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【マンガ業界Newsまとめ】めちゃコミM&Aソニー勢他2社応札、オレンジAI翻訳約30億円調達、各社決算発表 など|5/12-152

マンガ業界ニュースの週1まとめです。
IMARTを主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関係のニュースを、短時間でチェックしていただけるようにまとめます。

先週のGW週は更新無しで、今週は2週分のニュースまとめです。
大きな動きや決算期も重なり、いつもより少々記事が多くなっております。

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ソニー勢など電子漫画「めちゃコミ」運営会社の買収検討-関係者

今週、界隈でかなり話題になったM&Aのニュースです。

まず最初に、この記事はめちゃコミ運営企業のアムタス社の親会社インフォコム社を、ソニーが買収と決まったと言う記事ではなく、
 ・ソニーグループ(と、投資ファンドインテグラル)
 ・ブラックストーン(投資ファンド)
 ・KKR(投資ファンド)
この3つの陣営が、帝人グループ企業であるインフォコム社買収に応札するというものです。そのインフォコム社の傘下に、めちゃコミを運営するアムタス社があり、同社の主力事業になっています。

各社がコメントを控えている状況から、なんらかの思惑がある観測気球的記事と思われます。金融誌ブルームバーグでは、時々こういうリーク記事が出ていて、水面下での鍔迫り合いの片りんを垣間見せます。逆に言うと、これが出るということは、この時点では決まってないのではないかなと。

ここからは、あくまで一般論として分析を述べます。

まず、現在日本のエンタメ市場は国内市況が好況で、今後の海外へのIP輸出と言う観点でも成長性が大きく期待されています。

こうした成長期待分野には必然的に投資マネーが集まります。

今度は「国内の電子コミック市場」だけで見ると、ここ10年は20~30%成長だったものが、ここ2年ほどは一桁%に成長が落ち着いて来ています。10年ほど日本の漫画市場の底上げをけん引した電子コミックですが、「国内」においては成長も鈍化し、踊り場となるやもしれません。

このタイミングは「国内の電子コミックプラットフォーム事業」について言うと、M&A市場では最も売却益を見込める可能性があります。所謂「売り時」のタイミングが今なのです。

さて、その国内の電子コミックは、大手の電子コミック(書籍)プラットフォーム5社が、市場を寡占しています。

1, amazon kindle
2, ピッコマ
3, LINEマンガ
4, コミックシーモア
5, めちゃコミ  (順不同、売上規模とは関連せず)

このうち、1ー4は各運営企業の事業注力分野や生い立ちから、電子コミック事業を売却することは考えにくいです。

一方、めちゃコミをグループ傘下に収める帝人は、総合化学メーカーで客筋はB2Bです。この中で唯一、事業グループの本業から、この電子コミック事業が外れる企業であり、記事には「非注力事業の選定・撤退」を経営戦略として打ち出しているともあります。

つまり、電子コミックプラットフォームでこの規模のM&Aはこれが最初で最後という可能性が高いのです。

親会社の本業外にいるグループ企業は、大きな成長が将来に見込まれない場合、グループ内の資金投入の優先順位を下げられがちです。逆に、売却先でシナジーや大きな投資を受けられることが十分考えられ、新たな事業に挑戦しやすくなるという、M&Aのメリットがあります。つまり、売却されても悪いことばかりでは無いのです。

ここまで、あくまで一般論として、こうした見方があります。
現場の気持ちの問題とか、過去の失敗事例とかもありますけども。

さて、
買収に名乗りを上げている企業群の中で、ソニーグループはCrunchRollやブックリスタなどを抱え、事業シナジーが直接的にありそうです。
他の外資系企業も、エンタメへの投資に近年積極的で、買収した場合はむしろ大きな資金投下をして事業を強化しようとするでしょう。ことによると、未曽有の規模感の資金がめちゃコミに投下される可能性があります。

