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死を身近に、
車は無謀な運転だった。突然壁が現れ進行方向を遮られたようなものだった。力の限りブレーキを握って、でも、どうしたってこのバイクは衝突を免れないことがどんどんわかってくる。
右折禁止エリアを右折して、一方通行の道に逆走して進入しようとした車が、一方通行路の対向車に気づき道路の真ん中で立ち往生した。
突然進行方向を塞いだ車に、バイクは正面衝突、オレは頭から車の助手席に突っ込んだ。
からだをガチガチに固定されて救急車で搬送されながら、『こうやってどうにもならんことで人は死ぬこともあるんだぁ』とぼんやり考えた。
搬送先の病院では隈なく検査をされた。女医さんの「これは大事故ですよ」と念をおす言葉だけが、朦朧とした意識にきざまれた。ことの重大さがわからない。
事故から数日、とても気分がふさぎ、それはどうしようもないほどだった。おまけに事故で全身を隈なく検査したら、膵臓に”できもの”が見つかってしまった。
事故のついでに見つかったのだけれど、またまたこいつをどうすりゃいいのかがわからない。憂鬱の種が増えた。
そう、さらに間の悪いことに先月生命保険をすべて解約していたのだった。
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