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【マンガ業界Newsまとめ】2023年上半期電子コミック8.3%増という数字の読み方。ウェブトゥーンカオスマップ更新 など|7/30-112

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。


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2023年上半期出版市場(紙+電子)は8024億円で前年同期比3.7%減、電子は2542億円で7.1%増 ~ 出版科学研究所調べ

出版全体については、タイトルの通りです。マンガについては、

紙コミックス 12%減
電子コミック 8.3%増

とあります。
紙コミックスは、巣篭り需要直後期ということで、引き続き下がるところは良いとして、電子コミック8.3%増について少し。

近年の電子コミックの伸びは以下の通りです。

公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所『出版指標』より筆者作表

出版科学研究所の『出版指標』(旧『出版月報』)は、2014年分から電子コミック(電子書籍)の市場規模を発表しており、データはそこからのスタートになります。

2021年から2022年にかけて、電子コミックの市場の伸びについて、前年比額、伸び率ともに半分になるという状況がありました。

2021年までの20%を超えてきていた電子コミック市場の拡大、伸び率に対して、2022年は8.9%と少し落ち着きを見せました。ここで踊り場・停滞となるかと言うところでしたが、2023年の上半期は8.3%減と、踏みとどまった感があります。

このまま堅調に行くと、電子コミック市場の伸びは、10%弱で当面推移するかどうか、といったところでしょうか。

他方、マンガ出版社の収益源と言うことで言うと、近年支え続けて来た電子コミック市場の先に、海外販売、Webtoon、IP展開(特に、イベント・グッズなど)あたりが、次の注力分野として控えています。各社、電子コミックの好況を下地にしながら、次の展開に向けて準備していくところですが、その原資たる電子コミックは、勢いに陰りあれど、一先ず堅調と言ったところで、まずまずというところでしょうか。


漫画特化の深層学習モデル開発を手掛ける Orange 約2.5億円の資金調達を実施

なにやら大きそうな動きです。

“Manga AI Localization”を活用し、翻訳家様と協力することで、これまで日本全体で月に100冊程(*1)行われている日英翻訳出版を、数年以内に10倍の月1,000冊以上をOrange経由で目指します。

記事より

マンガ翻訳のプロセスの大半を自動化し、ローカライズのスピードを圧倒的に早くするとのこと。『ねこおじ』とのコラボレーション動画がアップされています。

代表の宇垣氏も以下のようなツイートをしています。

先述の通り、出版社・マンガ全体の海外販売が伸びていく中で、翻訳やローカライズの課題は大きくなっていきます。その辺りに対して、AIを活用して支援していく形は、望まれるところかと思います。


ウェブトゥーンカオスマップ2023年6月更新版

【注】筆者の関わるコミチ社の取組になります。

前回、当面更新見通し無しと申し上げたコミチ社の更新するウェブトゥーンカオスマップですが、このタイミングで更新いたしました。

コミチ社制作

前回の更新が今年2月でしたが、その後の動きとして、
出版社からは、「集英社・ジャンプTOON」「秋田書店・J-TOON」など、
スタジオとしては、「バンダイナムコ」「SegaSammy」など
プラットフォームでは、「Amazon:FlipToon」「Apple」「楽天:R-TOON」などなど、約半年で、ビッグネームが沢山出てきました。

今年の上半期のWebtoonの動きとしては、国産Webtoon作品のリリースが相次ぎました。後続の版元・PFも主要なところはだいたい出揃ったというところでしょうか。

ウェブトゥーンカオスマップは今後も不定期で更新してまいります。


国内News

集英社のネーム制作補助ツール「WorldMaker」ですが、説明会が行われ、マンガ及びアニメのコンテをつくるツールとしての動きなどが動画になっています。

一本目の記事の林さんによる「作ってこなかった人にも作って欲しい」という言葉も、飽くなきマンガを下支えするクリエイターの底上げの思いが合ってよいのですが、2本目の記事の動画にあるネームづくりや、新機能のアニメコンテからの動画制作機能も、動きを見ると興味深いです。

このネームやコンテを作る仕組みをベースとすると、そこにあるキャラや画像を記号化されているわけで、ここにAIによる作画が連動すれば、色んなものが出来てしまう気がします。


Minto社による漫画などのPRコンテンツ作成というと、講談社、小学館など大手出版社とも既に連携が発表されています。その部分を、他社にも展開していくパッケージ化がなったというところでしょうか。


