【マンガ業界Newsまとめ】ウェブトゥーンから見た日本漫画の帝王「集英社」、KADOKAWA決算発表、WT中国事情 など|2/5-88
マンガ業界ニュースの週1まとめ毎週日曜更新です。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。
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集英社はなぜ日本漫画の帝王なのか?先駆者たちが語るWebtoon業界の課題
昨秋開催されたIMART2022のセッション「早くも危機を迎える日本のウェブトゥーン制作」のまとめ記事となります。
司会に、既に日本においても運営10年を超えるウェブトゥーンニュース専門サイトWebtoonInsightJapan編集長の福井美行氏。
登壇に『俺だけレベルアップ』のREDSEVEN李ヒョンソク氏、HykeComicと協業する作品が好調なフーモア社の芝辻幹也氏、既に長年各社にWebtoon作品を提供し、昨年はTBSとも提携したシャインパートナーズ社の岩本炯沢氏の3人という、実務者トップの方々によるセッションです。
タイトルの通り、Webtoonの話題について実績のある方々の地に足のついた言葉が並んでいますが、同時に日本市場の漫画市場の覇者である集英社の強さを引き合いに、現実的な今後の取組へのサジェスチョンも行われています。
なお、本セッションはIMART2022のアーカイブとして有料公開もされており、以下サイトの「チケット購入はこちら」などより、アーカイブチケットを購入可能です。
また、同サイト内フッターにある協賛企業・団体の関係者は無料で視聴することが可能ですので、社内でお問合せ下さい。それでも協賛視聴の仕方がわからない場合は、IMART運営にお問い合わせください。(私も運営メンバーです)
KADOKAWA 2023年3月期第3四半期決算を発表
KADOKAWAが第3四半期の決算発表をしています。引き続き好調で、ハイライトとして、デジタル部門の成長と、海外事業の引き続く成長を紹介しています。
コミックについても『陰の実力者になりたくて!(8)』、『ダンジョン飯(12)』などあたりが好調とのこと。
今週のWebtoon関連ニュース
毎度おなじみ飯田一史氏による現代ビジネスの記事ですが、今回はbilibili動画新事業室長、金春成氏より日本マンガ/Webtoonなどの中国事情を詳述されてます。
日本から見ても特に大きな市場として期待される中国のエンタメ市場ですが、日中韓のコンテンツ事情も踏まえての詳述は珍しく、貴重な記事になっていると思いますので、そのまま是非ご一読を。
なお、同じ飯田一史氏による「コミチ」サイト上に連載される「ウェブトゥーン制作の最前線」も、『月光彫刻師』のイ・ドギョン氏などによる記事が中編まで公開されています。
LINEマンガはアプリダウンロード累計数が4000万突破とのこと。3000万ダウンロードの発表が2020年9月で、この2年4か月で1000万ダウンロード伸ばしたことになりますね。なお、ピッコマの累計3000万ダウンロード発表は2021年10月です。
そのLINEマンガですが、先に発表した「LINEマンガ インディーズ 報奨金給付プログラム(βテスト)」に伴う、利用促進キャンペーンを2・3月に行うとのこと。
元々の報奨金給付プログラムは、LINEマンガインディーズ上に月間2話以上新規投稿した作品に、成果指標に応じて報奨金をLINE Payで給付するというものですが、今回のキャンペーンでは、Amazonギフトカードで、参加賞として給付するというもののようです。
韓国では、OST(オリジナルサウンドトラック)とWebtoonによるコラボが、かなり普及していますが、LINEマンガでも今回、国内アーティストDISH//とのコラボを発表しています。ボーカル&ギターの北村匠海氏による楽曲「五明後日」を原作として、脚本家の春日康徳氏がWebtoon脚本を再構成し、2月1日から公開とのこと。
曲を原作とする作品と言うことですと、先日NetFlixの「First Love 初恋」を見たのですが、大変すばらしいものでした。なんであそこでナポリタン一緒に食べなかったんでしょうね。それが、感動のラストシーンに繋がったわけですが、しかし食べても良かった気もするんですが。
2022年1月にレーベルとしてスタートしたGIGATOON Studioですが、1周年ということで、その進捗レポートを公開しています。仕込み期もあるとは思うのですが、わずか1年で24作品を発表し、秋には『夫を社会的に抹殺する5つの方法』の映像化も実現とのことで、スピード感、物量、実績ともに充実した1年だったようです。
余談ですが、こういう周年行事をしっかり行うのはなかなか重要で、ジャンプ作品などは連載1周年を迎えるとなんらかキャンペーンを行うなど、打つべき手をしっかり打っています。こうしたことは手堅い積み重ねが積みあがっていくものだと思います。
