見出し画像

【マンガ業界Newsまとめ】国産Webtoon『神血の救世主 』月商1.2億円、早売りからの海賊版摘発、『セクシー田中さん』関連 など|2/12-140

マンガ業界ニュースの週1まとめです。マンガ・アニメ業界向けイベントIMART(https://imart.tokyo/) を運営する筆者が、動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、マンガ業界の方が短時間で1週間分の情報をチェックできることを目指しています。

――― 


ナンバーナインが手掛けるオリジナルWEBTOON『神血の救世主〜0.00000001%を引き当て最強へ〜』、月間販売金額が1.2億円突破!

株式会社ナンバーナインのWEBTOON『神血の救世主〜0.00000001%を引き当て最強へ〜』が2024年1月のLINEマンガにおける国内の月間販売額が1.2億円を突破とのこと。

これまで、単行本部数では販売数などを表現しにくいWebtoon周りでは、好調さを金額で表現してきました。今週発表で後述するものも含めますが、筆者の記憶に印象深かった中では以下のようなものがありました。(各リリースは、ポスト以下のツリーにて)

こう見ると、韓国製Webtoonの記録が並びますが、国産Webtoonでこの発表の仕方をしたのはNo9が初めてかなと思われます。(韓国製の一部は漏れてるとも思いますが、抜粋ということでご容赦を)未発表も有るやもですが。

漫画単行本を仮に500円とすると、1.2億円で24万部、10億円で200万部相当ですね。印税の考え方から同じようには語りにくい部分ですが、経済規模で言うとそうした換算もできます。

初版100万部という漫画もある中で小さくも思えますが、日本漫画が1950年代からの歴史を持つのに対し、comicoが日本で初めてWebtoonを出してから10年強、No9他国産Webtoonスタジオが登場して3年そこそこですから、絶賛成長中と見るととても立派な成果だと思います。

なお、この『神血の救世主』が、どのように売れて来たかという点については、以下昨年11月のIMARTセッションでグラフ付きで詳しく語られています。(No9の小林氏、LINEマンガ森氏が登壇)

 *: 筆者の関わるイベントです。
 **: イベントの配信視聴は有料です。ただし、サイト下部にある協賛企業・団体の方は無料で視聴可能です。自社内での視聴のご案内をご確認いただくか、どうしても判らない場合は、IMARTまで視聴方法をお問合せ下さい。会社名のドメインが入ったアドレスでお問い合わせいただければ、視聴方法をご案内します。

驚くべきは、この作品はNo9社にとって、1作目のWebtoonなんですよね。凄いヒキだなと思います。韓国Webtoonは勿論、国産Webtoonも伸びて行くことからの、ゆくゆくの映像化や国際展開など、楽しみですね。


発売前漫画の「早バレ」ネット普及で横行 「早売り」悪用か、業界に危機感「罪の意識を」

熊本、新潟両県警の合同捜査本部は4日、週刊少年ジャンプを発売5日前の前週水曜日にネット公開したなどとして、著作権法違反の疑いで外国籍の男2人を逮捕したとのこと。

また、ジャンプに続きマガジンでも逮捕とのこと。同じ人のようですかね。

記事に詳しいですが、いわゆる「早バレ」問題でからの違法公開していたとのことで、2つの意味で問題があったところを摘発したということのようです。このことで、少しでもこの辺りのイタチゴッコが収まると良いのですが。

具体的に普段どんなことを対策として取り組まれているかは、以下の動画に詳しいです。


『セクシー田中さん』著者芦原妃名子さん訃報のその後

関係筋の動き

2/7 スポニチで小学館社内情報リーク

2/8 夕方18時頃 編集部から発信

2/8 同日その少し後に小学館公式からも上記編集部の声を添え発信

先週のまとめでも、かなりの量の記事を紹介しましたが、この一連の流れの発端はリークと思われるものが2/7出た直後に、小学館第一コミック局(少女・女性漫画部門)編集部から声明が出て、公式が追った形です。

編集部声明が出た際には、第1コミック局の女性誌の公式アカウントのほとんどから同内容が発信され、サイトがつながりにくくなるほど読まれたようです。上のポストを出された畑中雅美さんは、今回渦中にあった「プチコミック」のプロデューサーで、小学館内ではCPと呼ばれる、編集長と取締役の間で媒体を統括する立場の方です。

