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【マンガ業界Newsまとめ】シーモア20周年で初の売上公開「812億円」・筆者初単著「漫画ビジネス」9/20発売 など|9/8-167

マンガ業界ニュースの週1まとめです。
マンガ・アニメの業界カンファレンスIMARTを主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関連のニュースを、ビジネス系を中心に、短時間でチェックしていただけるようにまとめています。

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『コミックシーモア』売上高を初公表、812億円で国内電子書籍業者1位に

NTTソルマーレのプレスリリース

他媒体ニュース

NTTソルマーレが、コミックスシーモア20周年で、様々な情報を発表しています。

まず、ユーザー調査の中では、既存ユーザーはほぼ毎日(週5日以上)使用していることや、同サービス内ではWebtoonより横読みの版面マンガのほうが支持されていることなどが発表されています。

そして、少し珍しいのが作品を卸す出版社側の調査です。
基本的に、プラットフォーム(以降PF)としての出版社から見た使用感について、売上アップや読者獲得などについて、ポジティブな反応がほとんどという結果なのですが、「先行配信」が売上に直結していることを発表するなど、踏み込んだ内容になっています。

メディアを呼んでの発表の中に2024年3月期売上が「812億円」と発表されています。早期の1000億円突破をも目標にしているとのこと。

シーモアがPFとしての売上を発表するのは初めてのことです。これには、業界がどよめいたのではないでしょうか。最高日販9億円以上ということもあるなど、さすがの存在感です。

これからの業界の発展のためにも、こうした数字を発表することについては、リサーチを事業とするMANGA総研の所長として大変歓迎したいところです。今回の発表にはご苦労もあったと思うのですが、素晴らしいことと思いました。

ほか、データを活用しての販売支援や英語圏に進出しているMANGA Plazaについてなどの記事になっています。これらの発表の動画は無いようですね。


筆者初単著「漫画ビジネス」予約開始(9/20発売)<PR>

*: 過去最高に宣伝です。恐縮です。

9/20に筆者発の単著「漫画ビジネス」が販売となり、予約受付中です。

版元クロスメディア・パブリッシングの「魚ビジネス」以降「」「野菜」「ホテル」とつづく、〇〇ビジネスシリーズとして「漫画ビジネス」を出させていただきました。

マンガ(エンタメ)業界の中で、ここ数年で新たにこの業界に入ってきた人(もしくは、参入してきた企業や、就活・新規参入など、業界に興味のある方々)を想定読者として書いています。

思えばここ数年「マンガの新規事業を開始したい」という御相談を、本当に何度もいただきました。今回も、ビジネス出版社で編集者をしている元同僚から相談を受けたわけですが、何度も似たことを話している身ですので、どうせなら本にまとめてみるのはどうか?と提案したところ、「〇〇ビジネスシリーズ」として出版する運びとなりました。

この業界に飛び込んで15年、最初は本当に何もわからなかったところから、今に至るまでに様々な方に学ばさせていただいたことを、凝縮してまとめられるように努めました。

そうした経緯から、マンガ業界をビジネス目線でまとめていますが、むしろ業界の中の人からすると「知ってる」「そういう見方はしない」など沢山のご意見あるかと思います。

ここは「そういう見方もあるのね」くらいで笑っていただければと思います。そもそも、個々多様な見方が存在するのが、マンガ業界の良い所であり、必須の要素とも書いておりまして、私もそのうちの一つの見方を持つもの、と、みていただければと思っています。

インタビューをさせてもらった、石橋和章さん、ぬこー様ちゃん、名前の書けないご協力者の皆様、そして今まで私に様々なことを教えてくださったみなさま、全ての方々に感謝いたします。

「漫画ビジネス」表紙

そしてこの表紙のイラスト、すがやみつる先生に描いていただいた「ムーンサルト漫画家さん」です。一生の思い出となります。本当にありがとうございます。

すがやみつる先生の最近のご著書は以下。2冊目は私のと同時発売です。

最後に、タイトルが「漫画ビジネス」なのに、他はほぼ「マンガ」で通しており、いきなり巨大な表記ゆれをしておりますが、シリーズタイトルに合せておりまして、意図的なのであります。読み手に編集者さんが多そうなのに 、そんな中そうした気持ち悪いツッコミどころがママあって大変申し訳なく思っております。ひらにご容赦ください。