ドコモの「dブック」もウェブトゥーンに参入です。第1弾26作品発表とのことで、この記事中では、「韓国の制作会社と提携して制作」とあります。
かねて、ウェブトゥーン事業開始を発表していたMUGENUP社ですが、このタイミングでドコモ(dブック)のオリジナル作品群に先行配信することで、作品の初出しとなりました。参画しています。
MUGENUP社はゲーム向けのイラスト制作・プロデュースの有力企業として、フーモア社、サーチフィールド社(ナンバーナイン社の関連会社と所縁のある企業)と並んで実績のある会社です。大手のゲームイラスト制作企業の雄であった3社が、現在は形は変えどそれぞれWebtoonに揃い踏みという見方も出来る動きになっています。
こちらの記述でご指摘がありまして、「初出し」の話題と、「No9社の出自」の話題について、正確ではなかったようです。訂正してお詫びいたします。申し訳ありません。
クリエイターへの報酬などを公開することで話題となったこともあるソラジマ社ですが、今回はWebtoonの企画書の内容を公開しています。毎回こうした動き方が斬新で、驚かされますね。
こうすることで、ソラジマ社の中や外部から持ち込まれる企画書のクオリティが上がり、より良い作品が作りやすくなるというメリットがあるというところでしょうか。もちろん、他社にノウハウを盗まれることもあるとは思うのですが、恐らくそこに頓着してないのでこうしたオープンソース (open source)的な動きを積極的に行えているのだと思います。新しいですよね。
最近は、Webtoon関連の企業に良くうかがっているのですが、ともかくどこでもソラジマさんは話題になっていますね。こういう所なんだと思います。
国内News
アプリから開始し、Webもサポート的に運用していた「サイコミ」ですが、Web版をリニューアルとのこと。同編集部葛西編集長が、記事中で以下のように回答しています。
この後述で、今回の狙いを語っています。
現在、出版各社などの編集部によるアプリ運用は多くありますが、Webとアプリを同じくらいの強度で運用しているところは、これまでは「ジャンプ+」のみでした。
こうできれば良いのは各社わかってはいるのですが、実際にアプリとWebを同時に連動して運用しようとすると、莫大なリソースがかかります。具体的には、この両面作戦はお金と人とノウハウ全てが膨大に必要になるため、両方一度にやりましょうとはおいそれとは言えないところがあります。
このあたり、サイバーエージェントグループが運営するサイコミならではの力技とも言えるのですが、好調なヤンマガWebなど、Web施策に注力する動きは、今年は続いていくと思われます。なぜそう言えるかと言うと、私も現在沢山のWeb施策を各方面で仕込んでいるからなのですが。
電子コミックのキャンペーンということだけであれば、それほど珍しいことではないのですが、このキャンペーンは、ぶんか社、コミックストック社、コアミックス社の3社が合同で企画している取組ですね。テーマは作品合わせで「ヤミ電書」とか。
こうした取組は、出版社(特に大手)が単独か、電子書店側からの提案か、作品の映像展開など判り易いきっかけかと、ある程度型は決まってきているかなと思うのですが、この取組では出版社側が作品タイプを寄せる企画にして、複数社でキャンペーン作品を決めているようですね。私は初見ですが、もしかしたら初めてでは無いやもですが、珍しいかなと思いました。
C-stationというブランディングで、自社IPを活用した広告宣伝マンガ活用の取組をしている講談社ですが、小学館とも同様のコラボをしているMinto社と「SNS広告×人気漫画・アニメコラボパッケージ」という取組を開始しています。
Minto社は、前身のwwwaap社時代から、主にSNSに強い漫画を中心とした広告マンガによる大型プロモーションを多く手掛けてきました。広告マンガの中でもSNSプロモーションに強いMinto社が、強いIPを持つ講談社のサポートをすることにより、両社の宣伝マンガに関する事業はより強化されるという枠組みと思います。
両社のコミック参入は既報ですし、特に光文社のBLについては新規参入と言うには既に相当数の作品を出していて十分な実績がある状態ではあるとは思うのですが、両社のコミック事業には光文社の文芸起点の原作力、文春の社会への切り込みが特徴だという記事ですね。
光文社に関しては、既に文芸で評価の高い原作の作品を出していることも事実なのですが、新しい形として『煙たい話』のような、作家性の高い作品もヒットの兆しを見せたりしているかなとは思います。
文春については、本体サイトの月間4億PVのうち10%が漫画ということは、4000万PV近くマンガが見られているということで、それは凄いですね。一方で、電子コミック好況の中で多く売れている作品は、やはり創作系の作品が中心なので、描きおろしが中心の社会問題系が実売でどこまで数値を伸ばしていくかと言うあたりが重要なのかなと。(あるいはその逆?)