この少女・女性誌編集部の動きは、他の部署にも伝播し、青年誌のビッコミなど、他の媒体からも発信されました。

個人的に、作家と向き合う編集部の思いとしてこの声明が出たのは、故人の芦原先生をはじめ、小学館で作品を作る全ての作家に対するメッセージという部分が強かったように感じました。

一般に、企業というものは一枚岩で当然ということがあるかと思いますが、出版社は、編集部署における編集権の独立の原則など、なかなか他の業界ではわかりにくい体制がある中で、コアとなる作品作りの一貫性を担保するところがあると思います。そんな中で、この声明は本来寄り添いたい存在に、一定届いたのではないかとSNSの漫画家を中心としたリアクションから感じました。

全社公式によると、それらをうけて事態の調査を進めているとのこと。


この声明の前後にあった様々なリアクション

様々な意見や記事が出ましたが、基本的には先にあった小学館の調査を待つより他にないのかなとは思うところはあります。


クリエイター関連で渦中の漫画家・脚本家・プロデューサーの発信

特に、上から5つ目のプレジデントの記事、元テレ東社員田淵俊彦さんの記事は読みごたえがありました。今回の実際のTV局側の体制と、実際の制作現場にも触れています。

ちょっと冷静に見ないといけないといけないところと思いますが、出版業界における出版社・漫画家の立ち位置と、映像業界における脚本家の考え方はかなり離れているのは事実のようです。

この最後の脚本家を名乗る方のBlogは、どこに論点を置いたかはともかく、書籍原作と映像脚本の考え方の違いを如実に表しており、もう明らかに違うものとして断言されていますし、実際そうなんでしょう。ここは、冷静に対処していくにあたり整理していくべき論点かなと考えました。


分断と悲劇を加速化したものは?

長年ブロガーとしてネット上で発信を行ってきた徳力基彦さんが、「メディアによる「怒りのスパイラル」の発生」という論点で、多くの人が今回捉われた負の流れを問題提議されてます。SNSやメディアの在り方は、個人にも企業にも問われるところだと思います。

個人的に、私は出版社にも映像業界にも知人が多いですが、出版社にせよTV局や映像制作会社にせよ、例えば原作者に対して悪しざまな感情を持って仕事や日々の営みをしている人はいないと思います。(中にはいるのかもしれませんが、私は一緒に仕事をしたことは無いです)ただ、それぞれの現場にやり方や制約条件があるということかと。

むしろ現場は、作品作りをしている作家の声や、温度感や、その苦渋をリアルなやり取りから最も触れているわけで、今回の件で一番悲しい思いをしているはずが、様々な批判の矢面に立たざるを得ないこと、見るにつけ複雑な思いを持っていました。

今回の悲しい事件は、もちろん肯定されるものではないのですが、少しずつ良い方向に向かって欲しいと切に願うところです。


国内News

スクエニのマンガ部門、『薬屋のひとりごと』の大ヒットにより3Q好調とのこと。


KADOKAWAの3月期決算の見込みが、売上は微減、純利益で42%の減益とのこと。売上は影響軽微で利益に大きな減が出ているのは、前期に絶好調だった『ELDEN RING』の影響が大きそうですね。本体のIRは、2/12時点では4Qの更新はまだありません。

作品別収益の内訳としては、集英社ヤングジャンプの作品『【推しの子】』の収益がトップとなったこと。
『無職転生』は、出版のみで7位とのこと。ラノベは完結済、アニメは端境期、コミックのみ新刊が出てた当期でそれは強いですね。(個人的にかなり好きです)


小学館傘下の小学館集英社プロダクションはECサイト「マンガワンSHOP」内で、漫画を1冊から印刷・配達するサービス「マンガワンオンデマンドCOMICS」を開始するとのこと。

第一弾の作品は『教え子がAV女優、監督はボク。』で、紙単行本を発刊した1巻~12巻はそのままに、13巻~15巻はオンデマンドのみとするとのこと。通常価格3300円とのことで、ちょっと高いですね。。。電子版はそのまま販売とのこと。