熊本のマンガ関連の動き、手数も増えてきましたね。


ニュースそのものはマンガに限った話題ではないのですが、MBJ社による電子献本サービスですね。

マンガ編集部と漫画家の間には、過去に関わりのあった作家さんには紙の雑誌の最新号を送るという慣習があります。そのため、多くの漫画家の仕事場には雑誌の山がうず高く積まれ、一節によると大きな地震のたびに雑誌の山が大変なことになるとか(笑

あれが、電子献本になっていくと便利ですし場所も取らないし、何より出版社で毎回雑誌を郵送している方々の手間が軽減されるなと思ったりします。これが普及すると、ますます雑誌の印刷部数下がるんではないでしょうか。原料高には合ってるかもですが。


『葬送のフリーレン』アニメが、金曜ロードショーの枠で放送開始されるという件から、近年のTV局とアニメの関係性について掘り下げた良い記事です。アニメ化前から、コミックとして多く売れているヒット作品と言うのも位置づけも、変わっていきますね。


構図の本って珍しいなと。
面白さや画力と違い、構成演出は勉強や努力がそのまま地力に繋がりやすい、論理的なところが多いと思います。面白い本なのではないでしょうか。


Webtoon関連ニュース

Webtoonの販売の2大プラットフォームのひとつ、LINEマンガの2023年上半期ランキングです。

韓国Webtoon中心のランキングとなっていますが、日本の横漫画や韓国Webtoonをのぞいていくと、20位に「2周目冒険者は隠しクラス〈重力使い〉で最強を目指す(猫子・ちくわ・HxSTOON/HykeComic)」が見えます。LINEマンガの上半期で上位ということは、国産Webtoonでも上位ということになるのかなと。
製作はHykeComicで制作がフーモアですね。


そのフーモア社が赤裸々に作家さんの発注費用について料金表を更新しています。初の公開ではなくて2度目の発表ですね。

その中で、原稿料にあたる費用を下げている情報を敢えて発表しています。実際にWebtoonを運用・販売した結果、後に発生する印税が上がってきたことや、制作練度の向上などから、初期費用側は抑えていくとのこと。

あまり発表されることが少ないというか、こういう発表をしたくないから、情報公開をしない会社が多いところだと思うのですが、ある意味馬鹿正直と申しますか、まっすぐで誠実な行動だなと思いました。


ジャンプTOON編集部のポッドキャストが開始してました。統括編集長のほかに、男性向け編集長、女性向け編集長など、3人の編集長がいる体制であることから始まり「ジャンプTOON」についてかなり細かく語られています。

もう後半になると、編集者が飲み屋で作品を語っているときの、作品について語りたいこととを語る、あの聞いたことのある感じの応酬になってまして、そういうことに興味のある漫画家さんや編集者さんには興味深い内容なのではないでしょうか。


普通の漫画だと、プラットフォーム横断で出版社主導のセールは珍しくないのですが、Webtoonで横断施策が出来るのは、大手出版社の基盤あってのところでしょうか。


EXILE企画でWebtoon展開なのですね。


今週は、ウェブトゥーンカオスマップの更新もありましたが、こうした動きも今後も増えて行きそうですね。


この記事そのものは「NetFlixで配信中のウェブトゥーン原作ドラマ5選」という変哲もない記事なのですが、私はこの記事に非常に強い既視感を持っています。

というのも、このNewsまとめを作るにあたり、英語を中心に複数の外国語のウェブトゥーン関連ニュースを追いかけていますと、この「〇〇〇に配信されている映像作品のWebtoon原作〇選」とか「〇曜日のWebtoon」など、同じフォーマットの記事が様々な言語で展開されているのを良く見るのです。

知る限り、英語を中心に、北米向け、中南米向け、インドネシア、タイ、マレーシア、インド、イタリア、フランス、北欧諸国、、、などなど、様々な言語で、このフォーマットのWebtoon関連記事が世界のどこかで毎日のように記事になっています。

これが、どういう意図で、誰が各国で展開しているかと言うのは判然としませんが、海外展開をコツコツやるというのはこういうことなんだろうなと感心するところではあります。


