ビジネスとデザインの関係

あなたが思うデザインは、アートかもしれない。

昨今、「デザイン」という言葉を聴くことが多くなりました。
特に最近聞くのはデザイン思考やデザイン経営といった言葉です。

「デザインって、絵を描くことじゃないの?」
「デザイナーって、絵を描き続ける人じゃないの?」
私は以前までこのような疑問を抱いていました。

デザインやデザイナーに対し、自由で創造的なイメージを持ち、学校で習う、美術に近いモノを感じていました。実際私の家族や友人に聞いてみると、やはり同じ印象を持っています。

ところで、アート・アーティストとは何でしょう。
英語でArtは「芸術」と訳され、Artistは「芸術家」とも訳されます。

日本語でよくアーティストと呼ばれる人々は、ミュージシャンたちでしょう。彼らは自分たちが書きたい詩を書き、奏でたい音を奏で、歌いたい歌を歌います。自分たちが最高だと感じるものを世に出し、自分たちの存在を、価値を、世界に伝えます。つまりミュージシャンにとって音楽は自己表現のためのものなのです。
これはアーティストとアートでも同じで、アートは自己表現であるといえます。

デザインとアートの違いについて、非常に分かりやすい記事がありますので、リンクを貼らせて頂きます。



じゃあデザインって何?

「デザイン」という言葉をGoogleに聞くとこう答えてくれます。

設計。図案。意匠。また、製品の機能や美的造形を考慮した意匠計画。

Google

…分かりにくい。
もう少し優しい説明を探してみましょう。

日本にグッドデザイン賞というものがあるのをご存じでしょうか。
国内唯一のデザイン評価制度ですが、この賞を運営する日本デザイン振興会の説明が理解しやすく、素敵だったため紹介します。

「常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する。」この一連のプロセスが我々の考えるデザインであり、その結果、実現化されたものを我々は「ひとつのデザイン解」と考えます。

https://www.jidp.or.jp/ja/about/firsttime/whatsdesign

Appleの巨匠、スティーブ・ジョブズは『デザインとは見た目ではなく「どう機能するか」のことである。』と述べています。
このジョブズの言葉はしばしば「デザインとは」を議論するときに引用され、本質を示しているとされています。

つまりデザインは、ヒトの課題を解決するためのものであり、自己表現を行うアートとは似て非なる存在である、と言うことができます。


提唱されだした背景

時代は刻一刻と変化しています。最近はAIの台頭もあり、過去に比べてあらゆるスピードが速くなり、ビジネスもその例外ではありません。
企業から提供されるモノは増える一方です。
しかし国内においては、モノを受け取る人、消費者はゆるやかに減り続けています。

可処分時間」という概念をご存じでしょうか?
可処分所得の類義語で、生活の中で自由に使える時間の事を言います。
企業はこの可処分時間を獲りにいかなければならないフェーズに入っています。
しかし各社から提供されるモノは増える一方で、これではそのうち競合の中に埋もれてしまうでしょう。

作ったら売れる時代は終わりを迎えているのです。
つまり、量から質の時代へ、移行しています。

可処分時間を自社に使ってもらうには、ユーザーが本当に”それ”を求めているのかを常に念頭に置いておく必要があるでしょう。

そこで必要になってくるのが、ユーザーのことを考え抜くこと、すなわちデザインなのです。

ビジネスに使う

ヒトのことを考えるデザインには、ターゲットやその内容によってさまざまな名前が付けられています。

代表的なモノには、ユーザーの体験を設計するUX(=User Experience)デザインや、より具体的にユーザーの使い心地を設計するUI(=User Interface)デザインがあります。
他にも従業員の体験や経験を設計するEX(=Employee Experience)や、会社に関係するヒト全ての体験を設計するPX(=People Experience)といった言葉まであります。

これらはすべて、対象とするヒトの体験をより良い物とし、満足度を上げることを目的とし、より良い世界にするためのデザインです。

この記事の冒頭で挙げた、「デザイン思考」とは、端的に言えばこれらのデザインを実現するための方法であり、プロセスとされます。

そして「デザイン経営」とは、こういったデザインの力を企業のブランド構築やイノベーションの創出に生かしていこう!というものです。
これについては、ふくろう経営デザイン室様のnoteが非常に分かりやすかったので、是非一度お読みください。

以上の事を一文で表すと、
「デザイン思考」を用いて「UXデザイン」(など)を行い、「デザイン経営」を成す。
と言えます。

ZOZOの例を見てみる

ここまでサラッとデザインについてお伝えしてきました。
実際にどうデザインがビジネスに用いられているのか、見ていきましょう。
株式会社ZOZOはZOZOTOWNやZOZOSUITといった、ファッションEC企業です。「UXはユーザーの体験を設計するもの」と先述しましたが、実際ZOZOではどう設計されているのでしょうか。
ZOZOのクリエイティブディレクター、大久保真登氏はUIとUXについてこう述べられています。

UXとは、コンセプトと世界観。UIはその世界観を実行していくためのトリガー(きっかけ)のようなもの

https://www.td-media.net/interview/what-is-ui-ux-vol-7/

そしてZOZOはUXを考える上で、「全てを包み込む器になろう」(=どんなブランド・商品でも取り扱うことができる売り場になる)というコンセプトを掲げているそうです。
このコンセプトを実現するためのサービスが、ショッピングサイトであるZOZOTOWNやフェイスカラー計測ツールのZOZOGLASS、足の3Dサイズ計測ツールのZOZOMATであると言えるでしょう。
しばしばUXと併記されるUIは、サービスがコンセプトを実現できるようにする「仕掛け」と言えます。
例を挙げると、コンセプトの「全てを包み込む」(=UX)を実現するよう、ZOZOTOWNのロゴはジェンダーニュートラルを表現するよう、偏りがないバランスで整えられています。

「デザイン経営」の面からみればどうでしょう。
ZOZOは経営戦略として「MORE FASHION×FASHION TECH」を掲げています。ファッションとテクノロジーを掛け、新しい体験や出会いを提供するのです。
日本最大のファッションECブランドを構築し、ECがメジャーではなかった時からZOZOTOWNをローンチするといった、イノベーションを起こしています。

ZOZOが経営にデザインを取り入れている話をされている方がいます。同社に初期から勤務する佐藤大介氏です。

ZOZOはクリエイティブに対してすごく理解があり、その当時からデザイナーの役割を重要視していました。そもそも経営層にそういった意思がなければ、デザイン志向な会社は生まれてこないと思います。ZOZOは、デザイナーが事業の上流に入り込むことを求めるなど、「デザインはデザイン事務所や広告代理店に依頼するもの」という考え方が当たり前だった当時にしては、しっかりとデザイナーが活躍できる場所を用意していたと思いますし、会社としてデザインの活用がとても上手くいっていると思っていました。

https://corp.zozo.com/people/interview-designer/23/

おわりに

ビジネスとデザインについて、簡単にまとめてみました。
特にZOZOの具体例を見てみることで、その概要が掴みやすくなったのではないでしょうか?
国内はもちろん、海外企業の事例はたくさん挙げられているので、それらをもとにより詳細なイメージを持っていただければと思います。
拙い文章を読んでいただきありがとうございました。
精進します。

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