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【マンガ業界Newsまとめ】ジャンプTOON始動!・めちゃコミ買収企業確定?・『セクシー田中さん』日本テレビ調査報告 など|6/2-155

マンガ業界ニュースの週1まとめです。
マンガ・アニメの業界カンファレンスIMARTを主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関連のニュースを、ビジネス系を中心に、短時間でチェックしていただけるようにまとめています。

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ジャンプの縦読みマンガアプリ「ジャンプTOON」登場 まずは28作品配信 “タテ専用”の投稿サービスも

5/29にジャンプTOONがスタートしました。
同時に、縦専用の投稿サービス「ジャンプTOON NEXT」もスタートし、「第2回 ジャンプTOON AWARD」も募集開始です。

初動の掲載作品数は28作品、うち『ハイキュー』『ギャグマンガ日和』『金魚妻』など、既存漫画の縦スクロールカラー化があり、他の25作品では、有力作家を据えるなどしたオリジナル連載を用意したとのこと。

「ジャンプTOON」統括編集長・浅田貴典氏は集英社プレスリリース内の創刊コメントを以下のように出しています。

「ジャンプっぽさって何ですか?」と聞かれたら、浅田は「変わるのが、ジャンプです」と答えます。
マンガ雑誌だけが購買のメインだった時代、紙の単行本が売れ出した時代、小学生男子のみが読者層だった時代、中学生以上の世代が読み続けるようになった時代、スマホ閲覧・購読が始まった時代、世界中の読者が同時にマンガを楽しむようになった時代。その変化に合わせて、ジャンプグループは、クリエイターと編集者が面白いマンガを作ってきました。
今回、我々は「タテマンガ」に挑戦します。新たな読書体験に、ご期待ください。

集英社プレスリリースよりhttps://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000581.000011454.html 

「時代に合せた新しい読者の開拓」という狙いを明言しています。

個人的には、臥薪嘗胆深謀遠慮急がば回れで、腰を据えてじっくりと世界最強のWebtoon編集部になっていただきたいですね。

数多のジャンプ作品をWebtoonでリメイクしていけるって、そんな優秀な火薬庫は他に無いと思います。「日本の大ヒット漫画」に留まらない「世界の大ヒットIP」の宝庫ですからね。切り札級の弾丸がわんさかあって、ポテンシャル世界No1なのは間違いないですので。


ブラックストーンが「めちゃコミ」運営会社買収へTOB-関係者

先日、ソニー含めた三社が「めちゃコミック」の運営会社アムタス社の親会社、インフォコム社買収の応札にのぞむという記事をご紹介しましたが、この件が決着し、米国の投資ファンド「ブラックストーン」と、インフォコム社の親会社「帝人」の間で55%分全株の売却が合意したようです。ただし、当事者の帝人・ブラックストーンのコメントはまだです。

ブルームバーグの記事は買収額を2600億円、日経の記事は2700億円としています。さておき、先に出ていた記事で2000億円を最大とする買収額とされていたものと比べると、600~700億円程上乗せがあったということかと思います。応札合戦で、色々あったのだろうなと。

先日、ソニーグループが今後の3年間でエンタメに1.8兆円投資すると発表しました。そして信じがたいことに、そのソニーが競り負けました。

今回勝ち取ったブラックストーンの運用資産は2023年末時点で1.1兆ドル(約173兆円)ということで、もちろんそれが全部使われるわけではありませんが、これまでの業界では想像しにくい規模感のマネーが入ってくる予兆があります。

集英社、講談社、小学館、秋田書店、白泉社と言ったマンガ出版社は非上場企業が多く、ここに直接外部から大きな投資マネーや、その意を汲んだ経営者や株主が入るということは考えにくいという状況で、これこそ日本出版界の伝統的経営体制です。このあたりが、ゲームやアニメと言った、上場企業が大手を占める他のエンタメ業界と大きく違うところです。

それゆえ経営が大資本や投資マネーから独立した状態を維持し続け、最も重要な作品作りに拙速なマネー理論が侵食しないということが、日本のマンガづくりの根幹部分を守護してきました。これ、本当に大切なことです。

2021年に600億円を調達した現カカオピッコマしかり、今回のめちゃコミ買収劇しかり、近年マンガ業界の伸長に大きく貢献した電子コミックプラットフォームを経由して業界に大きな資金が入ってきています。

このことが、今後にどう影響するか……ですね。さてさて。


『セクシー田中さん』日本テレビ調査報告

日本テレビ調査報告書原文

各社の記事

5/31に日本テレビから『セクシー田中さん』で著者の芦原妃名子さんが亡くなられるに至った経緯について、社内特別調査チームからの報告書が出ました。

これを受けて、各メディアからも記事が複数出ました。特に、SNS上でのリアクションは完全に紛糾しており、事態の深刻さ、難しさを浮き彫りにしています。

私個人として一連の報告書を見て思ったことは2点です。

まず今回の調査は、日本テレビ側「テレビとして映像を製作する側の事実関係」です。来週早々には今度は小学館側「出版社として映像制作に関わる側の事実関係」が出る予定。

それで今回は映像側サイドの調査なわけですが、普段マンガや漫画家に関わってる身としては「それは、こちらの考えとしてはあり得ん」と思うことも多々ありますし、一方で、映像は普段からこうして作ってるんだろうなということが、良くわかってしまった部分があります。昔からずっとこうで、ご本人たちからすると真っ当なやり方だったのでしょう。

