を超えたことに気がついたのです
それで記事を書き始めたんです

ウィキペディアには、記事の(独占的)著者という概念はありません
ある人が最初のバージョンの著者になり、その後、他の人は共著者になることができます
そう、私が作成し、私が最初の編集者で、その後、複数回にわたって文章を補足したのですが、ウィキペディアはどんな記事でも他の人が編集し、補足できるプロジェクトなんです
単独著者ではないというのは、ウィキペディアの最大の利点の一つです
異なる著者が参加することで、バランスの取れたアプローチを実現しています
権威ある出典を引用し、ウィキペディアのルールを守るなら、誰でも自由に補足することができます
侵略の記事には、すでに数百人の編集者がいます

しかし、このテーマは私にとって重要なものであることに変わりはなく、数百回の編集を行いました
毎日、さまざまな都市での爆撃や記念碑の破壊に関する情報を入力しなければならないのです
しかし、7カ月を経て、この記事の内容はそれをはるかに超えるものになりました
新しい記事が登場し、毎日何十回と訂正をする
戦争が続き、関連性があるからです

- この間、個人的に制作したウクライナの戦争に関する記事は他にありますか?

- 例えば、ウクライナで殺害されたロシア人将兵の大半に関する記事、チェルノブイリでの戦闘、マリウポリの封鎖などです
中でも私のお気に入りは、「そして今、ベラルーシが攻撃の準備をしていた場所をお見せします」というフレーズに関する記事です

注:3月11日にプーチンとの会談の中でルカシェンコが発した言葉。ルカシェンコは「特別軍事作戦」が開始されていなければ、ウクライナによってベラルーシが攻撃されていただろうと発言した。

この皮肉な暴言を誰が言ったか、ほとんどの読者は知っていると思う
この記事は、ロシア語、ウクライナ語、英語の3ヶ国語で作成しました
すでにロシア語セクションの記事は、削除されようとしたことがあります
しかし、私たちにはプロジェクトのルールを理解するのに十分な経験があったので、残されたのです
後で削除されるような記事は普通作りません
同じようにチェルノバエフカでの戦闘に関する記事も削除されようとしました

実は、ウクライナ侵攻の記事も削除されようとしたのですが、削除されませんでした

私の他の記事は、
「ロシア住民の財産を強制的に差し押さえるウクライナ法」

「ロシアの軍事予算」(英語の記事を翻訳)

「ウクライナの国際司法裁判所への対ロシア声明(2022)」

そして残念ながら亡くなってしまった多数のウクライナの英雄たちについてです
ドミトロ・チャバラフ

パブロ・フェドセンコ

マクシム・ビロコン

イゴール・ベズダイなど、素晴らしい人たちです

他にも悲惨な記事はいくつもあります
エーフェン・ニコラエビッチ・バル -ジャーナリスト、公人、船員、70歳で拷問の末に死亡

 ヴェラ・ギリッチ -ラジオリバティのジャーナリスト、ロシアのミサイルで死亡
彼女を狙って殺そうとしたわけではないことは明らかですが、私がかつて住んでいた、キーウのシェフチェンキエフスキー地区にある彼女の自宅で亡くなっています
高精度のロシアのミサイルがこのジャーナリストを殺すのに使われたとのことです

また、30年以上前のソ連の漫画「難破船の宝物」(16分のアニメーション)についての記事も作成しました

そのストーリーは、巡洋艦「モスクワ」の沈没と関係があるかもしれないと考えたからです
そのアニメでは、学生や「ロシアの開拓者」が黒海で第二次世界大戦時のドイツの駆逐艦「Z-29」を発見するシーンが出てきます

そのため、ナチスドイツの船の階級を示す「Z」と、ロシアのウクライナ侵攻のシンボルを比較する解説者も現れました
そして、このアニメの中で登場人物が乗っている潜水艇は「ネプチューン」と呼ばれ、ウクライナ当局が「ネプチューン」と呼ぶ、巡洋艦「モスクワ」を撃破した巡航ミサイルの名前と重なっています

また、「ロシアのウクライナ侵略のシンボル」-特に「Z」の文字-についての記事も始めました

- それに「ブチャの虐殺」 ...