とらのあなの、一般向けファンクラブプラットフォーム「クリエイティア」は「ファンクラブ限定のチップ機能」とのこと。推しに課金できる仕組みですね。


老舗電子書店BookLiveは、クリエイター・作品とファンがつながる「推し活拠点」として、同社初のリアル店舗「OSHI BASE Harajuku」を4月17日にオープンする。場所は、同日に東京・原宿に開業する商業施設「ハラカド」内。

前述のとらのあなは、fantiaやクリエイティアなどのデジタルプラットフォーム上で活躍するクリエイターが、イラスト展やグッズ販売などで、リアルイベントに参加できる取組を行っています。

電子書店の他にも「Xfolio」などのクリエイター向けプラットフォームを提供する同社として、リアルにイベントを行えるスペースを準備したというところでしょうか。場所がまたすごいですね。


世界的には、Tiktok内のクリエイター向けの課金、投げ銭が急成長中のようです。この世界ランキングで、国内1位のピッコマが17位につけているのもすごいですね。


めっちゃ勉強になりました。斜陽産業となってた映画が、ここ10年のアニメ映画の動きでどんどん大きく戻していった流れなんですね。なるほど。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

トップでも若干触れましたが、めちゃコミの『オークの樹の下』という韓国製Webtoonが1か月半ほどで売上3億円を達成とのこと。

Webtoonプラットフォームと言えば、ピッコマ・LINEマンガが大きいですが、ついに国内PFの雄でも億単位の売上が発表されるようになりました。


腕利き編集者の移籍、マンガ広告を知り尽くした体制からの大資本による参入など、注目されていたサイバーエージェント系「STUDIO ZOON」が、2月7日より全10作品を提供開始とのこと。まずは、Amebaマンガからのスタートのようですね。

同時に、ZOONのベータ版アプリ利用申請フォームが出てました。とりあえず登録しました。


『喧嘩独学』がTVアニメ化決定とのこと。もともとアニメテイストな絵柄の作品でしたが、あのクオリティで動くと楽しそうですね。個人的にも、このテイストでのセルルックのバトルはちょっと楽しみです。


Webtoonスタジオなどを運営するMinto社に対して、docomoが資本参加です。docomoは運営するDブック上で、Mintoを含めた複数社のWebtoonを独占配信するなどで資本投下しています。その延長線上のように見えますね。


戦隊もの『キングオージャー』のTVer解禁という記事なのですが、後半のほうでWebtoonにも触れています。この影響で、久々に戦隊もの見てます。


ジャンプTOON責任者の浅田貴典さんに、テラーノベルCEOの蜂谷さんがインタビューするというものです。面白い組み合わせですね。

浅田:ジャンプだからなんでもできるとは思ってはいません。私たちは新参者であり、先行しているプレイヤーからしたら、「わかりやすい落とし穴に落ちているな」とか「これは以前やって駄目だったのに、またやっているよ」という声も当然あると思います。ただ、いろいろな痛みとともにチャレンジをしながら進めることが、最終的に強い事業になると思うので、頑張り抜きたいです。

記事より

ここ、ちょっと面白かったです。
とにかくジャンプTOONに関しては、世界的に知名度の高いIPのWebtoonを、いつどんな形で世界に打ち出すかというX-Dayがあると思います。その時が、楽しみですね。


これは、ちょっといただけない記事です。

記事よりキャプチャ

冒頭、上記のような記述がリードにあります。

(1)タテ読みマンガの国内市場規模 5000億円
(2)今後5年間で4兆円規模に達する

と、あるのですが、これが数字としてどこから来たのだ?という指摘で私の身近ではざわつきました。

数字の規模だけから推測すると、
① 5000億円≒日本の電子コミック市場規模
② 4兆円≒中国QY ResearchのWebtoon世界市場の数値の円換算金額
と、同じ数値とは想像することが出来なくはないです。

この推測が合ってるとすると、①はWebtoonのみならず横漫画も入ってる一回りうえの数値ですし、②に至っては、規模が世界に羽ばたいているうえに、最初の数字と範囲も違います。推測がちがっていても、規模感的にはそういう数字の大きさです。