なんでもそうですが、両サイドの意見を聞かないとならないですし、小学館側の意見も確認してから色々と判断せねばならないのも確かですね。

ただ、思ったのは、この両者の齟齬や、沢山ある矛盾を、間に入っていた人間が調整して進めてきたのが、長い伝統なのでしょう。その調整が上手く行ったケースが、過去の「成功事例」なのでしょうし、逆に失敗した極地が「今回の件」なのだと読み取ってしまいました。

もう一方、単純にこれを見た漫画家さんたちが傷つくのは、物凄くわかります。わかってしまいます。マンガの世界での作品作りとあまりに違いますし、故人を「難しい人」なんて連呼されたら、自分のことじゃなくても落ち込みますよね。ある種、調査報告書が過去に起きた事実を記しているからこう書かれているのですが。

一通り読んで感じたのは、今回この報告書を作られた方は、恐らく「我々の常識が世間の常識」という前提で書いたのではなく「愚直に事実を書く」ことを徹底することで、メッセージとしているようにも思いました。そういう意味では、まずいと自覚してることも事実を書くという徹底度合いは評価できるかなと思いました。もちろん、そのうえで、まずかったことをどうするか?という話だと思いますし、いくらなんでも本当の意味で全てを書いてはいないと思いますが。

過去、そうした、映像、マンガ、双方の現場のギャップは、どうしようも無いものとして存在し続けていて、それに蓋をしてきたわけですね。

今回の件で両者は過去になくつまびらかにされ、これから改善に向かうと信じたいですが、信じられないくらいの調整や話し合いが必要になるでしょう。漫画家や他の関係者の気持ちを考えても、これから大変なお仕事が待っているのかなと思いました。

最後に、今回のこの事案を見て、漫画家や関係者以外のところで、明らかに文脈が読み取れてなかったり、ちゃんと読んでないというか、文章を読めてないまま、ただただ攻撃的な発言をしている人が多いなとも感じています。SNSの救えなさ、暗部の深さみたいなものを同時に感じました。

良くわかってない人は黙って欲しいなとも言いいません。が、とにかくこの期にネガティブな言葉が飛び交うのは忍びないなと思いました。


国内News

これ凄いですね。大谷選手の好きな漫画に『MAJOR』が入ってたのが熱いです。


viviONがグループ売上を公開、454億円とのこと。
買収で話題のめちゃコミが460億円前後ですので同じくらいですね。

そのviviONが珍しいTLの調査報告を入れていますが、売れ筋は「現代オフィス」もので、キャラの服装は「スーツ」が人気とのこと。なるほどー。


毎度お馴染み、四半期に一度の不破雷蔵さんの公称印刷部数まとめです。

今節は、前節と大きく変わるところが無いのですが、気になるのは、前節で1位と2位が逆転した、少女誌の「りぼん」と「ちゃお」の関係性です。前節で逆転したまま今節も同じポジションですね。

「ちゃお」は「ちゃおPlus」というWebサービスを開始しており、DXの結果紙の方はこの位置取りとなりつづけるということなのかなとも。


アフタヌーンが公式オンラインストアをオープンということで、出版社からのグッズ直販ECというところは珍しくないのですが、このサイトが外部である楽天に特設されているのが意外でした。

講談社は現在、自社サービスの共通ID化を進めているという認識で、作品を見る人が使うユーザーIDと共通でグッズが購入できるのは、合理的と思います。が、これはテストかなにかなのかなーとも思いました。


ヤンマガがリアル海の家を作るとのこと。ヤンマガらしいと言えばらしいですが、やはりユニークですね。ちょっとHなラッキースケベが期待できる海の家だったりは、しないとは思いますが…(店の種類が違う)
とにかく、なんだか面白いですね。


日本マンガ塾は設立25年のマンガ専門校で、今回はマンガレーベル立上げとのこと。専門学校ではAMGがそうした作品制作に関わる会社を持っていますが、今はそうした形が良いのかもですね。


先日BLアワード受賞式に参加したので、この記事、ホントにそうだなーと思いました。今はBL紀元のアフター『おっさんずラブ』の時代と。


TV局は各社事情で、せっかく好調で外貨も稼げるアニメに注力出来てるところと出来てないところがあるみたいですね。他にも色々話題になってるわけすが、色んなこと考えなきゃいけないんだなーと思います。

ただ『鬼滅の刃』にとって、地上波との関係性がどれくらい重要かというと、別の問題ではありそうですね。



日販最終約50億赤字も、海外・エンタメに活路か?


