Au service de la Franceで学ぶフランス近代史: ドイツもこいつも
オリジナルタイトルは il y a allemand et allemand.
この日本語訳「ドイツもこいつも」はここから。を考えた人、文才ありすぎだろ。この時点でおもしろすぎる。
このエピソードはARTEで無料配信されてる。日本からのアクセスにはVPNとか使ってうまいことやってな。
どんな話?
おもにドイツとの関係を皮肉った話。有名な話だが、フランスとドイツは仲が悪い。歴史的に何度も衝突を繰り返してきたのだから無理はない。最近では「隣人は仲が悪いものだ」と言えば、ヨーロッパ人はだいたい納得する。
簡単に話のプロットを書く。
エージェントMoulinierとJacquardは元ドイツSS将校を捕まえる。このSS将校はブエノスアイレスに飛ぶ前にパリに立ち寄ったのだ。そこに西ドイツのエージェントも追ってきて鉢合わせ。MoulinierとJacquardは元SS将校の逮捕を自分たちの手柄にしたいのだが、上からの「ドイツとフランスの友好のため」西ドイツに引き渡すという決定にしぶしぶ従うのだが・・・(あとはネタばれセクションに書く)
"amitié franco-allemande"(ドイツとフランスの友情) というフレーズが何度も出てくる。実際、いかにも嘘くさい場面でこのフレーズを使ってるので、たぶん意図的だろう。
近代史を読み解く
ナチスの元SSや高級軍人が南米へ逃亡 - この部分は歴史的事実に基づいている。近代史が好きな人はオデッサ・ファイルを思い出すかもしれない。 この作品を好きな人は気が合うかも。オデッサファイルでの設定年は1964年。Au service de la franceは1960-1962年[1]ごろなので、だいたい時代はほぼ同じ。
ナチスとアルゼンチンの関係性といえば、アドルフ・アイヒマンも有名だろう。Wikipediaによると、アイヒマンは1950年にアルゼンチンへ渡ったとのこと。アイヒマン逮捕の話をすると、ぼくは落合信彦のルポタージュを思い出す。落合信彦作品の中には頭がイッテQの作品もいくつかあるけど、モサドについてはワクワクしながら読んだものだ。
そもそも、なぜアルゼンチンに親ナチス政府が存在したのか?ぼくは知らない。なので、調べてみた。
南アメリカとドイツのつながりは、19世紀後半まで遡る。 その当時、不況のどん底に落ち込んでいたドイツは植民地熱に浮かされていた。 貧困に苦しむ多くの人々が移住を希望していた。 そのため、様々な「移民協会」が各地に生まれた。 1880年代前半までに数十万人のドイツ人が北アメリカ行きの船や南アメリカ行きの船に乗った。
南アメリカに逃げたナチス戦争犯罪被疑者
なるほど、1880年代まで遡るのか。1880年代のドイツと言えば、ビスマルクが首相をやってた頃の話だ。ドイツと植民地の話と言えば、ぼくはカメルーンを思い出す。ドイツがカメルーンを保護領にしたのは1884年。なるほど、この時代のドイツはイギリスやフランスに負けじと植民地を増やしてた時代か。
しかし、どうして19世紀末のドイツは貧しかったのだろう?そこまでは調べる気が起きなかったので、やめておいた。いずれにせよ、ドイツ人の南米アメリカ進出は帝国主義時代の名残ということだ。
しかし、(ちょっと知ってる人の)一般認識は、「ドイツ系アルゼンチン人=ナチの子孫」という認識のようだ。数日前にInstgramで次のような投稿を見た。(下のtweetを引用して) do you know what your parents did?: 君の親が何してたか知ってる?
German-Argentinian girl 🇩🇪 🇦🇷 pic.twitter.com/jGAKmeAVuE
— Crazy Wild Clips (@CrazyWildClips) December 22, 2023
[1] シリーズの中でカメルーン独立(1960年)の話が出てくる。アルジェリア独立(1962年)の話もかなり後の話で登場する。なので、その間なのは間違いない。
笑いどころ / 感心したところ
Au service de la franceは笑いどころがわかりづらいと思う。そこで、ぼくが「ここぞ」と思う笑いところを選んでおいた。
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ネタばれ
元SS将校は西ドイツ政府要人とフランス政府の要人の弱みを握っていた。そこで、将軍はこのSS将校をそのままアルゼンチンに逃がすことにしたのだった「ドイツとフランスの友情のため」
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