今はただ、この数字が記事とともにどこかに引用されたりして、不幸なことが起きないように願うばかりです。

よろしくお願いいたします。日本テレビ様。

ちなみに、記事の中身は良いこと書いてます。
特にソラジマ前田さんの「特定アプリサービス内で完結して読まれる作品は、社会とのつながりが感じられない(抜粋)」というコメントは、現在のWebtoon事情を浮き彫りにしてると思います。


この記事は面白いです。韓国コンテンツ振興院(KOCCA)が出した「海外ストーリー産業支援政策分析調査」に触れているのですが、

「IP関連の各国の実務がわかるコーディネーターや法務人材が足りない。」
「制作する段階で制作費の支払いを受けるが、輸出が増加しても制作会社には追加収益が発生しない」
などなどなど

赤裸々に韓国Webtoonの課題が書かれ、これをもとにKOCCAが施策を考えているんだろうなということが見て取れます。こういうことしっかりやりたいですね。


海外News

*:外国語の記事を紹介しております。自動翻訳など活用ください。

タイトル訳:Funimationアプリ、アカウントがCrunchyrollと統合され4月2日に閉鎖

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントとアニプレックスが株式を取得した配信サービスのファニメーションですが、同じくソニー傘下のクランチロールと統合され、ついにアプリも無くなるという一つのマイルストーンですね。


NAVERのタイにおけるアプリやショップの開始、フランスにおけるアングレーム国際漫画祭への積極的な参加、日本での『入学傭兵』のヒット、北米のWattpadの時組みなどを紹介しつつ、NAVERの世界展開を紹介してます。


タイトル訳:韓国は漫画とウェブトゥーン産業を成長させるためのより大規模な計画を策定中

韓国Webtoonの魅力を国際的に発信する国際イベントの開催や、研修プログラムなど様々な施策を計画とのこと。

タイトル訳:「K-ウェブトゥーンは興行保証小切手」… ネカオ、「IP」版をもっと育てる

このタイトルが表してますが、韓国としては自国でIPを育て海外に発信するスキームが、ここ十数年で確立したということなんですね。確かに。


タイトル訳:Precious Pages Corporation は Wattpad WEBTOON Studios と協力して、最もホットなオンライン ストーリーを印刷物にします

北米Wattpadの作品をフィリピンで紙の書籍として販売する提携です。このあたり着々ですね。


タイも注目されますね。


台湾では、アニメフェスにのべ48万人来場とのこと。1日で10万人ということなので大きいですね。


libroさんの北米エンタメニュースまとめです。

2つ目の記事のタイトル訳「日本の漫画消費における国境を越えた対立と対話」ですが、論文ですけども「日本のマンガの国境を越えた消費が今日の国際社会に与えた影響」とあり興味深いです。日本だと社会学の範疇ですね。

過去、日本でも「マンガ学科」みたいな直接的な学問の門戸が開かれる前は、社会学でも良くこうしたエンタメの研究がなされていたと聞き及んでいます。


AI・画像生成関連

受賞者が「全体の5%ぐらいは生成AIの文章をそのまま使っている」ということで衝撃を呼んだ芥川賞ですが、使い方を聞くと一筋縄でいかない巧みさを感じました。使い慣れてるとかそういう卑近なことというよりは、AIと向き合ってる感じで面白いです。


Google、Meta他各社と、AIの画像投稿に対する対処を始めていますね。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等


記事のみ紹介


告知関連

今年のNetFlixの映像化。マンガ・Webtoon原作がとりあえず3つ見える感じでしょうか。鈴木りょう、良いですね!

―――

主に週末に週1更新ペースで書いています。原則日曜、月曜以降が休日の場合は、週初めの平日の全日公開にて。たまに番外編も書きます。
マガジンx(旧Twitter)のフォローしていただくと、更新情報が届きます。

2023年11月24日~26日に、第4回IMARTというマンガ・アニメの国際カンファレンスを開催しました。
基調講演に鳥嶋和彦さんを迎え、マンガ・アニメの現場から22のセッションやピッチが行われました。

アーカイブ配信のチケット購入がこちらになります。

インプレス社『電子書籍ビジネス調査報告書2023』のWebtoonパートの執筆を担当させていただきました。

筆者個人へのお問い合わせなど、以下まで。


この記事が参加している募集

業界あるある

Twitterもやってます!フォロー、よろしくお願いします! https://twitter.com/t_kikuchi