国内News

先週に引き続いての、不破雷蔵さんのシリーズ、女性漫画誌と小学生向け雑誌です。

女性漫画誌は大きな変動は無く「BeLove」のトップ変わらず。
デジタルPFの女性向では、小規模CPによるヒットが連発しており、今ジャンル別だと一番競争が厳しい帯域かなとも思います。
この1年で、集英社と小学館がかなりデジタルシフトしましたが、その影響が今後どうなるかですね。

小学生シリーズは、小学1年生のみとなりました。ここはYoutubeなど、子どもにリーチする媒体も大きく変わってきています。紙の媒体の次の役割の見極めが必要なのでしょうね。


LINE Digital Frontier(LDF)株式会社を存続会社として、株式会社イーブックイニシアティブジャパン(ebj)が吸収合併されました。

これにより、2000年の創業以来、様々な意味で日本の電子書籍・電子コミックをけん引してきたebjの名前が消えることになります。ただ、LDFの代表には、ebjの代表で会った高橋将峰氏が就いており、割と時間をかけてサービス面でも融合策が取られてきたようにも見え、業務への影響は軽微そうです。


先週発表された集英社の決算詳報です。

記事より https://www.bunkanews.jp/article/392006/

全体としては、減収増益決算でした。

前期では『SLAM DUNK』の映画大ヒットなどが大きかったことに対して、今期でも『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が気を吐いたとのこと。また、デジタル、版権などの事業収入の伸びが売上・利益にも貢献しているようですね。

『ONE PIECE』108巻が320万部、『呪術廻戦』26巻が158万部(2刷)、『SPY×FAMILY』13巻が140万部など、やはり強いです。

相賀信宏監査役(非常勤)は退任して顧問に就いたとのこと。


講談社人事。 異動のところにコミック関係の人が結構名前として出てますが、同じ役割のまま昇進したという人が多いかなーという印象です。

クリエイターズラボの鈴木綾一さんが「グローバル統括室担当部長」という加役があるのと、ライツからキングレコードに出向していた松下卓也さんが、ライツに戻りつつグローバルも掌握される感じでしょうか。個人的に、他にも最近お会いしてる方が多く、リアリティを感じます。


Webtoonスタジオ「LOCKER ROOM」の1LDKがNTTドコモ系企業と共同レーベル立上げとのこと。これはWebtoonではなく、コミックということでしょうか。


長年違法アップロード対策にクリエイターサポート施策として取り組んで来たDLSiteを運営するエイシス社の取組レポートです。
DMCA申請400万超、違法Uploadへの削除要請300万超と、膨大なことになっていますね。


Kindleインディーズからの商業化ですね。新しい流れです。GOT機動力高いですね。


三木一馬さんによる、小説の苦境を訴える記事と、それに対するカウンターとしての、小説大賞のnoteです。

アニメ化を目指す大賞の運営には、アニメ製作会社ツインエンジンが入り、出版社実業之日本社という布陣のようです。これも強そうな座組ですね。


現在の出版流通の事情について、永江さんの記事や中の方のnote、篠田さんのかなり力の入った記事が続きます。やはり、紙流通というか書店の変化については、CCCと紀伊國屋が中心となっていきそうですね。


日本全体でのサイバー攻撃リスクが31兆円規模とのこと。その中で、残念ながら一般紙においてもKADOKAWAの事例が日本最大というような代表例になってしまっているようです。


石橋さんのコラムで、今週特に面白かったものと、海賊版のお話です。色々煮詰まってきている感じがしますねぇ。


これもまた、とんでもない話です。


Webtoon関連

今度はLOCKER ROOMのWebtoonのほうで、東宝との連携とのこと。朝岡さん、座組作りがすごいですね。


海外News

*: 海外ニュースを紹介します。自動翻訳などご利用ください。

タイトル訳:オレンジ社、米国とカナダで電子書籍ストアサービス「emaqi」を開始、集英社との提携を発表

タイトル訳:オレンジ社、北米向け新デジタルマンガストア「emaqi」をオープン

先日、30億円の調達とマンガのプレスリリースで話題となったオレンジ社ですが、9/3に米英語圏で電子書籍ストア「emaqi」を開始。開始時点で13社約6,000冊のマンガを掲載、今後毎週少なくとも1冊は英語版未出版の新タイトルを追加する予定とのこと。新たに少年画報社、双葉社、秋田書店、Kodansha USA Publishingと取引を開始したとのこと。

