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一夏の夢

一番最初に好きになった子は覚えてないけど、1人だけ忘れられない女の子がいる。最初はその他大勢の中の一人だった。その子があまりに褒めてくれるから調子に乗って「沢山褒めてくれるから褒める係に任命します!」なんて冗談めかしたことを言ったらさらに褒めてくれた。愛に飢えていた自分は褒められると天邪鬼になってしまうのだが、その子の言葉だけは素直に嬉しく思った。そこからお互い頻繁に話し合うようになり通知はその子だらけになった。返信返すのがちょっぴり大変だったけどその子と同じ時間を共有し、通知が来る度に満たされていくようで幸せだった。その子とは生活リズムが違っていたので話すために遅くまで起きたりしていた。本当に幸せだった。しばらく時間が経つとだんだん未読無視や既読無視が増えてきた。苦しかった。もうその子に必要とされてないようで。でもその子がいないのに耐えられなかった。


そしてある日急にその子がいなくなった。


届くはずのない@ツイートもいつか帰ってくるじゃないかと期待して変えられないお揃いのアイコンも日に日に自分を苦しめた。唐突に帰ってきたその子は少し落ち込んでいるようだった。その頃にはもう以前のようにはなれないと薄々感じていた。どんなに愛情を囁かれても信じられなくなった。本当は思ってないんじゃないか。他の人と仲良くしているのを見てさらに信じられなくなった。本当は都合のいいように使われてただけなんじゃないか。不信感は抱いていたがその子から離れられないままだった。

ある日、その子に恋人ができたと知った。

信じたくなかった。なんであんなやつが。なんでちゃんと教えてくれなかったのか。耐えられなかった。その子のことは自分の方が知ってるのに。なんで。お幸せになんて思えなかった。

その子の幸せを近くで見るのは耐えられなかったからそのこの前から消えることにした。黙って消えるのは何か違うと思った。確かに幸せな時間があったし一緒に居れてうれしかったから。

それを伝えたあと彼女は「本当は好きでした。他に好きな人がいると思って諦めた。愛してましたさようなら」

そう言い残して消えた。
せめて最後に嫌いにさせてくれたら良かったのに。

今はもうどこにいるのかも何をしているのかも分からない。名前も声も顔も言葉遣いもぼんやりとしか思い出せない。似た人を見つけてはその子なんじゃないかと期待してしまう。またどこかで違う名前で違う雰囲気で会えたらやり直せるような気がするから一向に諦めがつかない。

運命の人じゃないみたいだから
もう会えないかもしれないけど
お願いだから君も忘れないでいてね

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