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こんなことしてていいよ

母の抑うつ状態が続いている。

「認知症になったら、人が変わったようにずっとニコニコしているの」
いつだったかそんなお友達の親御さんの話を聞いたこともあり、たとえ何もわからなくなっても、穏やかに微笑んでいてくれればいいなぁと思っていたが、現実はそうではなかった。もちろんこれからそうなることもあるのかもしれないが。

最近の母は
「お母さん、こんなことしてていいの?」
「お母さん、ここにいていいの?」
と、繰り返し聞いてくる。

そのたびに
「お母さん、寝てていいんだよ」
「お母さん、そこにいていいんだよ」
と繰り返し応える。

時には20分に1回くらいそれが繰り返されるので
たまに変化球で
「こんなことってどんなこと?」
と聞き返したりもする。

すると毎回
「こんなところで何もしないで寝てる」
と返ってくる。

働き者だった母。
5人きょうだいの長女で、父親も早くに亡くしていた。いつも誰かの世話をしていた。
その対象は家族だけに限らなかった。

何にもしないで寝ていたことはなかった。
そんな時代でもあっただろう。

そんな母をみて育った私。

「こんなことしてていいの?」は
もしかしたら私の心の声なのかもしれない。

どこかでいつも
「こんなことしてちゃいけない」って思ってるのかもしれない。

のんびりしてると、あれもしなきゃこれもしなきゃと浮かんだり。
逆に忙しくしてると、もっと休まなくちゃとかリラックスしなきゃとか。

あー、やだやだ。
でも、あるある。身に覚えがある。

だから20分に1回でも、何度でも母に応える。
「何にもしなくていいよ」
「そこで寝てていいよ」

自分にもいってあげる。
何をする時も、何度でもいってあげる。

こんなことしてていいよ。
何にもしなくていいよ。
忙しくしててもいいんだよ。
ここにいていいんだよ。

それでいいんだよ。

何度でもいってあげる。

私がほんとうにそれを受け取れたら、母も変わるかもしれない。

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