現在のマンガや近接するアニメの市場で考えると、
・海外向けのマンガ・アニメ市場
・その海外に進出するための基礎になるIPとしての原作開発
・海外へ輸出が期待されるWebtoon
このあたりが今後成長を期待されています。

どのグループが買収したとしても、既に海外進出に橋頭保を作ったり、自社IPを制作する体制の基礎があるめちゃコミに対して、とても大きな投資をする可能性があります。

生身の漫画家とともに作品を作り、売っていくということは、お金だけがあれば出来るというような単純な生業ではありませんので、マンガにノウハウが無い企業が買収した場合、一筋縄ではいきません。

ですが、ちょうど10年前頃から多くのIT企業がこの業界に進出し、様々なことがありながら、約10年でヒット作品を映像化するなどして結果を出しています。この練度向上の過程が、新たに参入する企業の先鞭になることは、考えられるやもしれません。学ぶことさえ出来れば、、、ですね。


オレンジ、総額29.2億円のプレシリーズA資金調達を実施

AI翻訳のベンチャー企業オレンジ社が、小学館を筆頭に他9社のVCから29.2億円の資金を調達しました。

色々興味深いのですが、論点をまとめると、
・日本のマンガはおよそ70万点あり、そのうち英訳されているものは1.4万ほど。その約2%しか英訳されていない
・マンガの英訳は難しく、スピードが上げにくいため、ヒットが見込める厳選作品のみを限られた人材で英訳するから
・オレンジ社は、翻訳工程を大幅に省力化することで、月間500冊を翻訳できる体制を構築、5年後までに5万冊翻訳する

と掲げています。
日本漫画の海外展開が、正にこれからというタイミングで、この事業の将来性がとても大きいと感じられますが、更に興味深い点が2つあります。

一点目は、実績の無いベンチャーの最初の資金調達が、30億円規模であることです。

今から20年ほど前、超大手企業が、巨額な投資をひっさげマンガのデジタル事業に進出するも、業界のコンセンサスを全く取れず、作品が調達できずに大爆死した事案がありました。

以来約20年間、DXの波の中、進出するも雲散霧消した事業から、現在も存在感を放つ各社のように、強かに根を張った企業まで、明暗様々な事例があります。

その中でも、実績の無いベンチャー企業が、業界の雄「小学館」の出資を含み、いきなり30億円という大規模な調達からスタートするのは前代未聞です。オレンジ社の創業は2021年、それ以来相当な仕込み、準備があってのことなのでしょう。どんな準備だったのかは、これから現われて来るのではないでしょうか。

もう一点は、プレスリリース内容の肝の説明がマンガで行われていることです。

マンガは『ねこおじ』の作者やじまさん作で、マンガとしても面白いのですが、私の目で見てビジネスプレゼンの出来としてもかなり良いと思いました。

象徴的なのが、このマンガが無い日経新聞の記事に対するリアクションは、反AI系や、プロの翻訳者さんたちからかなり批判的な内容となっているのですが、マンガの方に対してはポジティブな反応のほうが多いのですね。

マンガの翻訳が本来とても難しいこと、これをプロの翻訳者に十分な支払いをして丁寧に行うべきことは、出資している小学館はじめ熟知しているところだと思います。そうした過去の学びがある中で、オレンジ社が今後どういった道行きをとり、結果を残すか?というところかなと思います。


KADOKAWAはじめ、各社決算

GW明けで、ちょうど3月決算組の発表多数です。

KADOKAWA通期決算 アニメ・映像は過去最高業績、配信・ライセンスが好調

決算資料は、こちら

KADOKAWAが2024年3月期決算を発表、売上高 2,581億円(1.0%増)、営業利益 184億円(28.8%減)とのこと。前2期にゲーム「エルデンリング」の大ヒットで大きな利益を出していた影響で営業利益以下での減少が見られますが、売上増で好調を維持しています。

