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野球の星の王子様

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緊急事態宣言は解除されたものの、まだ予断を許さぬコロナウィルス感染。
とはいえ、もはやこのコロナウィルスが何なのかよくわからなくなってきているというところもないでしょうか。コロナコロナ言ってますけど、実態は肺炎を引き起こすウィルスでしたよね。真夏に肺炎になったらそりゃもう苦しいだろうなぁ…熱中症にも気を付けましょうね…。

…という悲惨な状況を脱して少しでも明るいニュースを、というところでやってきたのが「プロ野球開幕」。野球ファンとしては「あれ、始めちゃって大丈夫なの…?」という複雑な心境を孕みながらもようやく我々の手に戻ってくる「日常」に心躍らないわけがありません。今年は「6連戦」があったりオールスターがなかったり、そして何より当面は無観客試合と、選手たちはモチベーションを保つのも大変でしょうけど、暗いニュースばかりの世の中に明るい光を灯してもらいたいと願うばかりです。

その一方で、まだ始められなさそうなのは、海の向こうのメジャーリーグ。始められない理由はCOVID-19の影響ばかりではなさそうなのであまり深入りはできませんが、日本人としても楽しみ満載の今シーズンですから、みんなが納得できる形で早いとこ始めてもらいたい(矛盾)ですね。

今シーズンのメジャーリーグ、何が楽しみかといえば、今シーズンから海を渡った二人のNPBを代表する野手の活躍はもちろんですが、トミージョン手術からの完全復活を遂げようとしている二人の投手の活躍でしょう。一人はシカゴ・カブスのダルビッシュ。そしてもう一人はロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平。
二人とも我らが北海道日本ハムファイターズからポスティングを経てメジャーのチームに移籍、すでに活躍はしていますが、アメリカン/ナショナルのそれぞれのリーグに分かれてそれぞれのリーグでサイ・ヤング賞!なんてなったら、ファイターズファンとしては10年くらい我がことのように自慢してもいいんじゃないでしょうか。

そんな楽しみなメジャーのシーズンインを待ちわびつつ、我らが大谷翔平に関する本を2冊読んでおきました。

石田雄太『大谷翔平 野球翔年』
佐々木亨『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』

2冊とも、まだ大谷翔平がメジャーで活躍する前、NPBからMLBへと旅立つその前後に書かれたもの。前者は翔平のファイターズ時代を中心に翔平および周辺の言動や戦績をもとに大谷翔平を分析しているものですが、後者は翔平よりもむしろ翔平のご両親、花巻東高校野球部の佐々木監督、ファイターズのフロント、そしてファイターズ現監督の栗山さんへのアプローチによって大谷翔平像を作り上げているものでした。甲乙つけるようなものではありませんが、個人的には後者の方が読んでいて面白かったなぁ。

ぼくはかれこれ30年来のファイターズファンなのですが、一時期、いやわりと長い期間にわたって野球自体から遠ざかっていました。なぜならファイターズが北海道に本拠地移転してしまい、自分の手元から離れてしまったような寂しさを感じたからです。
そんなぼくも大人になり結婚し子どもも与えられ、その子どもが野球に興味を持ち始め、それにつられるようにぼくも野球に引き戻され、地理的には遠いものの愛着に溢れるファイターズファンを再開したのがちょうど2012年、ダルビッシュがメジャーに渡り栗山体制になった初年度にパ・リーグを制覇した、その年。つまりシーズンを終えた後のドラフト会議にて大谷翔平をファイターズが強行指名した年でした。

野球熱が再加熱され息子と共にファイターズを、ひいては野球熱をヒートアップさせていったこの数年は、まさに大谷翔平とともにあったと言っても過言ではありません。

大谷翔平をひとことで表すならば、ぼくは迷いなく「野球の星の王子様」と表します。
投手と打者との「二刀流」で有名な彼は、プロの世界でも野球漬けの日々を過ごし、稼いだお金にほとんど手を付けず、根っからの「野球小僧」であることも知られた話ですが、何よりも彼の一挙手一投足、佇まい、スタイル、そのすべてが「野球」そのものを体現していると言っても過言ではありません。大谷翔平さえ見れば野球がわかる。そして誰もが彼のプレーに魅了され、野球を観るのが楽しくなる。これは日本において、だけでなく、今やアメリカにおいても同じような評価を得ています。しかもたったの2年で!
ぼく自身も間違いなく大谷翔平の虜になってますし、これから10年で彼によって野球そのものが形を変えるんじゃないか、とさえ思わされます。もちろん最高の形に。

佐々木さんの著作には、そんな大谷翔平がどう作られていったのか、ということが事細かに綴られています。ご両親、ご家族が翔平のことを奔放に、やさしく丁寧に育て、花巻東の佐々木監督が翔平の才能の伸びるままに任せ、その才能を見出した大人たちが翔平にどのような役割を与えれば最も輝くのかを必死に考え、その環境の中で翔平は他の誰よりも魅力的な野球選手となった、ということがよくわかりました。野球界の最高の才能、宝、野球そのものの体現者・大谷翔平は、それこそ他の星からやってきたかのようにこの地球に生を受け、一番そばにいる大人たちによって、それはまるで使命のようにして大切に大切にここまで育てられ、そしてそのすべての使命を背負って野球を体現しているようです。まさに、野球の星の王子様。まるで惑星ベジータから地球を滅ぼすために送られてきたカカロットが崖から落ちて頭部を強打しその使命を忘れてむしろ数々の悪の手から地球を守るようになったのと同じですね(ぜんぜんちがう)。

前述のとおり、佐々木さんのこの著作は大谷翔平がどう活躍したか、というよりも、大谷翔平はどう作られていったか、ということが書かれています。翔平の周囲にいた大人たち、なによりも優しい。そしてその才能をどこまでも尊いものとして大切に大切に、責任をもって、器から器へと移していったんだなぁ、ということがよくわかる作品でした。

大谷翔平の今後の活躍を願う方々には、ぜひともこの本を一度手に取って、この野球の星の王子様がどう育てられていったのかを、数々の愛情に溢れたことばとともに味わっていただきたいな、と思います。

ぼく自身もこの本を読んだからには、今後まちがいなく活躍するであろう大谷翔平の背後に彼の「作り手」たちを感じながら最高の野球を観戦していくであろうと思います。

野球、しかも特定の選手が対象の非常に偏ったテーマではありましたが、よき体験となりました。

佐々木亨「道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔」、星3つです!

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