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この戦争は、どう始まったか

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ロシアのウクライナ戦争の当事者となった人々のオムニバス
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#ルカシフカ

この戦争は、どう始まったか -Index

順番に読み進めてもらえれば、この戦争について十分な理解を得られるように配置しました 戦争が始まったとき、どのような状況になり、どんな理由で、どう行動したのか 何が生死を分けるのか 様々な立場の人たちの、それぞれの背景と行動、そしてその結果を知ることは、いつか戦争の当事者となることがあれば、必ず役に立つと思います 戦争が始まる直前、直後の判断は最も重要です 開戦直後を切り抜けることができれば、貴方と貴方の大事な人たちが無事に生き残る可能性は大幅に高まるでしょう そして、何をしな

この戦争は、どう始まったか -ホルボノース一家(1)

(4,308 文字) 5月1日 TheAtrantic 他: おそらく2月27日、ロシア軍がウクライナ北部のルカシフカ村に砲撃を開始したとき、数十人の住民がホルボノース家の地下室に逃げ込んだ 子供たち、妊婦、寝たきりの年金生活者、そしてホルボノース一家も、桃園と野菜畑の地下室へ入り攻撃が終わるのを待った 10日の間、1時間に数回、砲弾が上空で鳴り響き、何かが砕け散る音を聞いたという その攻撃は、地面に大きなクレーターを残し、彼らの車を燃やし、ホルボノース一家の家の屋根を壊し

この戦争は、どう始まったか -ホルボノース一家(2)

(3,989 文字) ある朝、彼女は彼らを連れ、お茶に使う野生のハーブを採集に行った ホルボノース家に残されたわずかな生活の場を歩きながら、兵士たちは自分たちがもたらした破壊を詫びた 「いつか客人として訪ねてきてくれれば、もっといいのだが......」と、一人の兵士が言った セルゲイさんは怒った 「私を殺し、家を壊すために来たのに、友だちになれというのか 私たちは敵同士だ」 ロシア人は再び謝罪し、やがて全員が「戦争は無意味だ」と言い始めた 彼らは「戦争」という言葉を使い始めた

この戦争は、どう始まったか -ホルボノース一家(3)-ルカシフカ村

6月11日 ウクライナWEBメディア:(5,099 文字) ロシア兵は教会でバーベキューをし、図書館に浴場を作ったルカシフカ村は、チェルニヒウの南東15キロに位置する 2月24日までは324人が住んでいて、そのうち107人が年金受給者だった 図書館と救護所と二つの小さな商店があった 地元の人々は主に「ナポリフスキー」と「ローザ」の 2 つの農場で働いている チェルニヒウに電車通勤する人もいるが-最寄りの鉄道駅まで5キロある 名所は100年前に建てられた復活教会(ソ連時代に

この戦争は、どう始まったか -ホルボノース一家(4)-ルカシフカ村

(4,923 文字) イナ・ホーラックの証言 胸に大きな白いハートのついたセーターを着た51歳のイナ・ホーラック(Інна Горлач)は、大事なところから話し始めます 他の村人も彼女と同じように話をします まず、「家が燃やされた」とか「夫を銃殺刑にした」と言い、すぐに詳細について話してくれます イナの話はこんな風に始まりました 「従兄弟の婿がいなければ、コスチャはもう殺されていただろう」 コスチャ(コスチャンチン Костянтин)はイナの夫です 「その日、ロシア

この戦争は、どう始まったか -ホルボノース一家(5)-ルカシフカ村

( 4,027 文字) イリーナさん イリーナさんに彼らの名前を憶えているか聞いてみた 「もちろんです(笑) 生きている限り、忘れることはありません ザキール、アレクセイ、ユラ、ニコライ、ロマンアレクセイだけが31歳、他の人は40歳以上です シリアやアフガニスタンで戦った人もいました 当初、彼らは私たちが言語を理由に差別されていると言い続けていました 私は『それで、私は貴方と何語で話しているの?』と言いました」 「ナチスの話もしました 少しづつ、私たちはフランクになっ