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【マンガ業界Newsまとめ】 1000万MAU超えのジャンプ+も「少年ジャンプ超えはまだまだ」など|7/3-058

マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、短時間で情報を得られることを目指しています。

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ジャンプ+はジャンプを越えたのか?編集長×副編集長が赤裸々に語る現在と未来

6/29にジャンプ+編集部が開催する「ジャンプアプリ開発コンテスト」にともない、文字通り「ジャンプのミライ」を語るイベント全3回のうち第1回がオンライン配信の形で開催されました。

ジャンプ+は良く「ギネス記録を出した週刊少年ジャンプ653万部(1995年)」の記録を、ジャンプ+として超えることを目標と発信していますが、今回の取組にあたりその中間報告として、現在地のデータを発表しています。数字面を(著者メモも含め)まとめると以下になります。

ナタリー記事と当日の著者メモから作成
* DAUとは1日に利用するユーザー数、WAUは1週間、MAUは1か月

その他に注目すべき数字としては以下。

<ジャンプ+>
・現在の連載作品 70作品
・累計連載作 341作品
<ジャンプルーキー>
・累計投稿作品数 5万422作品
・累計投稿話数 18万3883話
・週刊少年ジャンプ掲載者 11人
・ジャンプコミックス刊行者 59人
・ジャンプ+連載者 70人
・ジャンプ各誌デビュー数 243人
<海外:MangaPlus>
・展開言語数 7(英仏露、スペイン、ポルトガル、タイ、インドネシア)
・英語版連載数 45作品(言語によって差あり、英語が最大)

https://natalie.mu/comic/news/483546

週刊少年ジャンプに物理的に掲載可能な連載は最大20作品ほどです。同時に70作品連載はざっと3.5倍の規模になります。(連載ペースにもよります)

また、海外向けMangaPlusの新たな目標として以下を発表していました。

・5年後にMAU1000万人
・人気作の最新話の読者数500万、これを内外で1000万に
■そこに向けて2023年以降に開始するアプリ上の連載は、全て英語版サイマル(同時)配信を開始する

https://natalie.mu/comic/news/483546

こうした新しい目標に向かっていくために、「ジャンプアプリ開発コンテスト 2022」を募集しているとのこと。特に海外展開のノウハウが欲しいとも言っていました。

個人的には、私もWeb/アプリや漫画家に関わるサービスに携わっていますので、それぞれすごい数字だなと思います。

ここまでくると、これがジャンプ653万部時代を超えているのか?今後いつ超えるのか?気になるところではありますが、ジャンプ+の細野編集長はその質問に「まだ超えてない」と言い切っていました。

改めて考えると紙で印刷されて多くの人が回し読みしていた雑誌と、アプリ・Webは比較はしにくいところだなぁと考えてしまいました。

何を持って超えるのか定義はむずかしいですが、細野さんの言う通りヒット作品が出る数が大きく紙を上回り、ドラゴンボール、スラムダンク、北斗の拳、もう枚挙にいとまがないですが、燦然と輝くあの頃の作品と同じように、才能が集まり、それがジャンプ+から出続けるような状態が、一つのマイルストンになるのではないでしょうか。今も十分すごいのですが、更に上を目指されているということですね。

以下の記事も今回のイベントを補足する記事となります。


韓国からエンタメの熱風到来…ウェブトゥーンを正しく理解するために知っておきたいウェブトゥーン「前史」

韓国&Webtoon通のライター飯田さんと、恐らく業界の日本語話者の中では韓国漫画史に最も詳しい人のひとりであろう、REDICE/REDSEVENのイ・ヒョンソクさんの記事です。全3回の韓国漫画史=Webtoon史連載の1回目で、前史とのこと。

良く、K-POPも含めた韓国エンタメはIMF危機や国内市場が小さかった韓国経済の歴史的経緯から生まれ、、、という言説はあるのですが、これをしっかりマンガにフォーカスして文章に起こして日本語で一般に公開しているのは、この記事が恐らく初めてではないでしょうか。

それくらい、見たことのない、なるほどなということが書かれており興味深いです。この前史は、日本の漫画史で言うと、戦後の焼け野原から手塚作品が生まれ、週刊漫画誌、少女・女性・青年漫画誌からのメディアミックスに向かう、、、くらいの序盤のお話かと思います。

一先ず、2つ目3つ目をお楽しみにというところですので、是非一読ください。しかし、毎日マンガを連載してたとかすごいですね。媒体とか内容とかどういう感じだったんでしょう。


漫画村に広告料、2審も著作権法違反ほう助認定 代理店の控訴棄却

「漫画村」(2018年4月に閉鎖)に広告料を支払うことは著作権法違反のほう助に当たるとして、漫画家の赤松健さんが東京都の広告代理店とその子会社に損害賠償を求めた訴訟で、「控訴棄却」ということで、要は結論が出たということかと思います。

漫画村をはじめとした違法サイトの規制において、高度な裁判などを行うにあたっては、日本の場合は著作者である漫画家自身が訴訟を起こさないとできないことも多いということで、なかなか決定打が出なかったわけですが、この訴訟は漫画家である赤松健さん自身が訴訟しているため、有効に進んだということですね。

この控訴棄却は、1審で有罪となったいわゆる「違法サイトに広告を出稿したら、その業者も違法と認定する」ということが確実となりましたので、違法サイトの収入源の一つである広告費が国内においては取りにくくなるということです。いわゆる兵糧攻めの体制が整ったというということで、大きな一歩ではないかと思います。


漫画アプリ広告で検証 スマホとPCで主人公の好みは変わる?