少年サンデー(白黒横)とLINEマンガ(カラー縦)のサイマル連載揃い踏みですね。


海外News

【注】ここから外国語の記事が増えます。自動翻訳を活用ください。

一つ上の記事で紹介してるYLAB社ですが、本国では韓国市場KOSDAQに株式上場しています。

これは日本で言うと、漫画家が作品制作のための会社を立ち上げて、その会社が上場するみたいな道行きです。だいぶやっぱり日本とは違いますねぇ。


Webtoon素材のアニメ化展開で、これはDNP社も先日発表していましたが、これから流行していきそうですね。


KADOKAWAの海外展開は、タイに可能性を感じているとのこと。


タイトル:SDCC 2023: サンディエゴ コミコンのビッグニュース、マジック、瞬間のすべて

この記事そのものは、7月下旬のコミコンのまとめですが、これを読むとどういう内容を米国のファンが喜んでいるのか、少しわかるような気がします。


要約すると、北米コミック第3位の規模の出版社のダークホース社は、その売り上げの2/3が日本の漫画なのだそうです。商品ラインナップのうち1%が2/3稼いでるとのこと。これほとんどは『ベルセルク』なんだそうですが。


タイトル:SDCC '23: インターネットから本棚へ: DC と WEBTOON はどのようにして新しい世界を構築したか

同じくコミコンのレポートですが、DCがいかにWebtoonから作品を展開し、紙コミック販売に繋げているかと言うところです。Webやアプリで広まりやすいWebtoonで作品をカジュアルに連載開始し、新作を作ったり、紙コミックのビジネスを広げるなどしているとのこと。

やはり、日本の雑誌→単行本という流れが、北米ではWebtoon→紙コミックとなっているように見て取れました。


先日映画が公開された「ダンジョンズ&ドラゴンズ」ですが、今度はWebtoonで新作がでるとのこと。↑のDCの流れにも重なりますね。


コミコン、今度は米国フロリダのタンパベイで7/28-30で開催。ストの影響も無く、こちらも活況とのこと。


タイトル:Wattpad Webtoon Studios がタイの GMMTV で江南の美しさを再現

イギリスメディアのニュースですが、北米のWattPad Webtoon Studiosの「My ID is Gangnam Beauty」が、タイで映像展開されるとのこと。こうWebtoonのニュースはほんとグローバルですね。


タイトル:LINE WEBTOON、クリエイティブエコシステム「WEBTOON With」を発表、台湾作品4作品が映画・テレビ業界に参入

先日9周年を迎えた台湾のLINE WEBTOONですが、4作品が映像化されるとのこと。動いてますね。


AI・画像生成関連

OpenAIやGoogleなども、世間の反応に対応してきましたね。


JASRACのように、作品の使用を追いかけていくタイプの団体にとっては頭が痛いでしょうね。こっちはこっちで、追いかけていくクロールAIみたいなものが必要でしょうね。


AIがAI画像を学習すると、精度が下がるとのこと。自家中毒みたいな感じですかね。

とはいえ、AIがAI自身でAIが作ったものを判別するのも前途多難のようです。


内容がペイウォールで読めないのですが、珍しいツーショットです。


AI新機能を多く実装しているAdobeでもこうなんですね。


この「古池や蛙飛び込む水の音」のAI生成動画は、なんとなくAIの現在地点みたいな感じがして趣があります。


夏のプロモーション

記事を探している際にみかけた、夏のプロモーション事例です。多分、あんまり沢山拾えてない気がするのですが、気が付いたらプロモの例として紹介させていただきます。


記事のみ紹介


告知関連

8/16 にIMART+2023の第2弾。エンタメ業界のあらゆる井戸端で交わされる「君どう」ディスカッションを、特濃な3人が語ります。個人的にも楽しみですw


ビッグコミックは読切もとても面白いのですが、5月に開始したビッグコミック系5誌を掲載する「ビッコミ」には、ビッグ5誌の読み切りを読めるコーナーがあります。ここがとてもお薦めなのですね。


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主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに別途特集を書きます。マガジンTwitterのフォロー、よろしくお願いします!

現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。

コミチ+は、来年に向けて大手出版社やWebtoonSTUDIOなどの大型受注を複数控えておりまして、絶賛エンジニア、Webディレクター(運用担当・データアナリスト等)などを募集中です。サービスがどんどん大きく広がっていく、これから滅茶苦茶楽しくなっていくタイミングです。一緒にやりませんか!私も力を出し切るつもりですし、一緒に働く方には私の持ってる知識や人とのつながりを最大限提供したいと考えています。詳細は以下より。

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