ここに出ている各施設や取組の方々は、それぞれの持ち場で全力を尽くしてらっしゃる方々と思うのですが、この分野は国の取組となるとトーンダウンしてしまいますね。先年、メディア芸術祭が唐突に終了した際にも、ある種の疑念のようなものが出ていたように思います。
国策の場合、継続的に取り組む人の問題、予算の継続性の問題、そしてなにより官民連携しての戦略性とその浸透など、やることを考える前に、体制として「何か良いことが出来そう」な座組が、現状からはイメージできにくいかなと。クールジャパン関連、惨憺たるものですからね。。。
日本漫画家協会に、赤松健さん以降現役世代に近い漫画家が入っていった結果、森川ジョージさんのような方が都議に陳情するなど、この方面の動きも様変わりしてきたように思います。
いや、議員であろうが誰であろうが、『あしたのジョー』のちばてつや先生、『はじめの一歩』の森川ジョージ先生が陳情に来たら、そりゃ話を聞きますよね。すごいことです。
こうした記事が増えて良いことなのですが、個人的には、それこそ東京都の『不健全指定図書』まわりの問題に長い間こつこつ取り組んだり発信などしている、稀見理都さんや、南條ななみさんなど、地道に続けてらっしゃる方々も取材して欲しいなぁと思ったりもします。
Amazia社は、海外向けサービスとして「Manga Flip」でテストマーケティングしていたものを、2/1から「MANGA BANG!」としてリニューアル、課金モデルも導入していくとのこと。
海外市場向けマンガプラットフォームComikeyで、英語圏など向けのサービスを提供中の同社ですが、今回はポルトガル語に対応して、専用サイトをリリースするとのこと。ブラジル向け対応なのですね。
こうして英語圏以外へのサービスが増えていくのも、海賊版のことや、市場を増やしていくことを考えると重要に思えますね。
面白いのが、韓国Webtoonをサイマル配信するとのこと。日本企業が韓国語→ポルトガル語のサイマルというのは、世にいう三国間貿易みたいな感じでグローバルな動きですね。翻訳オペレーションとしては、一度英語にしてまたポル語にするみたいな流れなんでしょうか。いや、英語作品を預かって翻訳するのかもですね。
海外News
一つ上の記事で、ポルトガル語展開を話題にしていますが、こちらは北米展開中の韓国のWebtoonプラットフォームMantaが、スペイン語展開するという話題です。
北米を中心とする目線で世界を見ると、ご近所メキシコ以南の中南米にはスペイン語話者が数億人おり、なんなら米国南部はそこらにスペイン語を話す人が沢山歩いていて、普通にスペイン語で話しかけられたりするくらい、英語圏に近接する言語で、人口も多いです。
この中南米圏は、アメリカで流行したものが、メキシコのテレビ放送を通じて南下して浸透していくなど、文化圏としても近いため、このスペイン語圏に展開していく流れは自然かなと思います。
ただ、Link-U社の動きもわからないでもなく、ブラジルは一国で2億人の巨大な人口を抱え、日系人が多く住むことから日本文化との親和性も高いため、日本から見た場合に中南米で集中する国をひとつ選ぶならブラジル=ポルトガル語ということにもなるんですよね。
韓国でウェブトゥーン番組「ウェブトゥーンシンガー」というものが始まるそうなのですが、要はこれ「ウェブトゥーンOSTメイキングショー」ということのようで、オーディション番組のように、曲が出来上がっていく中に盛り上がりどころがあるもののようです。面白いですねぇ。
HYBEによるBTSのWebtoonから時は進み、かなりノウハウが蓄積されてきているということなのかなと。
韓国のWebtoonクリエイター労働問題が、ついに休載権にまで発展したとのこと。言い方を変えれば漫画家の有休制度ですよね。
こう、Webtoon版の「コミPO!」的なもののようです。サンプル作品のビニール袋の使い方が衝撃的なんですが、これも素材なんでしょうか。
AIイラスト・画像生成関連
今週はちょっと記事が多いので、AI関連は記事紹介だけとさせてください。どれもなかなかのニュースと思うのですが、みんなタイトルが判り易いので、ご興味のあるものをどうぞ。とにかく、マンガもそうですが、アニメもAI化が進む中で、実際の作品への反映も増え始めていますね。
記事のみ紹介
告知関連
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