これは、電子コミックのデジタル販売の現場や、そこに作品を送り込む版元の編集者や電子営業の方々にとって、「なるほどやっぱりか」などとなる面白い研究だと思います。

詳しくは記事中の「4つの研究結果」をご確認いただきたいのですが、これを砕いて書くと以下のような感じかと。

・Web広告はPCよりスマホのほうが内容を身近に感じる
・スマホの広告のほうがPCより口コミ感ある
・スマホ広告では判り易いもの、PCではより高度な内容の広告が好まれる
・スマホ広告だと日常系、PC広告だとファンタジーが良く売れた
(いずれも著者意訳のため、詳細は記事をご覧ください)

このあたり、実際にWeb広告の数字を沢山見てる現場の方々からすると、ちょっと納得感があるのではないでしょうか。個人的にも自分の経験から、なるほどなと思ってます。


今週のWebtoon新規参入

小学館ではBANDAIやLINEマンガ等とコラボしている「TOON GATE」という取り組みがありますが、それともまた違う取り組みがあるようです。TBSとのコラボで「タテスクコミック賞」を行うようです。


海外News

国内ではデジタルが好調で市場規模を拡大するマンガ産業ですが、その中で年々規模を縮小する紙の雑誌と単行本の市場規模は2021年ベースで2600円程度。

それに対して、日本の漫画が絶好調の北米市場では紙の漫画の売上が向上し、この規模が日本の紙の漫画市場と同程度に成長しているとのことです。反面、北米におけるデジタル漫画市場は、全体の5%ほどとのこと。

デジタル面においては、続々海外展開が伝えられる国内のマンガ業界ですが、実は海外では紙が伸びているというのは非常に面白いですね。ちなみに、多くの日本出版社では、かつての海外の連携出版社に丸投げする翻訳や販売体制を、近年は直接日本からコントロールする形態に変化させており、そのあたりも好調な市場に敏感に反応できてる要因となっていそうです。


北米向けサービスを今春開始したNTTソルマーレ社のコミックシーモアですが、今度は欧州展開のようですね。「おっ?」と感じたのは、この展開をNTT西日本の森林新社長が発表していることですね。

NTTソルマーレ社は、NTT西日本の子会社で本拠地も大阪です。過去2001年頃にはLモードというiモードのFAX版みたいな機能を開発・提供したりしてました。その頃からコンテンツ提供の事業をしていたのですね。

そうしたコンテンツ提供事業が転じて、ガラケー時代にシーモアの原型になるサービスを開始したわけですが、この経緯から経営者はNTT西日本からの出向者がなるという流れがあったりします。

実はガラケー隆盛期の2010年頃は、国内電子コミックのトップ企業でした。

今まで、わざわざNTT西日本がシーモアに言及することも少なかった印象ですが、シーモアの事業規模拡大の順調な推移や国際展開のへの期待から、こうした親会社発表になったのでしょうね。朝日新聞でも同様に触れていますが、こちらは核心が有料記事でした。ご了承ください。


libroさんの北米エンタメニュースまとめ、先週分です。呪術廻戦やっぱり強いですね~。なんとなく、北米のノリにも合ってる作品かなぁという印象はあります。


国内News

LINE Digital Frontier(LDF)株式会社の代表が、元同社取締役の金信培(キム・シンベ)氏と、子会社にあたるイーブックイニシアティブジャパンで代表取締役社長の髙橋将峰氏の2名による共同代表制に移行するようです。

もともとの代表取締役だった金 俊九(キム・ジュンク)さんは同社取締役に。新社長の金信培さんはもともとNAVERのグローバルwebtoon戦略を担当されてきたようですね。

LINEマンガとNAVERという元々のグループの中での人事は特に違和感はありませんが、特筆すべきは、LINEマンガとZホールディングの経営統合に伴い、Yahoo側から切り離されLDFの完全子会社となった(実質ここでYahooとは切れてる)ebookjapanの代表の高橋氏が、そのまま共同代表になっているということですね。

システムや取引プラットフォームの統合など、大きな動きのあった両社ですが、端的にいうとLINEマンガがebjをとても重く見ているということが読み取れる人事だなと思います。ほんと、ebj独占配信の横山光輝三国志はどうなるんでしょう。


フーモア芝辻さん、WebtoonInsight福井さん、ミキサー北室さんの鼎談です。新しい情報というよりは、確かにこの3人で話してもらえれば、日本のWebtoonの歴史を振り返るには良いですねという記事でした。

というわけで、本Newsまとめ的に初見の情報があるというよりは、今までお伝えしてきた内容を整理して伝えていただいてるような記事です。Webtoon初学者の方にも、おさらいの方にも良い記事だと思います。