今回の決算資料で面白かったのがこちら、決算資料P41のアニメ・出版に跨るIP別の売上トップ10です。

KADOKAWA2024年3月期決算資料 P41より

ここから、例えば以下のようなことが見てとれます。

・1位の『推しの子』(原作集英社)はアニメのみで断トツの収益
・それ以外は自社IP
・4位のダン飯、8位の無職転生は小説・漫画の割合高い
・SAOは映像無しでも上位に入る。権利収入は、ゲームや遊技機などか
・権利収入が割合低いのは、ライセンスフィーのみの合算か。IPが出す純粋な売上は、外部のゲーム、グッズ、遊技機売上など合算が必要 など

この辺りの可視化は語り尽くせぬほど興味深いところです。
業界全体にこの流れが広がれば、IPというものの身長・体重の比較がなり、そこからの議論や、将来動向を占うことなど、様々なことが出来そうです。

ネットの反応も活発でした。「数字の見える化」が起きると議論が活発化しますね。

他にもKADOKAWAは、5社目のアニメスタジオ立上げ、アナログゲーム会社の子会社化などアクティブです。


アルファポリス

決算資料への直接リンクは、こちら。

7期連続増収で売上100億円突破。刊行点数も720→764と伸ばし、この期でアニメ化2作品、次期以降に6作品のアニメ化を控えて拡大中とのこと。配当も開始したとのこと。


インフォコム(めちゃコミ)

先にM&Aの話題を出しためちゃコミのインフォコムも好調です。
だから売却はもったいないのでは?という見方もありますが、逆に現在好調であるからこそ、高値がつくということもあります。


バンダイナムコホールディングス

バンナムは1兆強と売上増を出しつつ、KADOKAWA同様エルデンリング効果で利益を下げています。また、決算資料より以下のようなデータが出ています。

バンダイナムコホールディングス 2024年3月期決算 決算単身補足資料P2より

『DRAGON BALL』が1406億円、『ワンピース』が1121億円と、大きな売上を上げています。1タイトルの売上が、大手出版社1社分くらいの規模感ですね。

ともにゲームが順調で、『ワンピース』は今年トレーディングカードが売上を押し上げたようです。どうでも良いですが「タイトルのローマ字表記とカタカナ表記逆じゃね?」と思ったり。


ゲオホールディングス

決算資料より以下

ゲオホールディングス 2024年3月期決算資料P41 より

DLSite、comipoなどが含まれるデジタルコンテンツ事業の売上が450億円→526億円にアップとのこと。これがそのまま同サービスの売上では無いようですが、好調さはうかがえます。


国内News

季刊化した「出版指標」(旧出版月報)により、出版市場におけるコミックの市場占有率や、「雑誌扱いコミックス」など、なかなか説明の難しい内容の内訳などが詳説されています。ちなみに、いわゆる普通の紙の漫画単行本は、だいたい「雑誌扱いコミックス」です。詳しくは、この記事など。


カドコミ(旧コミックウォーカー)のアプリ、事前登録開始。


竹書房の女性向けレーベル、コミックシーモアで創刊とのこと。


「ねとらぼ」「アニメ!アニメ!」などのメディアを運営するイード社が、安全に無料(最安値)で正規のコミック等を読める情報を提供するサイトを開始。

「エンタメフリーBB」内の記事より
https://www.rbbtoday.com/entertainment/kingdom-mangafree/

「全巻無料は無い」と示しながら、デジタル、紙の両面で、最安値を示すという、なかなかユニークな取組です。こう見ると紙レンタル安いんですね。啓蒙的な意味で、海賊版対策も担う気満々ですね。


クレカ決済問題ですが、エンタメではなく、金融や決済方面に詳しいライターさんによる詳しい解説記事で、とても良くまとまっています。

これの派生というか源流で、アメリカでは禁書的な動きもあるとか。


AnimeJapanとJETROの商談会の取組。69社参加とのこと。


京都駅八坂口(新幹線側)のアバンティビルが、ワンフロアまるまるマンガアニメエリア拡張とのこと。


「メディア芸術ナショナルセンター(仮称)」、5年以内の実現に向けて提言とのこと。


ベトナム側も海賊版対策に関心持ってくれていて、良い形ですね。政府与党側にマンガ業界から議員が出た、功の部分だと思います。


「海外都市から見た日本のブランドイメージ調査」
こちらも、興味深い内容でした。調査レポート直接リンクは、こちら。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

