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1.「吐き気」
電車の中。息ができない。人は多すぎて、空間は少なすぎる。今朝も、どうして生きてるのかな。なぜ目を覚ましたのかな。わからない。わからないのが嫌い。電車も嫌い。毎日毎日ここに乗ると、気持ち悪くなる。他人のせいじゃないと思うけど。私のせい気がする。元カノと会った最終回から、人生は意味がないと感じる。その時から、いつも人々の周りに気分が悪くなる。何を言っても、何をしても、間違ってしまうと感じる。それは彼女が教えてくれたこと。あの元の友達も、同じと考える。あの奴らは全部一緒にする。あいつの一人は、自分で何かできるのかな。そう思わない。一人は私と喧嘩すると、もう一人は同じしなければならないようだ。なんて哀れなことだ。
嫌だなあ。どうやって人生の中でこんな力をこんな人に譲った?どうやって。
自分が嫌い。どうこんなことを起こさせたのか。
彼女の思い出で、目が回りそうになる。
彼女の声、彼女の顔、彼女の微笑み。吐き気がする。もう立たれない、倒れそうになるけど、人々が多すぎて落ちるはずじゃない。
「許してくれ」と言った私も哀れだったね。謝ったけど、駄目だった。自分の間違いがわかるは大切だけど、他人のことがわかるも大切だね。だから、なぜ私だけ人のことを理解できるようにしているか?
なんて哀れなこと。失神になりそう。

2.「愛はなけなし」
彼女は目の前で座っていて、私がないことを眺めている。私、煙草に火をつける。
「さあ、何欲しいの?」私、もう家に帰りたい。今、ここで私は何をしているの?「久しぶりだね。」と言った彼女はコーヒーをゆっくり飲んでいる。その目は美しいのに、その中には恐れが隠れている。人をがっかりさせることの恐れ。残念だなあ。
「うん。」
「ねえ、話したくない?」
「話したくない。」
「じゃあ、どうして会いに来てくれた?」
「別にわからない。」
「家に帰ってもいいよ。」
沈黙。お互いを見ている。「家に帰らない。」
「どうして?」
「君の話を聞きたい。」
「あなたはいつも聞きたいだけね。全然変わらないね。あなたはいつも通りに自分を隠してる。自分を隠すのに飽きないかい?」
「違う。今はもう何も隠していないよ。伝えたかったことはもう言った。他にも、何もない。」
「嘘つき。」
「嘘つき?ウチより、お前は正直でいてよ。あなた、私信頼したことある?私のこと愛したことある?」
「あなた、もう知ってるよ。」
「いや、知らない。」
彼女は私の名前を囁いて。彼女をただ見られない。両方の心の中にあることを知らない。
「ほら、君は答えない。もういいさ。」そして、鞄を集めるし、たばこを出す。「じゃ、行くわよ。元気でいてね。」
離れているところに、振り返りたいのに、絶対しない。愛はなけなしな。

3.「歯車」
知らない天井。知らない布団。知らない男の部屋。この人は私の体の下に寝転んでいる。彼は安らかに眠っている。眠れないのは私の方だ。彼の言葉は蜂蜜のように甘く感じた。甘すぎるかもしれない。でも気持ちよかった。彼は柔らかい指先が体に触って、真珠のような明るい目でみてくれて、ただ嬉しかった。心の中で知らなかった感情が流れ出した。一度も感じたことがない感覚。彼の香り、彼の舌、彼のタッチ、彼の肌、ただ魅惑的だった。いい感じだったね。彼が眠っている間無意識に手をつないでくれる。この布団は冷たいけど、彼の暖かい体に近づく。
私、こんなことが大好き。だけど、「こういうこと、生きてるって意味かい?」と考えるのをやめられない。
そうかもしれない。それだけじゃないかな。目を閉じると、瞼の後ろに彼女の思い出が現れる。彼女の愛したことはだんだん速くなって、繰り返して従ってしまう。その肌、その唇、その目、そのまつげも。彼女の声が蛇のように耳に入る。
「さあ、私のことをまだ忘れられないね。」
いや、離れてよ!
「うーん。彼に触らさせたね。私より、いいのほうが?」
黙れ!私に触らないで!
「ふーん、よくないねえ。さあ、彼に君の秘密を洩らしたの?」
何言ってるんだ? 秘密って?ほっといて!
「君の甘い秘密。さあ、触らせてよ。」
いやあ。触らないでちょうだい。ほっといて!
「ううん。どこにも行かないよ。いつもあなたの中にいるよ。」
違う。あなたは何を探してるの?君は私の中にいない。許せない。
「許せない?許せないのは私の方だ、君を。わかる?」
黙れ!黙れ!黙れ!
「今どうするの?もう一回隠れるの?」
黙れ!黙れ!黙れ!
叫びたい。叫ばなきゃ。叫びたい。叫ばなきゃ。叫びたい。叫ばなきゃ。
体に入っている蛇は口を出る。動けない。動きたい。動けない。動きたい。
天井で歯車が現れる。逃げちゃだめだ。

4.「気持ち悪い」
君が撮った写真。私がもらったプレゼント。このかすかな匂い。一緒に通した道。一緒に行った場所。一緒に飲んだコーヒー。君が眠ったベッド。私達の友達。一緒に食べたもの。君に作った料理。笑顔。聞いた曲。見た映画。お互いに書いたこと。君に書いたこと。一緒に買ったもの。見ていた星空。一緒に過ごした一日。一緒に過ごした夜。君が触った私。君を愛した私。私の好きなもの。君の好きなもの。共有したこと。私達が住んでいる町。私の心に隠している感情。この世界。この空。この二人に触れる風。君が終わらせた世界。全部燃やしたい。燃やしたい。燃やしたい。燃やしたい。
気持ち悪い。

5.「首絞めてくれ」
彼は指先がゆっくり肌に触れてくれる。そう、他人の認識。この目の前にいる男をあまり知らないけど、こんなことをするのが好き。大好き。こんなことをするのは生きているという意味?別にかまわない。まだ息ができる、まだ肢体が動かせる、血がまだ体の中で流れている。この私、まだ人なの?
こうやって、何を探しているの?愛好?愛情?恋愛?
いや、こんなものがありはしない。
満足?愉楽?自己充足?親密?恋慕させる人?本当は、私が誘惑に負けるばかりの人だ。なんて利己的。嫌だなあ。
なんて哀れなことだね。このままで生き続けるかい?この時点で知らない。もう構わない。彼の浅い匂いとぬるい感触の中で自分を失ってしまう。
この男は私に何が望んでいるの?何を求めているの?彼も人間だね。彼も自分の愛し方がある、自分の祈り方、自分の感じ方、自分の息をし方。彼の中でも血が流れている。彼は私の幻想じゃない。彼も私と同時に存在している。たぶん、彼もこんなことの意味を知らないかも。世界は幻想じゃない。
笑顔をした男の目の前で、少しずつ裸になっている私がいる。
「ねえ、」名前を知らない彼が言う「ちょっと好意してもらえる?」
「君なら、すべて。」
「首絞めてくれ。」

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