いずれ、そういう記事だけまとめてみたいですね。


ここのところ良く記事にされているマガハの漫画編集準備室の話題ですが、責任者の関谷さんのコメントが印象的だったので引用します。

発行形態は紙と電子どちらかにも偏重しない。「紙と電子は今後ももっと明確に差別化される。あえて電子書籍をコンテンツといいますが、電子は消費されがち。じんわり長く届く作品、遅くよさがやってくる作品が紙版で残っていく。適切な場所で販売することが必要になると思っている」(関谷氏)

https://www.bunkanews.jp/article/276453/

記事中にもありますが、累計200万部にも達したと言われる『君たちはどう生きるか』コミカライズもマガハからということで、いわゆるマンガ雑誌のマンガ連載みたいな流れとは少し違う流れから作品が生まれてくるとしたら、新鮮だなと思いました。なんとなく描きおろし作品をイメージしましたが、マガハブランドらしい作品や出方、楽しみですね。


小学館が開始したメタバースの取組「S-PACE」を「スペース」と読むみたいなんですが、Twitterスペースをよく使う身としては大丈夫かなぁと心配になったりします。


2012年iOS版リリースから10年の運営を経て、ジャンプBOOKストアが今年2022年11月30日でクローズとのこと。定期購読雑誌はジャンプ+に、購入した作品はゼブラックに引き継がれると、アプリ内の案内にもありました。

後発の「ゼブラック」は、集英社専門ではなく「総合電子書店サービス」のため、ジャンプBOOKストアの購入作品なども問題なく吸収できるということなのかと思います。関係者の皆様お疲れ様でした。

ゼブラックが立ち上がった際に、集英社やジャンプだけではなく、総合的な電子書店(他社作品も積極的に扱う)として出版社が運営することに、内外からその狙いを大胆と評する声はありました。

一方で、自社作品を複数編集部まとめて扱う出版社アプリは、近年のWeb広告費の高騰から新規読者獲得が困難な状況になり、その存在意義を改めて問われているところかと思います。そうした中では、特に重複サービス領域がある集英社では自然な流れだったかなと思います。ユーザー救済も問題なさそうですし。


就活生向けの業界研究記事なのですが、今の電子書籍で好調な今の出版業界、中でもマンガやWebtoonに関わる現場を端的に表していてなるほどなと思いました。

マンガ業界が好況とはいえ、その中心の大手3社はそれぞれ数万人の希望者に対して実際に入社するのは十数人規模と狭き門ですが、編プロやフリー、Webtoonスタジオの話に触れています。就活生目線だとそうなりますねと。


記事のみ紹介


告知関連

京都国際マンガ・アニメ大賞2022

京都国際マンガ・アニメ大賞2022のイラストコンテスト他、マンガやCGアニメ部門が8月1日締め切りということで告知されています。

この賞は、2015年に「京まふ漫画賞」という名前の国際漫画賞として開始しました。「京まふ」こと京都国際マンガ・アニメフェアの中で毎年開催するマンガ出張編集部の関連イベントとして漫画賞をやって欲しいということで、当時出張編集部の運営責任者だった流れからオーダーをいただき、第3回まで運営に関わりました。

このロゴは、第1回の大賞を受賞した台湾のANTENNA牛魚さんにデザインしてもらい第2回から使用しています。最初はマンガだけだったのですが、以降名称も2度変更され、現在はイラスト、CGアニメも広く対象とする国際コンテストになっています。これをきっかけに日本デビューしている外国人作家さんもいます。ご縁のある方は是非ご応募、お声がけください。


コミチ採用のお知らせ

執行役員をしていますコミチの採用情報です。本まとめをご覧の方には強くお伝えしたいのですが、正社員でも学生インターンでも、コミチの仕事でご縁をいただけた方には、私の持つ業界知識や経験、人のつながりなど、最大限お伝え、お渡ししていこうと考えています。

是非一緒に働きましょう。

また、特にこのデータアナリストの社員採用・インターンは超穴場だと思います。比較する対象が思い浮かばないので思い切って言いますが、代表萬田のもと、コミチがマンガ業界のデジタルの現場で行っているデータアナリティクス関連実務は、内容的にも実績的にも間違いなく業界No1はもちろん、他業界を含めても非常に優れたものだと思います。

これは、データアナリティクスの運用を公表している関連企業が、業界内に他に目立って思いつかず、後発サービスながら競合も見当たらないところのためそう伝えています。(インハウスの方の動きは外から見えないのでのぞく考え方で)

これを、本業にせよインターンにせよ2022年段階で仕事として経験できることは貴重な機会になると思います。端的にいうと、これから10年20年を超えて食べて行ける力をつけられる現場になると思います。「これからの仕事を考えたい、マンガ好きかつ数字(分析とか)好きの方」には、これ以上ない仕事だと思います。超おすすめです。


織田博子さんの個展「世界と豊島区を旅する」展


7/10は赤松健さんも出馬する参院選の投票日

こういうの良いですよね。
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現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。

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