印刷会社が、同人誌印刷に再参入すると検討し始めると株価が上がるという


今年の東京コミコンは12月に幕張メッセとのこと。


ナンバーナイン社の印税支払いの仕組みがシステム画面とともに解説されて公開されるという、利用するクリエイターフレンドリーなnoteですが、これは今までは無かった情報ですね。これは、クリエイター向けにこうしたシステムを作っているNo9らしいところです。

逆に、ほかの出版社がこうしたシステムを作ったら、便利そうですけども、その場合はシステム構築より、業務と散在する数字の整理がとにかく大変そうです。新しい会社らしい利用者インセンティブだなと思いました。


連日話題になり続けている、クレカ決済問題ですが、現役国会議員の赤松健さんが創業した「マンガ図書館Z」もその影響が出たとのこと。これは、通達の内容や方法が、あらいざらい赤松さんに知れる(ということじゃないかもですが)ことのようなので、議員活動の対応精度が上がるような。

海外ユーザー向けに決済を代行するサービスというのがちょうど立ち上がっていたのですが、これは国内でも適用できないものかと思いました。あと、この運営会社の社名が面白いです。正気かw


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

ジャンプTOONのオープンに伴い、いくつかのスタジオが、自社作品のリリースを出しています。

Contents Lab. Blue Tokyoは、『ハイキュー!!』の縦化と、遊技機のSANKYOと組んだオリジナル作品を。テラーノベルもオリジナルを出しているようです。他、アプリをサッと見たところ、共同印刷やエンドルフィン(着彩)、集英社とシャインパートナーズ合弁のTOON FACTORY等の名前もありました。

セルシス社も「第2回ジャンプTOON AWARD」のほうに協力しているようです。


ボルテージ社のレーベル「ボル恋TOON」の第1弾はピッコマへ。


レジンエンターテイメント社は、BeLTOONをリニューアルとのこと


『神血の救世主』は単行本化ですね。
カラーコミックで、紙・デジタルともに1100円程。


LINEマンガのWebtoon新人向け施策がまとまっています。


海外News

*: 外国語の海外ニュースもご紹介します。自動翻訳等適宜。

タイトル訳:ネイバーウェブトゥーンのナスダックIPOはウェブトゥーン業界の成長を促進すると予想される

タイトル訳:ウェブコミックプラットフォームWEBTOON Entertainmentが推定5億ドルのIPOを申請

NAVERが今年の上場申請手続き中というのは既報ですが、その申請の中で1Qが黒字とあったと記事になっています。調達金額が500億円くらいになるだろうとありますが、NAVER全体の時価総額が3兆円弱くらいであることを考えると、やっぱりもう一声時価総額ともども欲しいところですね。


タイトル訳:Netflix の K-ドラマ「The 8 Show」はウェブトゥーン「マネーゲーム」が原作?

「The 8 Show」はWebtoon原作だったんですねー。


タイトル訳:パニーニUK、マーベルコミックから脱却しパニーニマンガを立ち上げる

パニーニ社はイタリアで創業された雑誌に強い出版社で、ヨーロッパ全域で出版ビジネスをしています。確かフランスで『鬼滅の刃』を扱っていたと思います。

そのイギリス子会社パニーニUKが、米国マーベル作品のライセンシーの枠を飛び越えて、オリジナル作品を作り始めるとのこと。なるほど。


libroさんの海外ニュースまとめです。今週も興味深いニュースいくつかありました。

4月の北米のコミック売上、『俺レベ』が好調とのこと。『俺レベ』は、日本のマンガじゃなくて、アメコミの枠になるんですね。KADOKAWAの現地法人、YEN PRESSの中のIxePressというレーベルから出ているようです。

日本マンガは変らない顔ぶれが多いですが、スクエニの『その着せ替え人形は恋をする』が上位に入ってますね。


アメリカのデトロイト、テキサス、フェニックス。カナダのバンクーバー、エクアドル・グアヤキルのコミコンの様子です。イタリア・ナポリのコミコンでは、韓国のWEBTOONが出展しているとのこと。

バンクーバーのアートフェスの様子です。


AI・画像生成関連

漫画家の松山せいじさんの『エイケン』をビーグリー社がAIでリメイク。
建設的な使い方な感じがしますね。


and factory 海外展開などにAIを活用していくとのこと。翻訳ではなく、マンガのコマ割りなど中心のようですね。課題だった不動産事業、この期に大方処理しているみたいですね。


こちら、個人的に「へー」と思ったのが、AI画像生成では難しいとされていた、白黒の効果線とか、トーンっぽい表現など、今まで見た中では一番きれいだなーと。


うめ・小沢さんとアドビの記事です。このあたりも、前向きにAIを活用している記事ですね。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

ジャンプTOON投稿サイトオープン&第2回 ジャンプTOON AWARD 開催

「水星の魔女」などガンダムPの小形尚弘氏らが審査員とのことで、ここにガンダムものの2次創作を応募すると、公式化とかあったりして。いや、無いとは思いますけども、突き抜ける面白さがあれば、あるいは??


記事のみ紹介


告知関連

●第1回 「著作物の二次的利用と契約実務」
日時:2024年6月18日(火)16:00~17:30 オンライン・無料

●第2回 著作権制度の基礎 「著作者、著作権、著作物をしっかり理解しよう」
日時:2024年6月25日(火)16:00~17:30 オンライン・無料

7/7(日)13:00~14:30 @豊島区トキワ荘マンガミュージアム、松葉そば

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