- いいえ、この記事は私が作ったものではありません
やろうとは思ったけれども、難しかったです
しかし、私自身は別として、記事に情報を提供してくれた人たちのことは、今は危険なので、一切触れません

- 「ロシアのウクライナ侵攻」の記事に戻りましょう。なぜ作ったのですか?

- どんな記事でもそうですが、客観的な情報を公開し、事象を明らかにすることが主目的です
しかし、ロシアは検閲を行い、戦争の真実を禁止したのです
「特別作戦」と呼ぶのは、物事を正式名称で呼ばない卑怯な試みです
原則的には、2014年から続いている戦争の一環としての特殊作戦と言うことはできるでしょう
しかし、戦争であることに変わりはないはずです

「戦争」という言葉の使用は、15年の懲役刑に処されています
ロシア当局の意図的な誤魔化しは、不条理の域に達しています
攻撃されるまで、プーチンは攻撃しないと言っていた
そして、「徴兵は戦争に参加しない」と言い出した
プーチンが「知らなかった」と認めざるを得なくなったのは、彼らの多くが捕虜になった後です
その司令官は、自分が全軍の徴兵を指揮している事に気付かず、戦地に送り込んだというのです

プーチンは、ロシアによれば、ルハンスク州とドネツク州の掌握した領域に2022年まで存在する、いわゆる人民共和国を支援しているだけだと言い切ったのです
しかし、同時に、ハルキウ州、ヘルソン州、ザポリージヤ州を熱望するようになりました
今回も、ルカシェンコは「ロシアにはウクライナを支配する目的はない」と発言したが、これは3月10日にラブロフが「ロシアはウクライナを攻撃していない」と発言したのと同じことです
何百人もの人が死んでいるときに、彼はそう言ったのです
そして、5月28日には、露議会のヴォロディン議長が、バイデンとゼレンスキーは地球上に「ホロドモールを引き起こした」大統領として歴史に名を残すだろう、と皮肉ったことも覚えています

記事の狙いは真実を示すことです
それぞれの立場で、それぞれの真実があると言えるでしょう
おそらく
しかし、ウィキペディアの編集者は、誤報を報じることにあまり興味を示さない国際メディアの立場を示そうとしているのです。

- ロシア検察庁は、Roskomnadzorのため、「ロシアのウクライナ侵攻(2022年)」の記事を同国指導者の要求に沿って変更しない場合、ブロックすると脅迫しています
この脅迫を真剣に受け止めていますか?

- 繰り返しになりますが、ウィキペディアの記事のオーサーシップは条件付きの概念です
このような人気のある記事の場合、何百人もの共著者がいるのです
しかし、ロシアやベラルーシの住民にとって、このような著作や共著は投獄を意味します
私の同僚が2人、ウィキペディアを修正しただけで逮捕されました
1人の容疑は、後に刑法の別の条文に変わりました
それは彼が刑務所に入った後です
二人とも無実の囚人であることが判明しています
マーク・バーンスタインとパベル・ペルニコフです

どちらもベラルーシの市民です
逮捕後、軍事関連記事の編集者のニックネームを隠すという苦汁の決断をしました
その後、編集者の逮捕はでていません
残念ながら、ウィキペディアのブロッキングや罰金の脅威は残りましたが

自由な国に住んでいるので、楽なんです
しかし、明日、他の国では何が起こるかわかりません
もしかしたら、明日からトランスニストリアが条件付きでプーチンの政策に従い始めるかもしれません
そのため、軍事に関する記事の編集を行う編集者の個人情報は、通常の国に住んでいる方であっても、すべて非公開としました

圧力はありませんでしたが、情報操作に関するスレを2つほど書かなければいけませんでした
私は何十年も文明国で生活しているので、安心しています
しかし、権威主義的な簒奪者の監獄に座っている人々にとって、残念ながら、それは容易なことではないのです
「ヨーロッパ最後の独裁者」の座につく前に、ぜひともクビになって欲しいものです

ウィキペディアに情報を寄稿しただけで逮捕されるのは不合理です
ウィキペディアでは、どんな情報も寄稿した人の意見ではありません
すでに、どこかで発表された意見であり、私たちはそれを再掲載しているだけです
どんな記事も三次資料です
一次は出来事や事実、二次は誰かが一次を説明するとき、三次は一般化された情報源の説明や情報の直接的な合成です
権威ある出典元がなければ、ウィキペディアに情報を入力することはできません

(つづく)

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