また、先週話題になった、MANGA Plus by SHUEISHAの読切提供翻訳も、同社が英訳を行うとのこと。


libroさんによる北米エンタメニュースまとめです。
この中で、なにせ個人的にインパクトがあったのが以下です。

タイトル訳:フロリダ学区、BL漫画『佐々木と宮野』を「不適切な」関係を描写したとして禁止

政治的、かつ思想的なお話になります。ご了承ください。
米国フロリダの図書館で、日本BLマンガの禁止図書リストに入りました。
同様の動きで日本のマンガが影響を受けるのは初めてです。

現在、大統領選へ向けて様々なことが起きている米国ですが、その中に一方の陣営にLGBTQへの過激思想があり、そこからBLを禁書にしようという動きに繋がった模様です。最近、米国製の書籍に対してそのような動きがあったのですが、今回、恐らく表面化した中では初めて、日本のBLコミックがその対象となったというものです。


タイトル訳:ウェブトゥーン大ヒット作家ジュネパーがロマンスファンタジー大作でグラフィックノベルデビュー

米国発のWebtoonのスマッシュヒットとのこと。アメコミとの融合を感じるテイストですね。


NAVER WEBTOONの韓国への経済効果が150か国以上のサービスで4兆ウォン(約4000億円)とのこと。


タイトル訳:すべての作家に呼びかけ:Wattpad のオリジナル プログラムが企画を募集中

NAVER系の米国小説投稿サイトWattpadは、著者から編集チームにストーリーやコンセプトを投げかけることにより、有料コンテンツプログラムに参加可能。最大で5000ドルの前払い金出るとのこと。


タイトル訳:ウェブトゥーン、海賊版サイトの閉鎖を目指す
Cloudflareに召喚状を発行

タイトル訳:最大の違法ウェブトゥーン共有サイト「アギトゥーン」が政府の操作で閉鎖

1つ目が米国テキサス、2つ目が韓国内でのNAVERによる海賊版対策です。


映像ですが、マンガでも海賊版サイトが沢山あると言われるベトナムで、大型摘発がありました。今回は、米国からの働きかけがあったようですね。


そのベトナムでは、韓国Webtoon展があるようです。歴史的に、ベトナムと韓国も関係性が深く、韓国から見た大きな輸出先となっています。Webtoonの海賊版対策の動きも強まりそうですね。


AI・画像生成関連

直接的なAIの記事ではありませんが、体力的にネームのみの制作に留めるようになった高橋陽一さんや、集団制作とは言え屋台骨のさいとうたかお先生を失くした、さいとうプロなど、AIに対しての切実な期待はあるんですよね。


最早、作品制作にAIを使うとなると最前線を走っているのではないかという、うめ・小沢高広さんによるCDEC(ゲーム業界のプログラマー向け最大の業界イベント)でのプレゼンです。

キャラデの複数案出しや背景作画など、かなり資料も踏み込んでますね。


なるほど、こういう観点


学習データまわりの課題解決具合次第でしょうか。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等


記事のみ紹介

タイトル訳:「私は漫画本屋で唯一の女の子でした​​」

タイトル訳:デッドプールのコミックデビュー作のオリジナルアートワークは、750万ドルの希望価格で記録破りになる可能性がある。


告知関連

ちょうどこの週末に、NPO法人HON.jpによるカンファレンスが行われて、KADOKAWAの海外施策についての説明がされているのですが、その中でも連携が強いと記事にもあるシーモア×KADOKAWAの取組にも一部触れられていました。トップのシーモア記事に追加してご参考まで。

上の動画は、私がアドバイザーをしているHON.jpのカンファレンス「HON‐CF2024」の中での発表です。スポンサードセッションなので無料で見れるようになっています。

以下から、カンファレンスの内容や有料セッションのご案内は以下。

個人的に「小説投稿サイトのいま」「Amazonセルフ出版の活用方法」などおすすめです。


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