CrunchRollでアニメが配信されて勢いづく「俺レベ」ですが、収益面での本丸とも目されるゲーム「ARISE」が、DL数好調とのこと。

国内では、Webtoon版が、Link-Uのグループ会社による取次で、独占だったピッコマ以外のLINEマンガ等にも配信開始とのこと。


Libalentとテラーノベルのパートナーシップ契約に基づく第一弾の作品とのこと


元comicoの花宮氏、Contents Lab. Blue Tokyoの共同代表に就任とのこと。


Minto中川氏による、業界キーパーソンインタビュー、今回はLINEマンガの森取締役です。以下のくだりなど、面白い問答がコンパクトにまとまっています。

中川: ちなみに、作品が売れることで日本のWebtoon業界が盛り上がる、という流れを作るために、意図的に国産の作品を推していこうというのがあったのでしょうか?
森: どこで作られているかに関わらず、独占・先行作品は積極的にユーザーに向けた施策を行なっています。どちらかというと、皆さんが作る国産Webtoon作品が、「LINEマンガ」のユーザーに合うものが増えてきているので、自然にそうなっているという感じですね。

記事より https://japan.cnet.com/article/35218614/


海外News

*: ここから外国語の記事も紹介します。自動翻訳等ご利用ください。

タイトル訳:ネイバー第1四半期純利益、主要事業の成長で1,171.9%急上昇

NAVERの1Q決算、前年比が営利で3倍、純利で10倍とのこと。
内容として
「ウェブトゥーンプラットフォーム上での日本円取引は24%増加」
とあり、LINEマンガの好調さが影響を与えているようです。


韓国版AnimeJapan的なものになりましょうかね。アワード受賞式も入れるとのこと。


タイトル訳:インドネシアのおすすめウェブトゥーン、ベストコミック、マンガ 12 冊

インドネシアの国産Webtoon盛り上がってるみたいですね。


タイトル訳:アニメ、ウェブトゥーンの海賊版がブラジルの大規模捜査の標的に

ブラジルで大捕り物が行われそうですね。


タイトル訳:海賊版サイトの所有者に自首を要求、情報提供者は5桁の報酬を受け取る

通報報奨金制度ですか、面白い取組ですね。


コミコン、オランダ・ブリュッセルの様子です。OGPに真剣佑氏の顔も見えますね。私個人的にこのキャスティング大当たりだと思うんですよね。「千葉一族の殺陣の伝統」みたいなコンテキストが大変好みです。


AI・画像生成関連

先日話題になった「ピュアモデルAI」について、提供企業エンドルフィン社による説明記事が2つ出ていました。

ともに、当初のリリースより詳しく内容の説明をしています。
特に強調されているのが「数十億データセットの教育をしない」という部分で、これが実際なのであれば、現在議論されている部分はクリアしているように思えます。


どうでしょうか。中国のアプリケーションで、例とされる作品が「原神」(著作社が二次創作を推奨)なので、日本に入るルートとしては、かなりマズイ形かなとも。


漫画家の樋口紀信さんのLoRAの件、経緯がまとまっています。


機能としては「ネーム」を作ろうとしてますけども。


これは音声の問題ですが、こちらも大変ですよね。


今週は難しい話題が多かったですが、本のレコメンドを「ダ・ヴィンチさん」がしてくれるって、良い名前ですよね。知的で。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

次来る、募集期間開始です。まずは例年通り作品エントリーから。

過去にピッコマ上でヒットした作品のCPということで『静ドン』『かんかん橋』など、掘り起こし系の作品も目立ち、良いですね。


記事のみ紹介


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菊池健
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